思いの向こう側
『いらっしゃいませ。あははっ!裕也です。』
そう!裕也と楓は、まだ、ショップでバイトをしていた。
あ〜!もっと話したかったな…。バイト抜けちゃおうかな…。暇そうだし…、へへっ!
『裕也?なに考えてるかわかるぞ!』
マスターは、すべて見抜いていた。
『あはは…。ちっ…。』
『裕也?俺も考えてる事、わかっちゃった。抜け駆けすんなよ!』
『へいへい!へいらっしゃい!』
何で、こんな時間に来るんだよ…。
裕也の背中は寂しく、全て見透かされたショックは隠しきれなかった。
夜8時…
『んじゃ、おつっす!』
『マスター!お先に!』
『おう!お疲れ様!』
二人は、そそくさと店を後にした。
夜の海辺を歩く二人。
『楓?まだ、いるかな〜。』
『いたらいいな!』
二人は、同じような事を考えていた。
『なんか、複雑な気持ちなんだよな…。早苗。』
『あ〜。』
『あ〜って…。なんか人事みたいな言い方すんなよな?』
楓は、両手を頭の上で伸ばしながら話し始めた。
『ん〜。俺は、いいと思うよ?なんだかんだ言っても、今、目の前にいるのは早苗であって…。』
……。
『裕也?ちょっと座って話す?』
『おう…。』
二人は、海辺に腰を下ろした。
『夜の海って、真っ暗でなんか怖いな…。』
周りをキョロキョロ見る裕也。
『真っ暗だからいいんじゃん。波の音、星の光。夜の海で見る星ってキレイだよね。』
海、星、自然。基本的に田舎育ちの楓。自然がとても好きだった。
『楓は、ロマンティックだね〜!男同士なのに…。そうやって女口説いてるのか?くくくっ。』
星とか自然の似合わない裕也。素で話してる楓をおちょくっていた。
『バカじゃん?俺は、ナンパとかした事ないし!』
『でも、綾音には言ってたよな?』
裕也は、前に楓と綾音に興味?いやいや、心配で探しに行った時、たまたま見てしまった事があった。たまたまです!その時は、笑いをこらえるのがやっとだった…との事。
『な、その事、誰にも言うなよ!絶対に!』
暗い海辺から、明るい笑い声…。その正体は、星の光だけが知っていた。
『昔は、楽しかったな…。』
『うん…。』
楓は、浜辺に寝そべり…、夜空を見上げた…。
『星はキレイだよね…。見えない星ってどの位あるのかな?』
『はあ?知らね…。』
なに、いきなり言い出すのかと思えば…。
『俺は思うんだ…。見えない星より…、キレイに光る星を見たい…って。』
その言葉で、楓が何を言いたいのか…。優しい楓がそこにいた…。
裕也も、楓と一緒に寝そべった。
『優希を思う気持ち!大事にしたい!それは、俺も同じだよ…。でも、見えない星をいくら待ってても…、なんかな…。』
裕也は、何も言えなかった…。ただ、楓はわかってくれてるんだな…と。
『俺は、いいと思うよ?早苗を好きになったからって優希の事、忘れちゃう訳ないでしょ?俺達の中でずっと生き続けるんだよ!優希は…。』
楓は、思っていた。このままじゃ裕也は引きずったまま生きていく事になる。俺は、前に進んでほしい!幸せを掴んでほしい!優希の事、裏切りたくはなかった…、でも…裕也も大事だった。裕也を幸せにしてやってくれ…。な?優希…
『楓?ありがとな?ま!結果どうあれ、一回優希に逢ってくるよ!』
俺達の中で、生き続ける……か……。
ありがとうな!楓…。どうにか、前に進めそうだ……




