勇者VS鬼
鬼は手を止めた。
鬼の足元にはかつて魔王と呼ばれたモノが転がっていた。(注意:生きてます)
この場に立っているのは鬼ひとり。
なぜならば、勇者は腰を抜かしてへたり込んでいたからだ。
「ふっ・・・はっはっは。ハーーーハッハッハ!!やった。魔王を倒した!!」
勇者は勝利を叫んだ。
鬼は勝利に笑う勇者をただ無言で静かに見ていた。
笑い声が止んだ後、
勇者は立ち上がった。
鬼の怒気が膨れ上がってしまっていることを
勇者は気づかない。
否。気づいていても関係なかったのだ。
彼には秘策があった。
鬼はゆっくりと勇者にむかって歩いてきた。
「おっと。ちょっと待て。これを見ろ!!」
さっきまでの恐怖に恐れおののき震えていたのがうそのようだ。
勇者はキリッとした顔で鬼に見えるように何かを突き出した。
その手にはテニスボールほどの赤く透き通った石を握っている。
勇者にはわかっていた。
その怒りの矛先が自分へ向かうことを。
なにせ大事なものが壊れるきっかけを作ったのだから。
最初は恐怖に支配されていた勇者だが、あることを思い出したのだ。
この者を召還したのはほかならぬ自分だということを。
「召喚者は召喚したものを強制送還することができる。つまり、魔王を倒した今、君はもう用済みなのだよ。僕には殴られる趣味はないんでね。消えてもらおうか!!」
この勇者、まるで悪役である。
鬼の怒気はさらに膨れ上がった。
鬼は歩みを止めない。
それでも、十分な距離があった。
送還さえしてしまえば勇者にとって完璧なハッピーエンドとなる。
勇者は手にもった石を天に掲げた。
「さぁ!!召喚された者よ。戻るがいい!!送還!!」
鬼が白煙に包まれる。
白煙が晴れた後、
そこには何もいなかった。
こうして、世界は平和になり、
勇者は面白楽しく人生を謳歌したのであった。
続きます。




