現世の拓也とその前世の兄アウル
過去世療法を一端ストップした拓也は、自らの前世の記憶を思い出し、涙が止まらなかった。 続いて、前世の人生の終わりまでの記憶を思い出すことに。
<<現実世界>>
拓也は、起きていながら夢を見ている様な深いリラックス状態から、ベットの上で上向けになっている自分自身の感覚を実感した。
全身、もの凄い汗で一杯。
目には、流水の様に沢山の涙が溢れていた。だけど目は、開けたくなかった。
脳裏には、実際に起こっていただろうが、既に終わった過去の出来事、野蛮な雇い主の黒い悪魔の様な目に焼き付いた恐怖の姿が、ハッキリと残っていた。
自分の過去世は双子で産まれた兄アウル、そして、現世では本当のお兄ちゃんの様な存在である和也さんが、弟アールだった。
過去世において、兄弟以上の絆である双子として、自分たちは産まれていた。
お城から夜の森に逃げて、2人で涙を流していた時の感情が、今でもハッキリと残っていた。
左手には・・・、少女シェリーの手が握られていたが、拓也には、それが過去世の自分であるアウルの弟アールの手、強い兄弟愛で結ばれた弟アールの手に思え、今は、その手を決して放したくはなかった。
「一度目をあける?拓也お兄ちゃんは、いつでも目をあけられるよ。」拓也の手を握ったまま、少女のシェリーはそっと問いかけた。
「・・・・・続ける。」目をつむったまま、拓也は体がとても熱く感じた。自分の言葉さえも、現実なのか夢なのかが分からないような感じに思えた。そして、
「シェリーは、ずっと隣にいる?」拓也はとても、寂しそうに問いかけた。
「ずっといる、決して離れたりしない、私の役目は、拓也お兄ちゃんに終わったけど大切な過去を思い出させること。」
「今、拓也お兄ちゃんは、夜の森にいるんだよね、それから、3ヶ月後を思い出してみて、お兄ちゃん達兄弟は大丈夫、ちゃんと森を抜けて、また、ちゃんと、住むところを見つけたから。」
拓也は過去世を思い出す前に、その後の生活が、危険な生活か、そうでないかを思い浮かべ、"危険ではない生活"を希望した。
「ねぇ、シェリー、聞いてもいい?」
「私、分かる、拓也お兄ちゃんの質問は"次は悲しくない生活"を望んでいるのよね」シェリーは何も考えずにそう言った。
"シェリーは全て知っているんだ・・・それもそのはずかな"そう思うと、拓也は少し安心した。
「大丈夫、拓也お兄ちゃんが前世で双子の兄アウルだった人生は、もう全て終わったの、この先を思い出すことは、お兄ちゃんにとっては怖いと思う、でもね、それを思い出すことが、今日のお兄ちゃんと、私の役目よ、私はずっとお兄ちゃんの側にいる、そして、お兄ちゃんの手は話さない、お兄ちゃんの隣で、私はずっと見守っているから。」
"暖かい、僕の左手のシェリーの手があたたかい、違う、僕の体がまるで大きな愛に包まれるような感じがする・・・"拓也は、シェリーの手を通じて、まるで大きな安らぐ感情か何かに包まれる感じを受けた、それは本当に大きな大きな愛のような、拓也が持っている言葉と知識で表現出来ない、感じるまま、それだけ、だけど、違う、なぜか、涙が溢れてきた、悲しい涙じゃない、それは、拓也の知識で表現すると、感動の涙としか表現出来なかった。まるで、お母さんのお腹から出てきた赤ちゃんが受けるような、大きな感動と愛を、拓也は無言で感じた。
"涙が・・・止まらない"
"僕、今日の夕方、ずっと僕を大事にしてくれていた和也さんに、酷い事言ってしまってた、なぜだろう、とても悲しいことをしてしまったんだろう"
目を瞑ったままの拓也の頬を、流れる様な涙が止まらない。
「僕、どうしたんだろう、僕、何なんだろう、僕って何なんだろう・・」拓也は小声でシェリーに、シェリーから届く大きな愛に訪ねた。
「思い出して、拓也お兄ちゃん、あれから、三ヶ月後、大丈夫、お兄ちゃん達は隣村の教会にいる、大丈夫、優しい神父さんと奥様、そして、ちゃんと、兄弟二人がいるよ。」
「はぁ はぁ はぁっ・・・・・」拓也は震える息を整え、涙を我慢し、そして、脳裏の後ろに吸い込まれるような感覚を思い出すように感じてみた、すると、まるで吸い込まれるように現代の意識が一回転するような感覚に代わり、そして、とある晴れの日の教会の、広い広い広大な庭園で、僅かな家畜の世話をしている過去世の自分である兄アウルと、不器用な弟アールの姿を感じると、直ぐに意識は兄アウルへ移行した。
太陽の光が暖かい、草木の緑が輝いている、いや、太陽の光が強くて、暗い気持ちになんて、なっていられないようだった。
"分かった"微かに残っている拓也の意識が、前世における3ヶ月間に何があったかを感じた。野蛮な雇い主に、居候先の城と、二人を実の子供のように愛してくれていた夫妻を目の前で焼かれて、二人は城を飛び出し、明かりの無い暗い中を、手を繋いで逃げだ、城から離れた森の中で、二人は一夜を過ごし、それからは、二人とも、絶命こそ考えたが、なぜだろう、生きることを選び、そして、隣村へ行き、その中でも孤立している教会に助けを求めた、幼い頃からずっと働いていたので、お仕事なら何でもすると表明し、そこに住み始めた。
古い古い教会、そこに住んでいた夫妻は、大変な高齢、とても優しい人達だった、どこの誰だか分からないアウル兄弟を、優しく受け入れてくれた。
活発な兄アウルは、教会で行われる結婚式や葬儀で神主が行う司会を学んでいった、ドジの多い優しい弟アールは、身の回りの出来ることを全部こなして、恩返ししようと動いていた。
拓也の意識は、ある日の重要な出来事を、思い出し始めた。
<<これは、実際に起こった実話を、そのまま物語にしたものです。物語の中には、前世や過去世催眠という言葉が出てきますが、こちらも本当の事実です。実際に起きた事実の断片を一つの物語にしました、事実95%間接材5%です。>>




