1話
誤字、脱字等ありましたらよろしくお願いします。
「……やっと、やっと買えたぞ」
時刻は午後一時。目の前に置いてあるのは、三日間並んでようやく買えたVRMMOゲーム『俺と勇者とときどき魔王』だ。このゲームはつい二週間前に正式サービスが開始された今話題のゲームである。
VR系のゲームが発売されて十数年。発売当初はVR専用の機械が一台数十万くらいする高級品だったが、量産化が進み、今では高校生が2ヶ月程度バイトすれば買えるくらいになるまで値下げされていた。
さて、この『俺と勇者とときどき魔王』略して『俺勇者』(魔王どこいった?)はβテスト以前から話題になっていたゲームで、当然俺もゲーム好きの端くれとしてβテストの抽選に応募したわけだが……もちろん落選しました。
いや、応募人数約20万人中当選者1000人とか無理でしょ?そんな運もってないよ……。
仕方ないからせめて初回発売に賭けようと抽選に応募したけど、あえなく落選。第二陣の発売からは並べば買えそうだったので、学校サボって並んでたというわけ。
ちなみにこの時買った数は3個。学校の友人に並ぶ話をしたらぜひ自分たちの分も買って来てくれと頼まれたので、仕方なく買ってきた。
並び始めた時にはもう結構列ができていて、最前列にいる人は一週間前から並んでいる人もいるとかいないとか……。
俺もコミケの待機列で鍛えた忍耐力で頑張るぜ!(ちなみに始発組)とか最初は余裕だったけど、三日目の朝とかはもう死にそうだった。
半日に一回から二回くらいに頼んできた友人が様子を見に来るついでに食料とかを支給してくれたおかげで、倒れることは無かったけど、夜になると必ず救急車が来るもんだから俺もいつか倒れるのかもしれないと内心ビビってた。
今思い出してみると、よくあんなに頑張れたなぁと、自分でもビックリする。
ともかく、疲れた。とりあえず仮眠を取ろう。ゲームを始めるのはそれからでもいいや。もうあいつらにも渡してあるし。
「というわけで、おやすみ…」きゅーばたん。
△ ▲ △ ▲
「いやー、よく寝た」
あれから、三時間くらい寝てやっとスッキリした。じゃあ、そろそろ始めますかね。友人達は俺が始めるまで待っていてくれるそうなので、今から始めることを友人達にメールする。
するとすぐ返事があった。二人とも相当怒っているみたい……そりゃすぐやりたいよな。
パソコンに『俺勇者』のゲームをインストールし、VR専用の機械をパソコンと繋げる。ドーナツみたいな形をしている専用の機械を頭に冠った俺は「スタート」と声に出すと、意識がすうっと落ちていくような感覚がした後に、意識が暗転していった。
確か、音声認識で個人を認識しているから、機械の起動と同時にログインも自動で完了されるとか。
△ ▲ △ ▲
「んっ…」
目を開くとそこは真っ白な空間だった。どこまでも続く真っ白な場所。なんにもない。
辺りを見回していると突然目の前に人らしきものが現れた。
「やあ、君が新しい勇者サマだね?」
「え?あ、はい」
いきなり聞かれたのでビックリしてしまった。忘れてたけど、このゲームの設定は主人公はある日突然死んでしまって、それを見た神様が異世界に勇者として転生させて、魔王を倒す……みたいなストーリーになっている。よくある転生もののVRMMO版ってことだな。
ってことは、目の前にいるのは神様っていうことになるのか。なんかイメージと違うな。服装も村人みたいな格好だし、ちなみに男だった。
「じゃあ、まず名前を教えてくれるかな?」
と神様が言うと、目の前にホログラムのキーボードが現れた。さて、どんな名前にしようかな……
あ、自己紹介をしてなかったな。俺の名前は 近野透。どこにでもいそうな高校一年生、趣味は読書とアニメ鑑賞、部活は帰宅部です!自分ではオタクでは無いと思っているがどうだろう?コミケとか行く時点で確定か?
