10話
本日2話めです
ときどき現れるオオカミたちを俺とコージで次々とポリゴンに変えていく。今のレベルならもう一人でも余裕だ。
そうしてボスの前のセーフティーエリアに到着する。HPやMPをマリオからもらったポーションで回復していると、りんご飴が思い出したように聞いてきた。
「ねぇ、ここのボスって山オオカミのリーダーよね、攻撃手段とかは調べてあるの?」
「うん、リーダーの攻撃は突進、噛みつき、引っ掻きの三つだけだね」
「じゃあ、俺がターゲットとって引きつけている間にコージが攻撃して、りんご飴が回復だな?」
「そうれがいいね、じゃあ行く?」
「いつでもいいわよ」
「いいぞ」
セーフティーエリアから出てしばらく山道を登っていくと、山頂らしき場所に出た。山頂は半径20mくらいの円形状の広場で周りを岩で囲まれており、一目でボスのいるフィールドだとわかる。
道は俺たちが今通ってきた最初の街に降りる道と広場を挟んで反対側にある次の街に続く道の二本だけだ。おそらくというか必ず通ろうとするとボスが出て来るのだろう。
「最初に俺が攻撃してタゲを取るからそのあとにコージが攻撃な」
「りょーかい」
「私は後ろで貴方達の回復ね」
「じゃあ、行くぞ!」
広場の中心に向かって走っていく、広場の中心に着こうかというところで突然獣の叫び声と共に一匹の大きなオオカミが飛び出してきた。名前は《山オオカミリーダー》だ。サイズが普通の山オオカミの三倍あることと右耳が少し欠けていること以外は普通の山オオカミとは変わらないが、さすがにこのくらいの大きさだと迫力が違う。 口から生えている短剣ほどのサイズの牙とか爪とかかすっただけでもかなりHPを削られそうだ。
「アオーーーン!」
「かかってこいや!」
先制攻撃として俺が両手に装備した点棒を投げる。二本投げたが全体の2%ほどしか減ってない。だいたい一本で1%くらいか。オオカミが俺に向かって突進して来るのでステップを使って避けると同時に再び装備した点棒を投げつける。また2%ほど削れた。
右足の爪をしゃがんで避け、後ろにステップで下がると、すぐさま左足の爪で追撃してくる。左の爪が体を擦っただけで俺のHPが40%ほど削れる。一撃でイエローゾーンとか紙装甲過ぎる、りんご飴がすぐに治癒魔法でHPを90%まで回復させてくれたから良かったがあいつが居なかったらオオカミの攻撃を躱しながらポーションを飲む羽目になっていただろう。連れてきて本当に良かった。
コージはネズミんとオオカミん(テイムした山オオカミ。名前のセンスが……)を喚び、オオカミの後ろにまわって二匹を攻撃させている。ときどきコージの方にターゲットが移るが、俺が点棒を投げ、再びタゲをとる。まだHPは70%ほど残っている。 なんか面倒くさいな、ポーカー使って一気に終わらせるか。
右手の点棒をトランプに持ち替え、すぐさま【ポーカー】を発動させる。賭け金は大奮発して1000エン賭ける。賭け金を入力すると、トランプが光り目の前に5枚のカードが浮かび上がる。
【♥︎4、♦︎9、♥︎6、♠︎4、♣︎9】 【ツーペア】
カードが光の塊と化し、オオカミリーダーに向かって飛んでいく。ちょうどこちらに向かって突進してきていたオオカミは当然避けることができず、攻撃がヒットする。
するとオオカミのHPが一気に20%まで減り、レッドゾーンに突入する。……お金の力ってすごいなぁ。
「オオオォォン!」
と思ったのもつかの間、突然オオカミリーダーが一声叫んだらエリート山オオカミが三匹飛び出してきた。どういうことだよ!? 聞いてないぞ!
