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アウル兄弟 命の危険

野蛮な雇い主の稼ぎにこき使われるアウル兄弟、休む間もなく働き続ける兄弟は、ついに限界を迎える。 兄弟は生きるために決心をすることに。

野蛮な雇い主が新しい稼ぎ頭を見つてから、アウルとアール、双子の兄弟は毎日、コレが最後の出番ではないかと思うくらいの過密スケジュールを組まされた。一日1講演から5講演に、更には2日に一度から毎日に変わった。

 ネタも同じ物は使えなくなり、しかし、炊事洗濯などの雑用業務は常に行わなければなかった。

 野蛮な雇い主の態度も、今まで厳しかったのだが、より一層厳しくなり、弟アールのミスに対しては、一度の杖叩きでは収まらず、弟アールの意識が飛ぶ寸前までお仕置きが出た。

 弟アールが「もうダメだ」と言う度に、兄アウルは弟アールを励まし、2ヶ月間、双子の兄弟はそんな辛い日々を乗り越えた。それも、きっと明るい未来がある、辛いのは今だけ、今を乗り越えられる日が、二人にとって幸せな日々が必ず来る、そう信じていたからだ。


 しかし、10才の少年の体に突然異変が起きた。

 それはこの日最後のショーの最中に起きた。パロディネタが終わった後に最近行っているネタで、双子ならではで、兄と弟が正面でピッタリ張り付くようにくっつき、次に同じタイミングで分離するように見せる演技で、最近の演技の中で、観客からの拍手喝采が一番多いネタが終わった時だった。最後に行う終了ポーズを二人同時に行うのが定番なのだが、今日は、

「ハイッ・・・・あれっ!?」二人同時にハイッと言って終わるはずが、弟の声が聞こえなかった。すると観客から悲鳴が上がった。兄アウルが横に目線を向けると、弟アールがその場に倒れていた。

「ああっ、アール、アール!! どうしたんだよ、しっかりしろよ!!」兄アールは倒れた弟アールの体を懸命に揺らしてみたが、弟アールは汗を一杯に出して全く動かなかった。息はしていた。

「誰か、助けて!! 誰か!」兄アウルは無我夢中で叫んだ。すると、常連客の名前も知らない人達が、駆け寄ってきて、集まってきた野次馬に対して、

「みんなどきなさい!!」大きな声でそう叫ぶと、自身の羽織っていたコートを弟アールにかけた。

「アール、大丈夫か、しっかりしろよ!」兄アウルは弟アールにの名前を呼び続けた。常連の男性は弟アールを抱きかかえるように持ち上た。兄アールも立ち上がった。兄アウルが裏方をチラッと見てみると、椅子に座ったままの野蛮な雇い主はこちらを見ず全く気にしていない様子でタバコを吹かしていた。常連の男性客が弟アールを抱え観客席の出口に向かって走り出した。「僕もいくよ!!」その後ろを兄アウルも駆け足でついて行った。


赤い夕日が照りつける中、男性は近くの馬車を止めて、乗り込むと、常連の男性客は馬車の指揮者に最寄りの医者の所へ向かうよう指示を出した。しかし兄アウルはあることに気が付いた。

「おっ、おじさん、ありがとう、だけど、僕らにはお金が無いんだ。」常連の男性客の腕の服を引っ張り、兄アウルは訴えた。

「大丈夫、この近くの医者は患者が子供の場合はお金は取らんよ、その分、私みたいなおじさんからはしっかりと取るんだけどな!」常連の男性客は兄アウルを安心させまいと、落ち着いた声でそう答えた。それでも兄アウルが心配そうな顔をするので、

「大丈夫、この子は過労でのダウンだ。いつからか一日も休まずにショーに出ているだろ! おじさんは知っている、あの雇い主の命令だろうな、そうだろ?」優しい顔つきの常連の男性客は、まるで味方になってくれるような表情で兄アウルに訪ねると、兄アウルは、ハッキリと認めてしまうと後からそれを聞きつけた野蛮な雇い主に何をされるか不安になったので、首を縦に振るだけにした。

「そうら、着いたですよ!」小さな田舎町の医者がいる建物の前に、三人をのせた馬車は止まった。

「ありがとうよ! 感謝するぜ!」男性はポケットのコインを一枚取り出すと、指揮者に投げた。

「本当は君たちのショーで投げる為にポケットに入れていたんだがな。」男性客はヨイショっという感じで弟アールを抱き上げると、直ぐさま建物の中に入っていった。



「噂は聞いていました、休む間もなく働かされる双子の事を。しばらくは絶対安静にしていなさい。」医者はベットに横になっている弟アールの首元の服のボタンをいくつか外した後、首に冷水で冷たく冷やしたタオルを軽く巻き付けた。