ともかく、どんな名前にしよう?あまり厨二っぽいのはヤダな……。
五分ほど悩んだ結果、『キントウ』という名前にした。由来は近野の 「近」+ 「透」
透の透は透過の透だからね。
「はい、『キントウ』くんでいいね?」
「いいよ」
「なら次にいくつかの質問に答えてもらうね」
と、出て来たウィンドウには、【あなたはどのような職に就きたいですか?】A:戦闘系 B:生産系
というもの。これは『俺勇者』の特徴の一つで、自分のジョブスキルを決定する際に心理学などを応用した心理テストなようなものを行って、最後に自分にあったジョブスキルがいくつか選択肢に出てくるものから選ぶことができる。
△ ▲ △ ▲
そういえば、と思い出した『俺勇者』の取扱説明書に書いてあったシステム説明。プレイヤーは最初に『ジョブスキル』と呼ばれるものを選ぶことになる。これは各プレイヤーに一個ずつしか持てないもので、このスキルで大まかなジョブが決まる。
例えば、両手剣や片手剣などを選べば『剣士系』のジョブに進めるし、火属性魔法や水属性魔法を選べば『魔法使い系』のジョブになる。
このゲームの魔法は一人一属性しか使えないらしく、最初に火属性魔法をジョブスキルとして選んだら他の属性の魔法は使えないそうだ。
つまり、パーティープレイ推奨ってこと。βテストの時は、『水属性魔法』からレベルアップして転職すると、『青魔術師』に、『火属性魔法』からは『赤魔術師』に、『片手剣』からは『騎士』などに転職出来るらしい。「など」と付くのはステータス割り振りや使用武器次第では、他のジョブにも転職出来るそうで、『騎士』意外にも『重剣士』や『盗剣士』とかいろいろあるらしい。
ちなみに属性は火・水・雷・風・光・闇・治癒・補助、の8種類。回復まで専門職なのかよ…ソロプレイは難しそうだな。他にも所謂『ネタジョブ』や『ユニークジョブ』と呼ばれるジョブもあるとか…。
ジョブスキルとは別に『スキル』があって、これは最初に5つ選べる。こちらは『ダッシュ』や『HP量増加』などのサポート系のことを指す。レベルが10上がるごとにスキル枠が1つずつ増えるそうだ。
△ ▲ △ ▲
最初から戦闘系にすると決めていたので、迷わずAを選択。すると次の質問が出て来て答えるとまた次の質問が……というのを20問くらい答えていると、
【それでは、最後の質問です。あなたは強敵を前に苦戦しています。】A:冷静に勝ち目があるか考え行動する B:運に身を任せる
「うーん…どっちだろう?」
Aかなぁ、でもBのほうが面白そうだし、Bかな?
俺はBを選択した。
【最後にステータスを割り振ってください】
残りポイント 20
Str:0
Vit:0
Agi:0
Int:0
Min:0
Dex:0
Luc:0
ふむ、さてどうしたものか。取説を呼んだ限りだと、レベルアップですべてのステータスに+1されて、自由に割り振れるポイントが5もらえる。それを割り振って、自分好みのステータスにしていく、という感じらしい。
とりあえず、極振りは論外。でも無難に割り振ってもつまらないなぁ……とか考えながら割り振った結果がこちら。
キントウ lv.0
残りポイント 0
Str:0
Vit:0
Agi:2
Int:0
Min:0
Dex:2
Luc:16
こんな感じになりました……いや、極振りじゃないよ?ただなんかこう、誰もやらなそうな感じのかいいなーって思いながら割り振ってたらこんなことに…それに今ゼロでも、レベルアップすれば最低でも必ず1貰えるんだからなんとかなるでしょ?
【この割り振りでよろしいですか?】
Yes/No
というウィンドウが目の前に現れる。もちろんYesを選ぶ。
レベルアップで全ステータス+3から+1に変更しました。
魔法の数を変更しました。