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5話

誤字、脱字、感想等ありましたらよろしくお願いします。

 マリオとの合流地点である武器屋に向かって歩いていると店の前にマリオがいるのが見えた。

 しかも見知らぬ男が傍にいる。さっきから男はマリオに話しかけているようだが、マリオは相手にしてない。もしかして、ナンパってやつか、初めて見た。

 男の装備を見たところおそらく第一陣のプレイヤーだろう。少し良さそうな防具を装備している。金髪にどこか間抜けそうな馬鹿面、まさにTHE・チャラ男、といった顔つきのチャラ男君はマリオにそっけない態度をとられながらも、必死に話しかけ続けている。


「君って生産職でしょ? 素材集め手伝ってあげるよ」

「一人で大丈夫です」

「そんなこと言わずにさ、俺って結構強いんだぜ」

「しつこいですよ」


 なんか大変そうだな、マリオってもしかしてモテるのか?今までゲーム友達として接してきたからそんなこと考えたことなかったな。よくみてみれば、強気な目つきとスラッとした体型がいい感じにも見えなくも……ない……かな? それはともかくそろそろマリオを助けてあげないと。


「おい、俺の連れにあまり付き纏わないでくれないか?」

「あぁ? なんだお前?」

「こいつの連れだって」

「あ、そうだ! あんたが強いっていうなら、このキントウと決闘してかったらあんたとパーティー組んであげてもいいわよ?」

「いいだろう、俺も強さを見せてやるよ」

「ちょ、ちょっと待てよ! いきなり決闘って…」

「いいからつべこべ言わずさっさと受けろ!」


 そこまでしてナンパしたいのかよ。目の前に決闘の申請か表示される。


【《キリオ》さんから決闘が申請されました。受けますか?】 Yes/No


 マジかよ、いきなり決闘だなんて。しかもよく見たらこの決闘フルHPじゃん。

決闘とはプレイヤー同士で話し合いで決着がつかなかった時などに使われるシステムである。要は力比べのようなものだ。

 またフルHPとは決闘の種類の一つで、HPが0になるまで勝敗がつかないモードである。他にもHPが50%になるまでのハーフHPや、攻撃のヒットした回数で勝敗を決めるカウントデュエルというモードもある。

 こちらはヒット数を選択できる。フルHPは負けるとデスペナルティを受けるからあまり人気ではないモードだが、チャラ男君は自分が負けることは無いとたかをくくっているのか余裕そうな表情だ。

 まぁ、そりゃ相手は第二陣のしかも未だ初心者装備で自分は第一陣だもんな、油断しても仕方ないだろう。腰に下げている片手剣を見る限りチャラ男君ことキリオは近接タイプだろうから、距離をとって点棒投げながらポーカー使ってれば勝てるかもしれん。


「オッケー、受ける」


 俺はYesを選択する。すると俺とキリオを覆うように半径10mほどの半球状のバリアのようなものが展開される。これが決闘フィールドとかいうやつか。初めてだから緊張するな……

 騒ぎを聞きつけてか、フィールドの周りには野次馬たちが集まってきている。案外多いな、余計に緊張するじゃないか。

 俺とキリオの中間地点に表示されているカウントダウンの数字が、5、4、3、2、1と減っていき、0になった途端、俺は頭の中で【ポーカー】と叫ぶ。今回は早めに終わらせたいから賭け金を多めに100エン賭ける。

 これで最悪ワンペアでも100の攻撃力が出せる。相手のHPと防御力がどのくらいかは分からないけど。

 右手のトランプが光り、目の前に5枚のカードが出てくる。


「てめぇなんかに負けるはずがねぇんだよっ! さっさと死ね!」

「おー怖いな、っと」

「当たるかよ、こんなもんっ」


 キリオがこちらに向かって走って来るので、左手の点棒で牽制するが躱されてしまう。腐っても第一陣だからか。


【♣6、♣7、♣9、♣J、♣K】【フラッシュ】


 カードが集まり、光の塊となってキリオに襲いかかる。キリオは「なんだ!?」といった表情だが走ってきた勢いと点棒の牽制の所為で避けきれず、まともにくらってしまう。その瞬間、キリオのHPが草原のネズミと同じくらいのスピードで減っていき、そのまま0になった。