「アールは、弟は大丈夫なんですね!!」兄アウルは医者の言葉を聞いて喜んだ。医者は首を縦に振った。兄アウルはそれを見て喜んだ。

「君は兄の方だね、君の体も同じ状態なのではないですか?」医者は兄アウルの目線までしゃがむと、眼鏡の奥にある優しい目つきでそう聞いてきた。

「僕の方は・・・」兄アウルがそう答えようとすると、医者は片手で兄アウルの方をポンッと弾くと、兄アウルは「うっ」とふらつき、地面にペタンと尻餅をついた。

「おおっと、お兄ちゃんの方も大丈夫なのか?」常連の男性客は兄アウルの脇に腕を入れ、ヒョイと兄アウルを持ち上げ立たせた。

「あああっ・・・」兄アウルの視線が定まるのに少々時間が掛かったようだった。

「ホッホッホッ、やっぱり双子じゃのう。体を大事にしなされ。無理をしては決していけないのです。」医者はしゃがんでいた体を元に戻した。

 常連の男性客は兄アウルが倒れないよう、方をしっかりと掴んだ。

「この子達で荒稼ぎをしているのは、噂のあの野蛮な雇い主なんです、どうにかならないでしょうか・・」常連の男性客は医者に聞いた。

「ううむ…」医者は椅子にストンと座ると、机の上に置いてあったタバコを手に取った。

「あやつばかりは、村の警察も手を出せんのです。何しろ、この子達が稼いだ金の一部が警察幹部の懐に入っているとの噂があるからじゃ。いや、恐らく本当の事実じゃろう、そうでなければ、とっくにあの雇い主は捕まっておる。子分としている二人の男共も、手を出せば必ずやり返してくるもんだから、もう誰にも止められんのじゃ。」

医者のタバコからリング状の煙がモクモクと上がった。

「そうですか、それでは私にもどうにもできないです。残念ながら。 ありがとうございます、この子達を家に返しに行きます。私にも家族がいる、本当に残念だがトラブルを買うことが出来ないんだ。」そう言うと、常連の男性客は弟アールを抱き上げ、空いているもう片方の手で兄アウルの手をしっかりと掴み、双子兄弟を連れて病院を後にした。

 アウル兄弟が住む住居までの道のりを、歩いている最中の常連男性客の腕の中で、弟アールは意識を取り戻した。兄アウルはとびっきりに喜んだ。常連の男性客も喜んでいた。住居まで歩く間、常連の男性客は、双子兄弟を雇っている野蛮な雇い主の事について語り出した。


「・・・という訳で、あの野蛮な雇い主には私も怖くて手が出せないんだ。本当は君たちの力になってやりたいんだが、コインを投げることしか今のところは出来ないんだ。本当にすまない。」常連の男性客はある程度の事を二人に話した。二人は初めての事を聞いたのだが、どちらも納得するように、共感しながらその話を聞いた。

「ありがとうおじさん。」兄アウルは諦めた様子でもないが、話の内容は理解したようだった。

 そうこうしているうちに、三人は娯楽施設の前にまでたどり着いた。

「じゃあ、私はここまでで勘弁してくれ。」常連の男性客は、抱きかかえていた弟アールを降ろすと、二人の側を離れ始めた。

「おじさん、ありがとう!!」兄アウルが両手を振った。それを見た弟アールも、

「あっ、ありがとう」そう言うと、兄アウルと全く同じように両手を振った。ステージに出るときには二人で両手を振っていたので、この動作は慣れていた。

二人はおじさんが見えなくなるまで手を振り続けた。遠くの方で常連の男性客は、最後に手で挨拶すると、走って行ってしまった。

「いい人だったね、おじさん。」弟アールは弱々しい目でそっと言った。

「うん」兄アウルはそう言うと、弟アールの首に下がっているタオルをそっと取ると、家の外の井戸水をつかって、冷やし直してから、再度弟アールの首にかけなおした。「・・・ゴメン、兄ちゃん。」

「なんで謝るんだよ、俺の方が先に倒れていたかもしれないんだ、もしそうなっていたら、僕はアールの世話になっていたんだ。謝ることはないんだ。」兄アールは突っ張った。

「分かったよ、兄ちゃん。」アールは少し安心した。

そして、二人でいつもの住まいの入り口の前に。二人は家に入るのを怖がった。しばらく、扉の前でじっとしていた。

 汚い家  物心ついた頃から、二人はここに住んでいた。楽しい思い出なんてこれっぽっちもなかった、子供らしく遊んだ記憶もない。汚い木の家の窓から灯りが漏れていたが、奴は、野蛮な雇い主はまだいないように思えた。もしもいたならば、いつも通り大声で騒ぐから。

