53話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
「おい、どうなっているんだ!」
「そんなことよりモンスターを見なさいよ」
そんな会話が聞こえてきた。蛇みたいなモンスターの相手をしているのは男性二人と女性一人のパーティーだ。
装備からして、女性が魔法職で男性達が前衛だろう。一人は大きな盾を持ち、もう一人は片手剣を構えている。
まるで海龍のような姿をした蛇は大きく口を開いたかと思うと、そこから細く鋭いレーザーのようなブレスをプレイヤーに浴びせる。
盾を持ったプレイヤーが咄嗟に前に出て受け止めるが、耐え切れずに後ろに吹っ飛ばされてしまう。
「どうする、助ける?」
「でもなんかヤバそうだよ、ボク達でどうにかなるかなぁ」
「もう少し近づいて様子を見て、死にそうだったら声をかけてみるか」
その時向こうから悲鳴が聞こえてくる。海龍の方に目を向けると盾持ちの男性がポリゴン片となって散って行くところだった。
残った片手剣の男性が一人で前衛を務めているが、このままではジリ貧だろう。
「そろそろじゃないかな?」
「そうだな」
海龍に近づき過ぎないように注意しながら戦っている二人と話せるくらいの距離まで駆け寄る。
「あのー、手伝いましょうか」
「お願いします! 逃げるのだけでも手伝って貰えませんか?」
確かに倒せそうな相手ではないので逃げられるのなら逃げたほうがいいだろう。ユリアさんとアガサを呼び、俺たちも海龍の正面に出る。
新たな敵を確認した海龍は一回大きく吼え、バスケットボール大の大きさの水球を飛ばしてくる。後ろに飛んで回避し、後ろにいる二人と簡単な打ち合わせをする。
「俺たちで適当に引き付けるんで、タイミングを見て森の方へ走ってください」
「それだとあなた達が……」
「俺たちもすぐ逃げますから」
「……分かりました」
それだけ伝えて再び放たれた水球を避けるためにその場から移動する。相手は海の中にいるからこちらからは遠距離攻撃でしかダメージを与えられない。つまり、弓を使っているユリアさんが攻撃のメインということだ。
そのことを本人も分かっているのか、積極的に攻撃をしてくれている。俺も点棒を構え、海龍の胴体を狙って投げつける。
海龍の口から吐き出される水球を避けつつ、両手の点棒を投げる。動きながら投げているのであまり命中精度は良くない。後ろでアガサも歌ってくれているが、海龍も細長い体を動かしているので狙いづらい。
その時、海龍が水球を吐き出す時とは違う動きを見せた。大きな口をさらに大きく開き、こちらに向けてくる。口に中心に水が集まっていき、徐々に大きな塊になっていく。
それを見て悪寒が走った。これはヤバイ! 逃げないと!
「後ろまで下がれ!」
身を翻して森の方へ向かってダッシュしながらそう言った瞬間、俺の背後が突然爆発した。爆風に押されるように体が吹っ飛ばされる。
どっちが上でどっちが下か分からなくなるくらいもみくちゃになりながらゴロゴロと地面を転がり、ようやく止まった。平衡感覚が安定しないまま顔を上げると、そこには俺たちの方をジッと見ている海龍の姿があった。
「このまま森まで走れ!」
幸い、今の爆発で森の近くまで飛ばされたので森の中に辿り着くまで時間はかからなかった。自分のHPバーを確認するとレッドゾーンギリギリまで減っている。爆風を受けただけでこれなら、まともに受けていたらひとたまりもないだろう。
周りを見ると、ユリアさんとアガサ、そして女性プレイヤーと男性プレイヤーが木にもたれ掛かって息を整えていた。皆逃げ切れたみたいだ。
落ちついたところで女性プレイヤーが話し始める。
「助けてもらってありがとうございました」
「別に大したことは出来ませんでしたよ」
「それでも助かりました」
彼女達からお礼を貰ったあと、俺たちは目的地である北の海岸に向かうためにその場を立ち去ろうとすると、女性プレイヤーが案内を買って出てくれた。彼女たちの拠点は北の海岸にあるらしく、今日も北海岸から来たそうだ。
それならと北の海岸までの間、二人と共に行動することになった。
女性の名前はリスカさんといい、魔法使いっぽいローブ姿の女性だ。ジョブは火属性魔法使い。片手剣の男性はトルクさんという名前で皮の鎧を身に着けている。ジョブは片手剣から転職した片手剣士だそうだ。さっき死に戻った盾の人がパーティーリーダーだったらしい。
「海岸を歩いていたらいきなり海から襲ってきたのよ」
「巻貝しかいないと思ってたから、完全に出遅れたな」
彼女達について行きながら海龍と出くわした時の状況を聞く。完全に不意打ちだったようだ。
海岸に沿って進むより森を抜けたほうが早いらしいので森を進むことになった。またあの蛇と会わないといいけどな。
森にも海にも蛇とか、止めてもらいたんですけど。
△ ▲ △ ▲
「おぉ、人がいっぱいいる!」
「北の方が賑わっていますね」
アガサとユリアさんが感想をもらす。一時間ほどかけて森を抜けると、沢山のテントとプレイヤーが視界に飛び込んできた。
「こっちには【軍】も【まほいち】もいますからね、おかげでこの一帯の探索はほぼ終わってますよ」
「逆に言えば、未探索の場所が無いからそこらへんの面白味はないけどな」
横に並んで立っているリスカさんとトルクさんが教えてくれる。アガサみたいに誰も行ってないところに行きたい人は南海岸の方が合ってるかもな。
自分達のリーダーを迎えに行くリスカさんとはそこで別れた。別れ際にフレンド申請もしておく。
「さて、目的地には着いたが……」
「別にやることもないんだよね……」
昨日から始まった西海岸を迂回して北海岸へ向かう探索だが、これといった目的があるわけではなく、『ただ行ってみたいから』みたいな理由で来てしまった所為か、いざ辿り着いてもやることがない。
別段南海岸と大きく変わったところも無く、波が打ち寄せる海岸が前に伸び、後ろには鬱蒼とした森が広がっている。
人が多いこと意外は大差ない。
「どうする、このまま帰る?」
「それじゃあツマラナイよっ!」
「帰りは森を通って帰るというのは如何でしょうか?」
ユリアさんの提案を聞いてあの蛇の姿が脳裏をよぎる。島の外周に沿って進んできたから時間がかかったわけで、森を突っ切ればもっと早く帰れるだろう。
でもなぁ、もし蛇にあったら嫌だなぁ……
と、悩む俺とは裏腹にアガサは乗り気のようで、今にも森へ駆けて行きそうな雰囲気だ。
「いいね! 何か見つけられるかも!?」
「はぁ、仕方ない行くか」
ため息を一つこぼし、森を突っ切って帰ることになった。
北の海岸でダイモンさんかミチルに会えたら良かったんだけど、無理そうかな。最近ミチルと会ってないし、一緒に行動してくれたら安心なんだけどな。




