第15話 導き
村はすでに指呼の間に迫っていた。
不気味なほど静まり返った様子に、少しの違和感を覚えながらも歩を進める。
「ふう......そろそろ村が見えてくる頃合いじゃな......。あと少しの辛抱じゃ、頑張るんじゃぞ、シェリ」
「は、はい! 状況はわかりませんが、頑張らせていただきます!」
「うむ。 いい返事じゃ――」
返ってくると考えていなかった相槌に、思考回路がショートし、脳内が真っ白になる。
その場で足を止め、疑問の原因となっている背中に視線を向ける。
「何かありましたか?」
「――?」
「――?」
私の思考は再び、遥か彼方へと旅に出てしまった。
「......身体は大丈夫なのか?」
「はい! まだ少し痛みますが、動きに支障はありません!」
「わからん」
「へ――?」
「本当に訳が分からん」
私は何とか頭に残っている思考力をかき集めながら疑問をぶつける。
「骨は削れ、神経系は一部損傷していた。低体温、出血多量......。儂が回復魔法をかけたとはいえ、常識というものがあるはずじゃ。……いや、待て。早すぎる。あまりにも早すぎるじゃろ、これ……」
病み上がりなシェリの事を考えず、雨のように言葉をぶつけていく。
シェリは少し考えた後、頬を赤く染め、照れくさそうに口にする。
「えっと......よくわかりませんが、きっとアムールの背中がそれほど心地よかったんだと思います」
「それほどでも~」
不意の褒めれられたことで口角が三日月のように上がる。
「......じゃなくて、本当にお主心当たりはないのか」
シェリが眉をしかめ、唸り始める。
暫くした後、ついに答えが出なかったのか風船がしぼむように息を吐きだす。
「はい......」
「そうか......」
先の戦いで見せた片鱗といい、今回の超人的な回復力といい、私は腑に落ちないでいた。
しかし、その『疑念』を具体化することはできなかった。
「そういえば、なんで私は背負われているのでしょうか」
私が一人、グルグルと疑念を回していると、今度はシェリの方から質問が飛んできた。
「そりゃ、お主が戦いで負傷したからで......もしかして、記憶がないのか?」
シェリが深くうなずく。
「戦いに勝利したまでは覚えているのですが、その後がどうにも思い出せなくて」
シェリの口から出た答えに、ますます私の疑念は深まる一方だった。
大きく息を吸い、今一度シェリの顔を見つめる。
『お前はいつか、出会うことになる。自分の運命を大きく変える存在にな』
師匠の言葉が頭をよぎる。
自分の運命がどのようなものかは、自分でもわからない。
しかし、私にとって彼女との出会いは何か運命を感じる出会いであった。
「......やっぱりわからんな」
「――?」
「さて。本来の目的はなくなったが、どうせあと少しじゃ。このまま村によって行こうかの」
銀色の光を纏った道が、夜の奥底へと続いている。私は再び前を向き、その光の筋を辿るように歩みを進めた。
豆知識
アムールはいびきがうるさい
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