8-1
帰り道のフクロ置き場。ふと電線にとまるとガサゴソなにか動いている。
おいらの羽音で気配を察したか、何かの目が光る。
猫のシャーだ。
「おう。なにあさってた」
「あんたか」
緊張をとくシャー。シャーは黒猫、よくエサ場で遭遇する。
初めてこいつに会ったとき、シャー シャーと尻尾をピンと立て、威嚇してきた。
おいらは猫なんぞ怖くもないし、威嚇してくるところを見ると、ここらの野良猫じゃないな
と、じっと見てアーアーと返してやった。
それから、見かけると「よう シャーくん」と笑ってやってた。
「猫の缶詰が恋しくなってな。探してたとこだ」
シャーは当時、赤い首輪をしてた。ヒトに飼われてたらしいが、もううんざりだ、逃げてきたのさ
とおいらに言っていたが、もしかしたら違うなと感じた。
それ以上聞くなと体から感じたからおいらはそうか、と黙っていた。
それからおいらに首輪をそのくちばしでちぎってくれと言い、おいらは何度も何度も噛んで
シャーを傷つけないように首輪を外した。
「缶が集まる日は確かそこに黄色いカゴが置かれるはずだ」
「ああ覚えてる。黄色いカゴに入れてたな。」
飼われていたときのことを思い出したのか、目を細め遠くを見る。
「なぁ あんた。ちょっと言ってみていいか」
「なんだ」
「笑うなよ」
「なんだよ」
シャーは急にそっぽを向いてしっぽをゆっくり振った。
おいらはシャーが言い出すのを黙って待った。
「おいらをくわえて 空を飛んでくれないか」