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探偵編プロローグ

第一部の探偵編になります。

プロローグとして簡単な事件をアイラの食欲と共にお届けします。

楽しんで頂けたら幸いです。

世界が救われた。悪魔は滅び、認識阻害は解け、私は正式に公爵令嬢となった。


……めでたしめでたし。と言いたいところだけれど、私の前には今、新たなる巨大な敵が立ちはだかっていた。


「……また、これなのね」


目の前の白磁の皿の上には、最高級の小麦を使った柔らかい白いパン。それはいい。問題はその横だ。


これでもかと高価な香辛料に漬け込まれ、元の肉が何だったのか判別不能なほど濃い味付けのステーキ。そして、一週間前にも見た「代わり映えのしない」コンソメスープ。


仕上げに置かれたデザートは、暴力的なまでの砂糖の塊……「甘ければ文句ないだろう」という、料理人の怠慢すら感じるタルトだ。


「お姉様? お口に合いませんか?」


隣でリリアが心配そうに覗き込んでくる。


リリアや、お父様、お兄様は満足そうに食べている。そう、この世界の貴族にとって、高価な香辛料をこれでもかと使うことこそが「贅の極み」なのだ。素材の風味を活かすなんて概念は、この豪華な食卓には存在しない。


「……いえ、美味しいわよ。ただ、ちょっと……刺激的な味に飽きちゃっただけ」


私は心の中で絶叫した。


違う! 私が食べたいのは、ガツンとくるけど繊細な出汁の味とか、素材の甘みを引き出した煮物とか、口の中でとろける絶妙な焼き加減のオムライスなの!

その夜、私は悶々としたまま眠りについた。


すると、真っ暗な意識の中に、突如として眩い光が差し込んできた。


『……えっ、何!?』

目の前に、巨大なモニターのような映像が次々と現れる。


そこには、前世で愛してやまなかった料理たちの姿が、恐ろしいほどの鮮明さで映し出されていた。


黄金色に輝くパラパラのチャーハン。


湯気を立て、醤油の香ばしい匂いが漂ってきそうな江戸前寿司。


じっくり煮込まれた飴色のカレー。


さらには、繊細な盛り付けのフランス料理から、屋台のソース焼きそばまで。


『ょっと待って、これレシピ!? 映像だけじゃなくて、分量や火加減、果てはジュージューと肉が焼ける音や醤油の焦げる匂いまで、脳髄に直接流れ込んでくるんだけど!』

それは情報の洪水だった。


「醤油の作り方(代用品の呪術合成法含む)」


「カツオ出汁の完璧な取り方」


「肉の筋を断つ魔法の角度」


膨大なデータが、私の脳に直接叩き込まれていく。覚えきれるはずがないと悔しくて、私は必死にその映像に食らいついた。一秒たりとも見逃したくない。これこそが私の、この退屈な食卓を変えるための希望の光なのだから。


「――っ!!」


飛び起きると、窓からは清々しい朝日が差し込んでいた。


額には薄っすらと汗をかいている。私は慌てて、夢の内容を思い出そうとした。


(……覚えてる。全部覚えてるわ!)

卵をふわふわにするコツも、スパチュラの動かし方も。私の脳内には今、世界中の美食を再現するための「最強のデータベース」が構築されていた。これぞ、転生した私への神様(あるいはあの天使)からのボーナスに違いない。


