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7-2

少し寝てしまったようだ。

少し飛んでみるか、と空へ出た。

公園の少し先に小学校がある。ふらふらと校庭の銀杏の木にとまった。

銀杏の実でも食べるか、と降りようとしたら、バサバサと羽音がした。

「元気?・・なさそうね」

隣に飛んできて顔を覗き込むカラス。ドキリとなる。

「やぁ。元気・・・だ」

彼女はこの町でよく見る。最初に見たときは山の中の湖のある公園。

湖の近くの木の上でじっと白鳥を見ていたのを見かけた。

あまり動かないので 弱ってるのかと近づいたら逃げて行ったんだ。

それから夕方の小学校で花壇のそばにとまってるのを見て、おいらは

ここにたまに来るようになっていた。

どこか悲しげで、ほかのやかましい女子カラスとは違う雰囲気だった。


「子供たち帰ってったわね。この時間は良いにおいがするよね」

「あぁ。どこの家もうまそうな匂いがするな」

「違うわ。風の匂いよ」

おいらは顔が熱くなった。夕方のにおいは何かを煮込んだような

なまぬるい匂いしか感じたことがなかった。

「特に秋は空がオレンジ色で、あたしの黒い体も少しは赤くきれいに見えるから好き」

カラスだからか、おいらはこんなロマンチックなことは 言うのも聞くのも違和感があった。

カラスらしくとでも言おうか、おいらはいつもどうせカラスだとか、嫌われて汚がられて

当たり前、そこから入ってた。

堂々としている彼女はキラキラして見えた。オレンジの空のせいだけじゃない。

「前、湖で白鳥見ていたのを見かけた」

「あぁ。白くて優雅で羨ましい。どうまねてもなれないけれど」

おいらは何と言っていいかわからなかった。

「友達は、オウムみたいな毛が欲しいとか、クジャクが良いとかいうけど

あたしは真っ白な白鳥がいいな断然」

「あぁ。白鳥はきれいだな」

同感してしまったが、カラスのこの子に言うべきではなかったかとちらと見る。

彼女の目は澄んでいた。この子もカラスだ。散々ヒトから嫌われて追い払われて

打たれ強くなってる。そう感じた。だからひねくれている奴が多いカラス。

だけどきれいなカラスもいるんだと、おいらは驚きと嬉しさとあとなんだかわからないが

のどの奥あたりがぎゅーっとなった。

「じゃあねありがとう」

おいらがあんまり話さないから気まずくなってしまったのだろうか。

南の方へバサバサと飛んで行った。


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