「兄ちゃん、あいつ(野蛮な雇い主)はいるのかな…」ドアを見つめたまま、弟アールは口を開いた。

「そんなの知るかよ!」兄は強がって見せた。

「・・・僕のせいで二人とも叩かれるのかな・・・」弟の目には涙が溜まっていた。そんなアールをチラッと見て、また視線を戻した兄アウルはドアノブに手をかけた。

「もう入るぞ、早く夕食の支度をしなきゃ、また子分に何を投げられるか分からないから。」兄アウルはそう言って弟の心配をぬぐうと、引き扉を開けた。

 すると、二人の目の前に映ったのは、怖い顔をして立っている野蛮な雇い主だった。

『うっ・・・・!』二人は恐怖で息を飲んだ。

「お前達、今日のコインは集めたのか? コインはどこにある? さあこの俺様に差し出せ!」野蛮な雇い主は完全に怒り心頭の様子だった。

 今日のショーの終盤で、弟アールが過労の為に倒れて、それで会場が騒ぎになり、観客からコインは投げられなかった。しかし当然の事ながら、その事実は野蛮な雇い主も見ていた。

「おいお前ら、小僧共を中に入れな!!」野蛮な雇い主が大きな声で後ろにいる二人の子分に向かって命令した。

「へい、親分!!」「おまかせを!」

「うわっ、兄ちゃん!!」一人は弟アールの胸ぐらを掴んで中に引っ張った。

「アール・・・・、うわっ!!」もう一人は兄アウルを。

 アウルとアールは地面に投げ出された。野蛮な雇い主はこれから二人をどう痛めつけようかと言わんばかりの顔で、スーツの胸ポケットに入っていた葉巻に火を付けた。兄アウルは直ぐさま立ち上がると、雇い主の前に立ち、しっかりと頭を下げると、

「スミマセン親方、今日のコインはありません、アールの体はもう限界なのです、おっ、お願いです、少し休ませてあげて下さい、おっお願いします。」と一生懸命に訴えた。すると次の瞬間。

ビシッ!! おなじみの杖が飛んできた。

「ああっ!!」兄アウルは頭を強く叩かれ、後ろに下がりながら痛がった。

「兄ちゃん!!  グアッ」弟も叩かれた。

「あっ、アール!!」兄アウルはアールの体をかばうように腕でおおうと、

「おっ、お願いです。少し休ませてあげて下さい。元気になったらまた頑張りますから。」兄アウルは土下座した。

「ならんな!!」野蛮な雇い主は叫んだ。

「お前達小僧の金ヅルは今が稼ぎ時なのだ、一日たりとも休ませはせんぞ! フッフッフッ。」

「ううっ、グスン。」泣きながら、弟アールは兄の土下座の真似をした。二人でずっと頭を下げていた。

「ふっ、バカめ! 頭を下げたところでこの俺様が許すとおもっているのか! ウワーッハッハッハッ。」野蛮な雇い主は狂ったように笑い出した。その様に二人の子分達も冷や汗をかいて、引いた様子だった。



 もう・・・、ダメなのか・・・


 そう思った兄アウルは、泣きながら土下座を続ける弟アールの手をガシッと掴むと、外へ飛び出すように走り出した。

「いくぞアール!!」兄は渾身の力を振り絞って掛けだした。

「にっ、兄ちゃん!?」兄に引っ張られ、弟も全力で野蛮な雇い主に捕まらぬよう、ドアの外へ掛けだした。


「あっ、あいつら逃がすかーー」「おうよ!」二人の子分は、逃げ出した二人を捕まえようと走り出したが、「追わなくてもよい」と、野蛮な雇い主に一言言われて王のを止めた。

「おっ、親分、追わなくていいとは? あいつら、逃がしてもいいんですかい?」

「ムフフフッ、お前達、この前言っただろう、私は次なる金ヅルがいるとな、ガキ共の倍、いやその倍は稼ぐのだ。  ウワーッハッハッハッ!!」野蛮な雇い主は狂ったように笑い出した。


「ハァ、ハァ、ハァ・・・」何十分だろうか、二人は村の入り口にある今日の勤務が終了した村の市役所の壁と村の塀との間に隠れると、二人とも、崩れるようにその場に座った。

 兄アウルは壁から少し顔を出すと、その目で周囲を調べた。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」兄は壁に背中を倒した。追いかけてくる者は、誰もいなかった。しばらく二人は荒れた息を整えた。

 

 そして、そのまま、二人はしばらく黙っていた。

 これで、この村に居場所は無くなった。

 月と星のが美しく輝く村で、二人の双子の兄弟は住む場所を失った。

「グスンッ」泣き虫弟アールが、兄の方を見ると、声には出さなかったが、溢れんばかりの涙を目に溜めている兄がいた。そして

「うっ、ううっ・・・・・・・・」兄アウルは弟アールの前では涙を見せることがほとんど無かったが、この一時だけ、兄のアウルは、10才の子供に戻った。しばらく、決して声には出さなかったが、兄アウルは弟よりも沢山泣いた。

<<これは、実際に起こった実話を、そのまま物語にしたものです。物語の中には、前世や過去世催眠という言葉が出てきますが、こちらも本当の事実です。実際に起きた事実の断片を一つの物語にしました、事実95%間接材5%です。>>


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