「ふふ、ふふふふ……。今日から、この公爵邸の食卓は私が支配するわ!」


私は意気揚々とベッドを抜け出し、厨房へと向かった。


さすがに9歳の令嬢が自ら包丁を握ることは許されないけれど、私にはこの屋敷が誇る一流の料理人たちがいる。


「料理長! 今日の朝食、私の言う通りに作ってみて!」


「お、お嬢様!? 厨房に令嬢が入られるなど……しかし、レシピ、でございますか?」


困惑する料理長に、私は脳内のデータベースから「究極の出汁巻き卵」と「素材の甘みを引き出したポタージュ」の作り方を、理路整然と、かつ情熱的に伝授した。


最初は半信半疑だった料理長も、私の語る「火加減の極意」や「調味料の黄金比」を聞くうちに、職人の血が騒いだのか目の色を変えて鍋を振り始めた。


そうして食卓に並んだ朝食は、革命的だった。


過剰な香辛料に頼らず、素材の旨味を最大限に引き出した料理の数々。


「アイラ、これは一体……! 優しい味なのに、奥が深い。こんな料理は初めてだ!」


「お姉様、すごいです! このスープ、お野菜がとっても甘いです!」


お父様もお兄様も、そしてリリアも、夢中でスプーンを動かしている。


よしよし、大成功。これで私の美食ライフは盤石ね、と満足感に浸りながら、私は食後の様子を見に再び厨房へと足を運んだ。


しかし、そこで私を待っていたのは、深刻な顔で話し込む料理長と、一人の震える納品業者の姿だった。


「――ですから、これ以上の納品は命の保証ができないと言うのですか!?」


「申し訳ございません料理長……。ここ数日、公爵邸へ向かう食材の馬車ばかりが、街道の特定ポイントで強盗に襲われているのです。他の貴族の馬車は無傷なのに、うちのルートだけが……」


業者の男は青ざめた顔で、お父様に相談したいが恐れ多くて足がすくんでいるようだった。


「……何ですって?」


私の背後に、どろりとした漆黒のオーラが立ち昇る。


ようやく手に入れた至高のレシピ。それを形にするための最高の食材。それを、よりにもよって食材泥棒ごときが邪魔をしている? つまり、このままでは私の「次の食事」がないということ?

「……許さないわ」


私はスッと業者の前に立った。


「あなた、その話を今すぐお父様――公爵閣下に伝えて。案内してあげるから」


「えっ、あ、アイラお嬢様……!? ひぃっ、閣下にお会いするなど……!」


「大丈夫。お父様は今、とっても『機嫌がいい』から。でも、このまま食材が届かないと知ったら、街が一つ消えるくらいの怒りになるわよ。……さあ、行きましょう」


私は震える業者の袖を掴み、有無を言わさぬ足取りで執務室へと向かった。


私の美食ライフの第一歩を邪魔した連中には、黒魔法(呪術)と公爵家の武力による、最高にえぐい報いを受けてもらうことにしよう。


「リリア! 準備して。……お仕事(捜索)の時間よ」


廊下でリリアを捕まえ、私の探偵モードは早くも全開になっていた。



「――全員、聞け! これは単なる窃盗事件ではない。我がアルジェント公爵家の『誇り』と、それ以上に……アイラとリリアの『朝食』を取り戻すための聖戦である!」


王都の外れ、公爵邸の門前に並んだ十数名の精鋭騎士たちを前に、セオドア兄様が剣を抜き放って宣言した。


お父様は公務で直接動けないため、今回の捜索隊の指揮は兄様に任されている。……とはいえ、実際には馬車の中で「お姉様、次はどんなデザートを作ってくださるんですか?」とワクワクしているリリアと、その横で「まずはあの極上卵を取り戻さないと、オムレツが始まらないわ」と鼻息を荒くしている私が、実質的な舵取りをしていた。


「あ、あの、セオドア様……本当に、お嬢様方も同行されるのですか?」


捜索隊の隊長を務めるベテラン騎士が、困惑気味に尋ねた。彼らにしてみれば、九歳の令嬢を危険な強盗探しの現場に連れて行くなど、正気の沙汰ではないのだろう。


「心配無用だ。彼女たちがいるからこそ、この捜査は成立する。……アイラ、リリア。準備はいいか?」


「「はい!」」


私たちは馬車を降り、食材が強奪されたという街道のポイントに立った。


さて、ここからが探偵バディの出番だ。


「まずは私の番ですね。……【白魔法ホワイト・サーチ】」


リリアがお忍び用の銀のスプーンを手に取り、目を閉じる。


彼女がイメージするのは、犯人の顔ではない。盗まれた『公爵家の食材』そのものだ。


(盗まれたもの……卵、お肉、美味しい果物……)

