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1丁目の西の古い家はばあさんが1人で住んでる。
いつも空が青いうちからほうきで家の前をはいてる。
じいさんがいたときは、おいらを見ると
「しっ しっ」とこわいカオしてほうきをつきつけてきてたけど
じいさんがいなくなってからは おいらを見ても
なんも言わない。ときどき曲がった背中を伸ばして遠くを見て
「はぁぁ」と深い息をしている。
昨日ばあさんはおいらをじっと見てから
庭の木の柿を一つ取っておいらがとまってる電線の下に
置いたんだ。
それからすぐに家に入ってった。
おいらはそれをくわえて公園の大きな樹の上の住み家に持ってった。
まだ食ってない。