「な、なんでだよ…」


 キリオはそう言い残してポリゴンとなって散っていく。この後、街の復活ポイントである教会で目覚めるのだろう。

 死に戻りってどんな感じなんだろうか?出来れば体験したくない。野次馬たちも最初は驚いていたが、時間が経つにつれいなくなっていった。

 離れて様子を見ていたコージが走って近づいてくる。


「さて、終わったね。大丈夫だった?」

「ああ、このマリオのおかげで初決闘を勝利で飾ることができたよ」

「ごめんなさいね、あんまりにもしつこくて丁度キントウが助けにきてくれたから」

「はっきり断って、逃げればよかったのに」

「ごめんって言ってるじゃない、今度からはそうするわよ」


△ ▲ △ ▲


 場所を移して今は広場にあるベンチに三人で座って休憩中である。


「マリオはこれからどうする?」

「私はさっき集めた素材で調薬をして、10時くらいになったら落ちる予定よ。コージとキントウはどうするの?」

「僕も10時までレベル上げして今日は終わりかな」

「俺もドロップとか売ったらまたレベル上げだな。次は別の場所に行くつもりだ」

「なら南口の方?」

「いや、南の森は夜は危険らしいから東の山の麓かな」


 この街から西に行くと草原、南は森、東は山の麓に行ける。次の街も東の山を越えた先にあるので、うまくレベル上げができたら明日にもコージと一緒にボスに挑戦するつもりだ。

 普通、ボスはパーティの上限である6人や複数のパーティでいかないと勝てないくらいの強さに設定されているらしいのだが、最初のボスに限ってはチュートリアルということで最低一人でも倒せるらしい。


「私はここら辺で作業してるから帰ってきたら声かけなさいよ」

「わかった。お前もまたナンパに遭って困ったら遠慮せずにコールしろよ」

「またキントウが瞬殺するからね」

「あれやたら金かかるし、避けられたら多分不発だからな、あまり期待しないでくれよ」

「はいはい。じゃ頑張ってね」


 マリオと別れ、ネズミ狩りをして手に入れたドロップアイテムを売るために道具屋に向かう。

 思ったよりたくさん手に入ったのでいい値段で売れるといいが。


草原ネズミの皮×25

草原ネズミの爪×21

草原ネズミの毛×23

草原ネズミの耳×14

生肉×19


 おそらく草原ネズミの耳というのがレアドロップだったのだろう。耳以外はすべて一つ50エンだったのに対し、耳だけ一つ100エンと二倍の売り値が付き、最初の手持ちの1000円と合わせて合計6800エンを手に入れた。


「よし、この後点棒買って東の山の麓に行くか」

「そうだね、僕もネズみんのレベルも上げたいし」


 コージはテイムした草原ネズミに「ネズみん」とかいうあだ名を付けていた。もうちょっとマシなあだ名は無かったのか……


△ ▲ △ ▲


 東口を出てすぐは西と同じ草原のフィールドだったが、しばらく歩くとだんだん植物が減ってきてかわりに灰色の石や岩などが増えてきた。

 何故か東の山の麓だけは昼も夜もモンスターの強さが変わらないのではここを選んだ。辺りは暗く、草原よりも見通しが悪い。岩陰とかに隠れて飛び出してきたら対応に遅れてしまうかもしれない。


「そろそろモンスターが出て来ると思うんだけどな」

「この東の山付近はオオカミ系のモンスターが出るみたいだよ」


 と、そこに2匹のオオカミが岩陰から飛び出してきた。現実のオオカミと同じくらいのサイズで隠れやすくするためなのか、ここら辺の岩と同じ灰色の毛を持っている。開いた口から見える牙と垂れる涎がこのモンスターの獰猛さをものがたっているようだ。

オオカミの頭の上辺りに出ている名前を見てみると、《山オオカミ》と出ていた。てっきり《グレイウルフ》とかだと思ってたんだけどな。


「グルルルルッ!」

「ガウガウ!」

「怖っ。ネズミんとは比べ物にならないな」

「そりゃオオカミはアクティブモンスターだからね、ノンアクティブのネズミんと一緒にしないでよ」

「お前右、俺左の奴な」

「おっけー、いくよ! ネズミん!」

「チュチュ!」


 ネズミんの鳴き声を聞いて、俺は山オオカミ(以後オオカミ)と向き合う。オオカミ達も一対一で戦うつもりらしく、少し離れたところでは俺と同じようにコージもオオカミと睨み合っていた。


「ほら、来いよ」

「グルル……ガウッ!」

「よっと」

「ガウッ。ガウガウッ!」

「そいっと」

「グルルル……ガウガッ!」

「あらよっと」


 飛びかかってくるオオカミを俺はひょいっと避ける。こっちに向かって走ってくるのは少し怖いけど、攻撃が直線的だから避けやすいんだよな。そろそろこっちからもいきますか!