「『盗まれた(ストーレン)』」


リリアがキーワードを口にすると、スプーンが淡い光を放ち、生き物のようにグリンと特定の方向を向いた。そのまま、スプーンは一定のリズムで細かく振動を始める。


「あっちです! まだそれほど遠くには行っていません!」


「よし、追え!」


兄様の号令で、騎士たちが一斉に動き出す。


これだけなら、ただの「魔法による追跡」だ。しかし、今回の私たちはそれだけじゃない。


「隊長さん、ちょっと待って」


私はふと足を止め、わずかな違和感を掬い上げるように目を細めた。


「あそこの茂み、不自然に折れてない?」


私はリリアの指し示す方向を見据えながら、前世のゲーム知識や、スラムでの『盗賊の逃走経路』を思い返して指摘した。


隊長が鋭い目で茂みを調べ、地面を指でなぞる。


「……間違いない。馬車のわだちを消そうとした跡がありますが、重量に耐えきれず、地面が深く沈んでいる。……リリアお嬢様の指した方向の先に、隠し道があります!」


魔法が「方向」を示し、熟練の騎士の目が「確証」を与える。


その見事な連携に、最初は懐疑的だった騎士たちの顔つきが変わっていく。


「さらにここを見て。食材の箱からこぼれたと思われる、公爵邸専用の梱包用のわらが落ちてる。……あいつら、隠れ家に運び込むのを急いでるみたいね」


「魔法と状況証拠……。なるほど、これなら確実に追い詰められる!」


隊長が感嘆の声を上げた。


魔法は万能ではない。だが、現実の証拠と組み合わせれば、それは回避不可能な絶対の追跡術となる。


やがて、リリアのスプーンが激しく回転を始めた。


「……お姉様、すぐそこです。あの廃屋の中に、たくさんの『物』の気配があります!」


「……ええ。私も感じるわ。あそこには『人間(犯人)』の嫌な気配が充満してる」


私は、リリアの探知で絞り込まれた廃屋を凝視した。


ここからは私の【黒魔法】……ではなく、まずは騎士団の出番だ。


「セオドア兄様。あそこがネズミの巣よ。先日、魔法師団が陰謀の調査に来た時に……あの師団長の息子さんが言っていた『隠蔽魔術の拠り所』になる古い建物の条件とも一致するわ」


事後調査の報告会で、師団長に同行していた少年――リュカと名乗った生意気そうな魔道士が、屋敷の応接室で語っていた解析結果。あいつが言っていた通り、ここには魔術的な「死角」がある。


セオドア兄様も、あの時のやり取りを思い出したのか、鋭く頷いた。


「分かっている。……全員、陣形を変えろ! 物理的な罠だけでなく、術式による反撃も考慮しろ。敵に逃げ道を与えるな、一気に制圧するぞ!」


セオドア兄様が、魔法と戦術を組み合わせた冷静な指示を飛ばす。


普段はただのシスコンに見える兄様だが、指揮官としての姿は流石に公爵家の後継者らしい威厳に満ちていた。


私とリリアは、完璧な所作で背後に控えるマリー姉ちゃんの影に隠れながら、その様子を見守った。


「マリー姉ちゃん、食材が無事だといいんだけど」


「ご安心ください、アイラお嬢様。もし食材が傷ついていたなら……わたくしが、あの盗賊たちの人生を『お掃除』して差し上げますわ」


マリー姉ちゃんが、ニコリと恐ろしいほど美しい笑みを浮かべた。


魔法、剣術、そしてメイドの執念。


多方面からの「凄み」を目の当たりにした騎士たちは、もはや双子を「守られるだけの子供」とは思っていなかった。


彼らの目に宿るのは、未知の力を使いこなす幼き天才たちへの、深い敬意だった。



リリアのダウジングが指し示した廃屋。


そこはかつて隠れ家として使われていたのか、不自然なほど周囲の木々が密に植えられ、魔術的な「死角」となっていた。だが、ひとたび場所が特定されれば、アルジェント公爵家騎士団の敵ではない。


