六話
パカラッパカラッ……。
軽快な馬の蹄の音が続いていく。
……僕は最初馬に乗れなかった。三人とも乗れるのに僕は……!
ナイトや華僑のコツを教えてもらったものの、馬が言う事を聞いてくれなくて大変だったよ。
ま、最終的に魔法で捻じ伏せたけど。
「……おや?あの街は―」
「俺達の街だな」
目の前に大きな街が現れた。
あの街はその昔にナイトとディが出会った場所。そして二人で多くの時間を過したらしい。
僕もナイトとはあの街で出会った。もちろんディ経由で。
「懐かしいですね。行きましょうか」
ナイトが目を細めながら街の大きな門を見つめた。
「あの酒場まだあっかなぁ」
「酒場?」
「あぁ、華僑はしらねぇんだな。俺とナイトが気に入っている酒場だよ」
良く、ソコで喧嘩したり賭けあいとかしたって聞いた。
一度入ったけどスッゴイお酒臭くて笑い声が凄かったなぁ。
ディってソコの人たちに慕われているみたい。なんか、昔盗賊が入ってきたときにディが退治したらしい。……あ、ナイトもか。
門兵に門を開けてもらい中に入った。
「かわらねぇな」
「えぇ。宿、行きましょうか」
ゆっくりと馬を歩かせながら街の中を見た。
人がいっぱいいて、皆ディとナイトの帰りに驚いてそして、喜んでいる。
「ねぇ、酒場には行かないの?」
僕は三人を見ながらきいた。
すると、華僑が呆れ顔で、
「ルイ、馬はどうするんだ?」
そういった。
宿についてナイトが宿屋の主人と話すとなんと、ただで泊めて貰えるって。
本当、人気者って言うかなんと言うか。
とりあえず馬を馬小屋に入れて歩いた。ふと、僕は空を見た。
「な……!あんなに時空のヒビが……!」
「今気が付いたのかぁ?おせぇぞ」
「まぁ、まだ平気だろうな」
大きいヒビがあった。ちょっと前に見たのよりも大きい。早いなぁ。
と、あの酒場についた。ディが先頭で入って行った。皆見向きはしない。
が、一人こっちを見て大きな声で言った。
「ディとナイトだぁーー!!!」
全員がこっち……正確には二人を見た。どよめきが大きくなる。
僕たちは適当な席に座って、ナイトはワイン、ディはビール、華僑は緑茶。僕はジュースを頼んだ。
周りにいっぱい人形が来た。あぁ、何か、ナイトと出会った時にも見た顔が……。
「ディとナイトじゃねぇか!久しぶりだなおい!」
「お、あん時のねぇちゃんじゃねぇか!元気にしてたかい?」
「赤毛のあんちゃん随分細っこいな!そんなんで刀振れんのかよ?」
強そうな熊の人形が笑いながら華僑に言った。華僑が立ち上がった。
まぁ、華僑はマリオネットの中でもかなり細いし、ぱっと見力がなさそうなんだよなぁ。
「よし、お前俺と腕相撲するか。お前が負けたら奢れ。いいな?そういや、見た目だけ強くても弱いって事あるなぁ。実はお前、弱かったり?」
「(カチン)お前の腕をへし折ってやるよ」
二人は空いているテーブルへと向かった。僕たちも行った。
にしても、二人とも随分キレてるなぁ。さっきがビンビン伝わるよ。華僑は手をポキポキ鳴らしているし、熊の人形はこめかみに青筋立てているし。
と、ディが何か思いついたのか酒場にいる全員に言った。
「なぁ、どっちが勝つか賭けようぜ。ビツと華僑で。一人1000$から」
あ、あの人形ビツって言うんだ。ってか、知っていたんだ。
皆、ビツに賭けた。僕たちは華僑。
二人はテーブルに肘を突いて手を組んだ。審判はナイト。
「良いですか?二人とも。それではレディー、ゴー!」
勝負は一瞬だった。僕たち以外の人形は皆驚いている。倒れているのは茶色いぶっとい腕。
勝負の結果は華僑の勝ち。まぁ当たり前だよ。