八話
「う、わああぁぁぁぁ!!!!!」
「ルイ!」
ルイは頭を抑えてその場にしゃがみこんだ。
コリュは何が起こったのか理解していない。あたふたしている。
しまった。アイツにとって杖は魔力を抑える物。それが壊れたんだ。ルイの魔力はこの世で一番強大。器が持つはずねぇ!
俺は、ルイの元へと向かった。
「ディ!危ないですよ!」
「んなこたぁ知ってら!ナイト、杖をもってこい!」
ルイと俺の距離は後5メートルほど。と、ルイの体からバチバチと何かが出てきた。
魔力だ。ルイに収まりきれなかった魔力だ。
俺のほうにその魔力は向かってきた。避けれねぇ。
「バリアー!っ!何だよこの魔力。強すぎる」
「華僑……。おいコリュ!テメェも手伝いやがれ!殺されるぞ!」
「え……」
「今のルイは敵も味方も無い。魔力が切れるまで暴走する!」
さすがにコリュも死ぬのは嫌だったのか、華僑の隣に来て一緒にバリアーをはった。
と、ナイトが杖を持ってきた。この街で一番強い杖を持ってきたらしい。
俺はそれを受け取ってルイを見た。
一歩、また一歩、ルイはこちらに向かってくる。バリアーの中にいても分かる。魔力だけなのに物凄く怖い。
「お嬢様……」
「なんなのよ……あれは。まるで化け物じゃない」
『……!』
目が見えた。凄く悲しい色だ。化け物って言われるのがつれぇのか。
バリアーの外に出た。身体に無数の傷が入る。
よくよく街を見るともうボロボロじゃねぇか。あんな遠い所までボロボロだ。
いっぱい傷を作りながらルイに近づく。ルイは俺を怖がって後ろへ下がる。
『う……あ…!』
ルイの体がもう持たないのか。ルイ自身が壊れ始めていく。
俺は急いで歩く。後数歩。俺もボロボロ。
やっと傍までついた。ゆっくりと杖をルイに近づける。杖が光った。一瞬、凄くまぶしい光が放たれた。
しばらく何も見えなかった。やっと見えるようになって、目を開けると殆どが壊れた街と、倒れているルイ。近くには杖。
「ディ!無事か?」
「まったく、無理をしますね……。リュア!」
ナイトの魔法で俺とルイの傷が治っていく。コリュは華僑かナイトかどっちかの魔法で拘束されていた。
……なんか、何も残ってねぇ。街、こわれたな。すこし、寂しいな。
「ディはお嬢様の傍にいてください。私は怪我人がいないか探してきます」
「俺はコリュを見張っとくよ」
ナイトは瓦礫の上を器用に歩いて人形を探した。華僑はコリュの元へと向かった。
こりゃ、しばらくおきねぇな。ルイの奴。グースカグースカ幸せそうに寝ていてよ。俺達ゃ大変だったんだぜ。
そういえば、コリュが『ウィット』って言っていたな。なんか、どっかで聞いたなぁ。なんだったっけ?
お、もう夕暮れじゃねぇか。あぁ、今日はすげぇ疲れた。