「――突入ブリーチ!!」


セオドア兄様の鋭い号令と共に、重厚な扉が騎士たちの体当たりで粉砕された。


中から賊たちの怒号が上がるが、それも一瞬のこと。完璧な連携で踏み込んだ騎士たちは、抜剣する暇さえ与えず、次々と強盗たちを組み伏せていった。


「な、なんだ!? なぜここが分かった……! 流通ギルドの役人さえ巻いたはずだぞ!」


「あいにくだが、我が家の『探偵』たちの目は節穴ではないのでな」


セオドア兄様が冷徹に言い放ち、賊の首領と思われる男の前に剣を突きつけた。


屋敷から連れてこられた鑑定役の使用人が、奥の倉庫を改め、歓声を上げる。


「セオドア様! 食材はすべて無事です! 例の極上卵も、希少な果物も……! 賊どもはこれを闇市で高値で売り捌くつもりだったようですな」


その報告を聞いた瞬間、私は心底ホッとして胸を撫で下ろした。


よかった……。これで明日の朝は、夢で見たあの「絶品オムレツ」が食べられる。私の美食ライフへの道は守られたのだ。


「……それにしても」


捕縛作業を見守っていた騎士団の隊長が、兜を脱いで私たちの方へ歩み寄ってきた。その顔には、隠しきれない驚愕と感服の色が浮かんでいる。


「アイラお嬢様、リリアお嬢様。正直に申し上げまして、度肝を抜かれました」


「えっ、何か変なことしたかな?」


「いえ……逆です。リリアお嬢様の探知魔法で『方向』を絞り込み、アイラお嬢様が地面の沈み込みや梱包材の藁という『物証』から『経路』を特定する。……この手法は、我々騎士団の斥候でも数時間はかかる作業です」


隊長は廃屋の周囲に散らばる証拠品を指差した。


「魔法は確かに強力ですが、それだけではこうした巧妙な隠れ家は特定できません。状況証拠を積み重ねて魔法の結果を裏付ける……。お二人が見せたのは、もはや単なる幸運ではなく、確立された『捜査術』です。これが他の未解決事件に応用できれば、王都の治安は劇的に変わるでしょう」


隊長の言葉に、周囲の騎士たちも深く頷いている。


彼らの目に宿るのは、もはや「守るべき子供」への同情ではない。自分たちを導く「知恵者」への敬意だ。


「……リリア。聞いた? 私たち、なんだか凄いことになっちゃったみたいだよ」


「はい、お姉様! 私、お姉様のお手伝いができるなら、どんな事件でも頑張ります!」


リリアが嬉しそうに私の手を握りしめる。



「……ふん。我が妹たちが有能なのは当然のことだ。だが隊長、あまり彼女たちを連れ回そうとするなよ? アイラとリリアの本分は、あくまで公爵令嬢としての幸せな生活なのだからな」


セオドア兄様が剣を鞘に収め、誇らしげに鼻を鳴らした。……と言いつつ、兄様の目は「うちの妹たち、凄すぎるだろう?」と全力で自慢げに騎士たちを見せびらかしている。


「さて。食材も確保したし、とっとと帰りましょうか。料理長に、最高に美味しい料理を作ってもらわなきゃ!」


私の目的はあくまで「食」。


けれど、この日を境に、王都の貴族たちの間である噂が広まり始めることになる。



――アルジェント公爵家には、どんな隠し事も暴き出す『白と黒の探偵姉妹』がいる、と。



美食を求め、ついでに事件を解決する。


私の二度目の人生、どうやら想像以上に忙しくなりそうだ。


(公爵令嬢・探偵編 開幕)