 両手に点棒を装備し交互に投げつける。右手の点棒を投げたら、すぐに左手の点棒も投げる。左手で投げてる間に次の点棒を右手に装備して……というのを続ける。


「キャンッ……」


 流石はオオカミ系というべきか、高いAgiで次々に飛んでくる点棒を避けていたが、ついに胴体にヒットすると次の点棒もヒットし、そのまま連続で5本くらいヒットし、HPバーを空にしポリゴンとなって散っていく。

 まあこんなもんか。コージの方を見てみると丁度ネズミんが噛み付いてオオカミがポリゴンと化していくところだった。


「どうだった?」

「うーん、もうちょっとネズミんのレベルが上がんないとソロはつらいかな。今は二匹同時くらいが限界だと思う」

「じゃあ、次は二人で戦うか」

「うん、お願い」


 少し歩くとオオカミが飛び出してきた。今度は一匹だ。山オオカミは基本的に岩陰からの奇襲を主としているようだ。


「コージとネズミんが前。俺が後ろから援護する」

「了解」

「チュ!」

「行け、ネズミん!」

「チュチュ!」


 まずコージがネズミんを突進させてオオカミの動きを止める。そこにコージ自身が走り込んできて横から短剣で斬りつける。今の攻撃でオオカミのHPが三分の一くらい減った。

 短剣で攻撃されて怯んだ隙に俺が点棒を投げつけるとオオカミはすぐ倒せた。おそらく二人+一匹なら四匹くらい相手にしても余裕だろう。


「どうする、もう少し奥の方でも二人でならいけると思うんだけど」

「試しに行ってみる?」

「そうだな」


 ということで、俺たちは少し奥の方に来てここは東の山の山道だ。麓よりいっそう暗くなっていていつオオカミが襲ってきてもおかしくはないが道は舗装されていて歩きやすかった。それにほぼ一本道なので迷わないで済む。


「山って割には標高はそんなに高くないんだな」

「せいぜい300mくらいかな?」

「そんなとこか」


そ んな感じでコージと雑談していると前から三匹のオオカミが近づいてきた。麓にいたオオカミとは違って黒い毛を持っている。

 名前を見てみると《エリート山オオカミ》と表示されていた。こいつら山オオカミの上位種か。


「来たぞ、さっきと同じでネズミんが受け止めてコージが攻撃だ。俺は他の二匹を相手するから任せたぞ」

「うん、じゃネズミん行くよ」

「チュー!」


 先に俺が左右に持っている点棒を一本ずつエリートオオカミに投げつけ、二匹のオオカミのターゲットを取る。

 そして右手の点棒をトランプに持ち替え構える。あまりお金は使いたくはないが、ケチって死に戻りはごめんだ。


「いくぜ!【ポーカー】!」 


 10エンを賭けてカードが目の前に5枚浮かんで並ぶ。


【♥2、♣8、♣9、♦4、♠K】【ノーペア】


 いつもはそのまま光の塊になって相手に飛んで行くのに今回は光の塊にならずにそのままカードが消えてしまった。ノーペアだと攻撃は失敗になるのか……って! やばい、攻撃ミスった! どうする?

初めてのノーペアでテンパってると容赦なくオオカミが攻撃してきて左手に噛みつかれる。痛みは感じないが何かに挟まれるような感覚に襲われ、噛まれた痕が倒されたモンスターが死ぬ時に散らすポリゴンと同じように白く光って見えた。

 自分のHPバーを確認してみると、半分近く減ってイエローゾーンに達していた。やっぱ強いな初心者装備じゃ防御力が心もとないな。

 

 再びポーカーを発動すると今度は【スリーカード】が出て、一撃でエリートオオカミを葬り去った。もう一体も点棒を投げつけ続けて倒すと、コージは既に倒していたようだ。今は初級ポーションを飲んで受けたダメージを回復している。

 俺もイベントリから初級ポーションを出して飲む。ポーション系は体にかけるだけでも効果があるらしい、今度やってみよ。


「お疲れ、いやー流石はエリート、強いねぇ。キントウはよくあんなの一人で二匹も相手できるね。僕なんか一匹でも怖くってもうネズミんに任せっきりだったよ」

「まぁ攻撃力は無駄に高く出来るからな俺は。それより今日はここでレベル上げしていいか? 基本一匹でいるのを狙っていく感じで」

「それなら大丈夫かな」

「よし、行くか」


 この後一時間ほどレベル上げしたあと、街に戻ってログアウトした。マリオは既にログアウトしたのか別れた広場にはいなかった。

 自分よりレベルが高い場所でレベル上げしたおかげか、今日一日で俺とコージのレベルは9まで上がっていた。

 明日レベルが10になったら装備やアイテムを揃えてボスに挑むつもりだ。

改稿しました

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