第16話 異変
歩みを進めるごとに、ぼんやりとしていた地平の影が輪郭を帯び、懐かしい村の佇まいが静かに姿を現した。しかし、村は異様なまでに静まり返っており、人の気配は感じられなかった。
「ようやくついた......が様子が変じゃのう」
「そうなんですか? 夜も遅いですし、人通りがなくても変ではないのでは」
「わしゃこの村につい最近訪れたことがある。その時も今と同じくらいの時間帯じゃったが、もう少し明かりも人通りもあったわい」
シェリを背中から下ろし、辺りを見回す。争った痕跡はなく、家屋などは綺麗なままであった。
「村の中を散策しよう。シェリ、感光魔法は使えるかの?」
「は、はい。一度使ったことがあるので......」
シェリはボソボソ詠唱を口ずさみながら掌に魔力を集中させ始めた。
やがて掌の上に小さな太陽のような光球ができ始める。
「う~む......改めて考えても、感光魔法が使えて簡単な攻撃魔法が使えないなんて変じゃのう」
「そ、そうですよね......」
シェリの様子が変わる。魔法を発動した瞬間とは違い小刻みに体が震えており、『傷口が開くのではないか?』と感じさせるほど力んでいた。
「どうしたんじゃ? そんなに力んで」
「い、いえ。......実は使えはするんですけど、維持することが苦手で――」
シェリの言葉が終わり切る前に、光球は見る見るうちに小さくなり、やがて魔素に戻り四散した。何とも言えない状況に『どうしたものか』と頭を抱えていると、シェリが消え入りそうな声で、ためらいがちにその唇をわななかせた。
「ごめんなさい......」
「い、いやそんな落ち込むことはない。ゆっくりとできる様になっていけばいいんじゃよ......」
謝罪をする彼女の表情に後ろめたさを覚える。
(......覚えていないとはいえ、儂は謝れていないのに、この子ときたら......)
私は、モヤモヤとしながらも、探索を始めるべく準備をし始めた。
「このランタンを持っておけ。ここからは互いに背中の死角を補うように動くぞ。何か見つけたら音を立てず、こっそりと儂に伝えるんじゃ」
「はい」
こうして、私はシェリと互いに警戒しながら探索を始めた。
掌に簡単な光源を作り、視界を照らしながら村の奥へと進む。
「やはり、人の気配はないのう」
「まるで人がある日忽然と消えてしまったみたいですね......。静かすぎるのも不気味というか」
「もう休憩どころではなくなってしまったのう」
私は、辺りの建物に何か痕跡がないか、魔力探知の強度をあげながら進んでいった。
豆知識
アムールは両利き。
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