【ほしふるよるに】愛猫に捧ぐ
『ほしふるよるに』
しろは、しずかに ねむった。
わたしの てのひらに、
しろの あたたかさは まだ のこっているのに。
しろは、もう とおくへ いってしまった。
いまより ずっと ちいさなとき
「ほしふる よるに ねがいごとを するとね」
おばあちゃんが そっと おしえてくれた。
「そらの うえから ちゃんと きこえるんだって」
おわかれから なんにちたっても かなしさが きえてくれない。
わたしは まどべに ちかづいた。
ガラスを そっと あけると、
ひんやりした よるの かぜが はいってきた。
ほしが ひとつ、また ひとつ おちてきた。
そのたびに、そらが どんどん あかるくなる。
わたしは おもわず めを みはった。
「……きれい……」
そらを ながめていると、
しろに いいたかったことが、
すこしずつ うかんできた。
「もっと あそべば よかった……」
わたしは そらに つぶやいた。
その とき、
やさしい こえ。
「いっぱい あそんで もらったよ」
こえは とおいのに、
すぐそばで ささやく みたい。
「あのとき おふとんのなかで、
しろが いびき かいたでしょ」
「いびきじゃなくて、きみの おなかだったよ」
しろの こえが くすくす わらっている。
わたしも くすっと わらった。
ふたりだけが しっている、
やさしい ひの こと。
さびしいときは、
しろが そっと かたに のってきた。
すこし だけ すりすり してくれて。
わたしは それが うれしかった。
「また いっしょに……。……ずっと いっしょに いたい」
わたしは こえを ふるわせて となえた。
そらの どこかで、
「おなじ きもちだよ」
しろが こたえてくれた。
でも、
かぜが つよくなってきて、
あたりは しずかに くらくなった。
ほしふる よるは、
しずかに おわってしまった。
のこったのは、
こえに ならない なみだ だけ。
つぎの ひ。
こうえんの べんちに すわって、
わたしは かおを ふせていた。
なみだが ひとつ、
また ひとつ。
そのとき。
しろい こねこが、
わたしの まえに たたずんだ。
「……しろみたいだ」
わたしは そっと、てを さしだした。
こねこは においを くん、と かいで、
てから うで、そして
かたへ。
すり、すり。
その ぬくもりを、
わたしは しっている。