無事に食材を奪還し、意気揚々と公爵邸へ帰還した私たちは、戦利品である食材の山を厨房へと運び込ませた。


特に、あの盗賊たちが「闇市で金貨になる」と大事そうに抱えていた『太陽の卵』が無事だったことが、私にとっては何よりの勝利報酬だった。


「料理長、約束通り……最高の朝食を頼むわね」


「はっ! お嬢様から賜ったあの『黄金のレシピ』、この料理長、命を賭して形にしてみせましょう!」


料理長は、まるで決戦に挑む騎士のような面持ちで、奪還されたばかりの卵を手に取った。



そして翌朝。


公爵邸の食堂には、これまでとは明らかに違う「匂い」が立ち込めていた。


これまでは高価な香辛料のツンとした刺激臭が鼻を突いていたが、今はもっと、胃袋を優しく掴んで離さないような、香ばしくも甘い香りが漂っている。


「……アイラ、これは一体なんだ? 卵料理だとは思うが、こんなに美しく、そして……震えているのは」


お父様が、皿の上に乗ったその物体を凝視して驚愕の声を上げた。


お兄様も、フォークを握ったまま固まっている。


「ふふん。それはね、『太陽のオムレツ・プレーンスタイル』だよ」


目の前に並んだのは、外側は絹のように滑らかで、内側はナイフを入れずとも自重でとろけ出しそうなほど柔らかい、黄金のオムレツ。


夢のレシピによれば、大事なのは火加減と、空気を含ませる混ぜ方、そして何より「素材の邪魔をしない」こと。


「お姉様、いただきます!」


リリアが待ちきれない様子でナイフを滑り込ませた。


その瞬間、プルンと弾けた表面から、濃厚な黄色いソースのような半熟卵が溢れ出す。


「……っ!! お、お姉様! これ、凄いです! お口の中で……卵が消えちゃいました!」


リリアの青玉の瞳が、これ以上ないほど輝いた。


お父様とお兄様も、恐る恐る口に運ぶ。


……静寂。


次の瞬間、二人は示し合わせたように、猛烈な勢いでスプーンを動かし始めた。


「なんだ、これは……!? 香辛料に頼らなくても、卵そのものにこれほどの深みがあったのか……! まるで、朝の光を食べているようだ!」


「父上、このソース……! 昨夜奪還したあの希少な果物で作ったという『チャツネ』との相性が抜群です! アイラ、お前は……お前というやつは、どこまで天才なんだ!」


お兄様に至っては、感動のあまり少し目に涙を浮かべている。


いや、ただの夢の知識なんだけどね。でも、この世界の一流料理人が、最高の食材と私の知識を掛け合わせれば、そりゃあ「神話級」の味になるに決まっている。


「マリー姉ちゃんも食べてみて。これ、絶対に美味しいから」


「ありがとうございます、アイラお嬢様。……ふふ、確かに。これはスラムで食べていたあのカチカチの卵とは、別の生き物のようですね」


背後に控えていたマリー姉ちゃんも、一口食べて満足げに微笑んだ。


そう、これよ。これこそが私が求めていた「大勝利」の味。



硬いパンに、無闇に濃い味付け。そんな退屈な貴族の食卓は、今日、このオムレツによって完全に過去のものとなった。



「料理長、デザートは?」


「はい! 昨夜の霜降り肉を特製の『出汁』で煮込んだ小鉢の後は、あの希少な果物をふんだんに使った『クレーム・ブリュレ』を用意しております!」


「……最高」


お父様とお兄様は、もはや「公爵家の権威」とか「マナー」とかを半分忘れ、争うようにおかわりを求めている。その過保護な愛情の矛先が、今は私の「胃袋のプロデュース能力」に向けられていた。


「アイラ、これからお前の望む食材は、たとえ地の果てにあろうとも、我が騎士団の総力を挙げて確保させよう。二度と、何者にも邪魔はさせん」


「そうですよアイラ! 食材泥棒など生ぬるい。これからは、お前の食卓を脅かす可能性のある芽は、俺が事前にすべて摘み取っておきますから!」


……いや、そこまでしなくていいんだけど。


でも、お父様とお兄様がやる気になってくれるなら、次はあの夢で見た「伝説の苺タルト」に必要な、さらに特殊な小麦の確保もお願いしちゃおうかな。


事件解決の報酬は、甘美で濃厚な、希望の味がした。


アルジェント家の食卓革命は、まだ始まったばかりだ。



楽しんで頂けたでしょうか?

今回は文章の中に出てきた魔法師団長の子息ですが、この探偵編ではこの子息も含め、沢山の有力権力者の子息が出てきます。

プチ恋愛の流れもあるかもです。

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― 新着の感想 ―
 ん~アルジェント公爵邸は王都の中心にあると言いながら兵士を集めたのは王都のはずれに門のある場所で規模のおかしさが目についた(ピザで言うと一切れが丸々公爵邸になってしまう)、ついでに食料(全部なのか一…
・・・。 短編と違いコメディー? いや良いけどwww
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