第7話 旅の始まり(2)
「嬢ちゃん。悪いがその足元に転がっている腕をこちらに投げてくれ。わしの腕なんじゃ。」
アムールは、飄々とした表情で言葉を投げてきた。
状況に対して全く合わない言葉に私の頭はこんがらがっていた。
「な、いや......腕を投げるって......それどころじゃ」
言葉とは裏腹に私は足元に落ちている腕を拾っていた。何とも言えない感情に包まれた。
(腕を投げるなんて......今後一生経験しないだろうな)
「な、投げますよ!」
私は目いっぱい振りかぶり、アムールに向かって腕を投げた。
投げられた腕は弧を描いて飛んで行き、アムールの懐に収まった。
「これこれ。ありがと」
(えぇ......そんな軽い感じの状況なの? ......私が世間知らずなだけなのかな)
私が困惑していると、アムールは持っている腕を確認し始めた。
「ふーむ。少し焦げてるが形はきれいに保たれているのぅ。奴の剣の技量が高くてよかったわい」
確認を終えたと思いきや、アムールは血で固まり始めた肘の切断面に切り離された腕をくっつけた。
(??? ......いったい何をするつもり、なの? )
様子を見ていると、アムールの持つ左腕が緑色に光り始めた。
焼け焦げた腕が戻っていく。そして、やけどを治した光は切断された部分に向けて腕を登っていき、切断された場所を完璧に治してしまった。
「!!!? え、え、え? 」
ようやく冷静になった頭が再び真っ白になっていった。
アムールが驚愕した私を不思議がるように見つめてくる。
「なんじゃ? 回復魔法がそんなに珍しいかのぅ」
「いや......回復魔法は見たことありますよ! そうじゃなくて私が驚いているのは効果の方です! 」
「効果? 別に普通に回復しただけじゃが......」
「切断した腕を治すのが普通??? ......失礼ですが、普通って言葉知ってますか? 」
規格外などという言葉では片付けられない異次元の業を、朝の挨拶でもするかのように淡々と成し遂げるアムールの姿に、もはや驚嘆を通り越して憔悴してしまった。
くっついた腕を軽く回し動作確認をしながらアムールは口を開く。
「よし。それじゃあ、出発するかの」
そう言うと彼は私に背を向け歩き始めた。
「ど、どこに行くんですか? 」
思わず私は声を投げかける。するとアムールは歩みを止め、振り返る。
「決まっておろう。悪者退治の旅に出るのじゃよ」
彼は悪そうな笑みを浮かべながら言い放った。
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