「おい、なんでエリートが出てくるんだよ!?」
「ちょ、ちょっと、私の方にも来てるわよ!?どうするの!」
「ごめん言い忘れてた! HPがレッドゾーンになると、エリートをパーティーの人数分呼び出すんだった!」
「「先に言えぇぇぇぇ!」」
「ごめーーん!」
「俺がリーダー引きつけるから、コージがエリート始末しろ! りんご飴はコージの回復な」
「わかった(わ)!」
オオカミリーダーと向き合う、レッドゾーンに入ったので焦っているのだろうか、最初の時よりも吐く息が荒い気がする。
「ほら来いよ、犬野郎!」
「アオーーーン!」
突進からの噛みつきをステップとジャンプを使い避けていく。なんか攻撃速度が上がってないか。初期装備のころより断然回避のスピードが上がっている筈なのにだんだん危なくなってきたんですけど。
左右から来る爪を下がって回避し、噛みつきをよけ、一瞬の膠着時間を見逃さずにポーカーを発動させる。今回も1000エン賭ける。出たのは【スリーカード】。至近距離だったので速攻ヒット。今の攻撃でオオカミリーダーのHPが0になり、一声鳴き、ポリゴンとなって散っていく。
「クゥゥゥゥン……」
「やっと終わった……」
「終わったわね」
「もう疲れたよ……」
エリートオオカミ達を相手していた二人も無事生き残っておりその場に座り込んでいる。ファンファーレと共に目の前にウィンドウが現れる。
【東の山のボス。《山オオカミリーダー》を倒しました。次の街への道が開放されます】
【ボス討伐報酬】
灰山狼の剛毛×5
灰山狼の堅皮×4
灰山狼の欠耳×3
灰山狼の魂×1
この灰山狼の魂ってなんだ? アイテムをクリックして詳細を確認する。
【灰山狼の魂】
灰山狼の魂。武器に付与すると、灰山狼の力が使えるようになる。
効果:Agi+20、オオカミ系のモンスターに対してStr,Agiアップ。
おお、なんかレアっぽいものだな。あとでω姐さんに詳しいことを聞いてみよう。それとレベルアップもしたみたいだ。ポイントもいつも通り振る。
キントウ Lv.14
装備 点棒、点棒、灰山狼のパーカー、灰山狼の七分丈パンツ、灰山狼のグローブ、灰山狼のスニーカー
残りポイント0
Str:14
Vit:14
Agi:51(+23)
Int:14
Min:14
Dex:28
Luc:76
さて報酬の確認も終わったし、そろそろ次の街に行ってみるか。
「そろそろ行こうか」
「そうね、早く見てみたいわ」
「りんご飴は自分のパーティーの人より先にいっていいの?」
「そのくらいじゃ怒らないわよ」
行きとは違い、次の街への道にはモンスターがほとんどいなかった。疲れてるから好都合だ。おかげですんなりと次の街に行くことができた。
△ ▲ △ ▲
目の前には高さ10mに届きそうなくらいの鉄製? の門がある。門の両側は石造りの塀が続いていて、この街を囲んでいるらしい。最初の街とは違い、兵士のような人たちが門の前に立っている。あれ通してくれるのかな。
門に向かって歩いて行くと、やはり兵士に呼び止められた。
「この門を通るには身分を証明出来るものを提示してください。でないと通すことはできません」
って言われてもなぁとイベントリの中を漁っていると底の方に《プレイヤーカード》なるものを見つけた。こんなものあったっけ? と試しに兵士に見せてみる。すると……
「あの、これでいいっすか?」
「これは……勇者様でありましたか! 失礼しました! それではこちらにどうぞ」
「え? ちょ、まっ……」「これどういうことよ!」「何が起きたの?」
いきなり態度の変わった兵士に有無を言わせず連れて行かれる俺たち。いったいどこに行くんだ?
△ ▲ △ ▲
連れてこられたのはこの街の中心にあるお城。そう、お城である。重要なことなので二回言った。お城に着くやそのまま謁見の間っぽい広い部屋に連れてこられた。
奥には王様が座ってそうな玉座があり、そのすぐ脇には扉がある。周りを大勢の兵士に囲まれ、正直怖い。
「あの、これから何するですか?」
「もうしばらくお待ちください」
「どういうことか説明しなさいよ!」
「もうしばらくお待ちください」
何を聞いても「もうしばらくお待ちください」しか言わない兵士。ところが数十分後、玉座の脇の扉が開き、一人の男性が入ってきた瞬間、兵士達は全員ひざまずいた。もしかしたら、この人って……
扉から入ってきた来た男性は金の冠をかぶり、赤いマントを羽織っている。なんともTHE・王様って感じの人だ。白髭も生やして高そうな服着てるし。
「そなた達が新しい勇者か?」
「え、まぁ、はい」
そういえば、このゲーム魔王倒すのが最終目標だっけ?すっかり忘れてた。
「ならば是非頼みたいことがある。最近封印されていた魔王が復活したのじゃ、その所為で魔物たちも各地で暴れておる。なんとかして魔王を封印してきてはくれないかの?」
「わかりました」
【ワールドクエスト:《魔王の封印》が始まりました】【《プレイヤーカード》が《勇者の証》に変わりました】
これがこのゲームの真のスタートってわけか、今まではまるまるチュートリアルだったのね。魔王ってどんな奴なんだろう? 案外女の子だったりして?
「それで、どうすれば魔王を封印できるんですか?」
「すまぬがわれわれも知らないのじゃ、すまぬが自分で調べてくれ。図書館に行けばその手の文献があるじゃろ」
「丸投げっすか……」
△ ▲ △ ▲
やっとのことで解放された俺たちは解散してログアウトした。ボス戦は思ったよりもはやく終わったのだが、王様が来るまでが長かったのだ。王様もっと早く来れたでしょ……
街の探検は明日にしよう。




