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第14話 後悔

 太陽が隠れ、辺りはすでに暗闇に包まれている。

 右手にランタン、背中には弱り切っている少女を乗せ、暗い夜道を歩く。

 姿は見えないが、獣の遠吠えが耳の奥に響き渡る。

 足元は岩が露出しており、七十を超える老体には堪える獣道だった。


「はう......ふぅ......。きつい......老人の歩く距離じゃない......」


 魔力で肉体を......特に腰を強化しているのだが、それでも全身が悲鳴を上げていた。


「運動しておくんだった......う、吐きそう」


 先ほど食べた、乾パンが胃袋から顔を出しそうなのを気合で我慢しつつ脚を動かし続けた。

 そもそもは、私の行動が招いた悲劇なのだ。責任を取って当たり前だ。

 

「はぁ......はぁ......」

「......」


 息が乱れるたびに、頭の中から無駄な思考が抜けてくのを感じる。

 そして、無駄が抜け落ち、最後に残ったのはただ一つの後悔だった。


 ――なぜ、彼女に寄り添ってあげられなかったのだろう。


 真っ白な脳裏に一滴の黒いインクのようにその言葉はこびりついていた。


 ――どうして認めてあげられなかったのだろう。


 一歩、また一歩と軌跡を大地に刻むたびに、後悔も刻まれていった。

 私はその答えをすでに知っていた。


 ――怖かったのだ。


 私はあの時恐怖した。傷だらけの身体で、笑顔で迫ってくる少女の姿を見て、恐怖したのだ。

 そして、恐怖に負け、彼女を傷つけた。彼女のことを否定してしまった。

 右手に持ったランタンを強く握りしめた。

 

 本当ならば褒めてやるべきだった。抱きしめてあげるべきだったのだ。


『あなたの事をもう師匠とは思いません』


 呪縛のように一つの声が脳裏をよぎる。


 (......あの頃と同じだ。何も成長していない。)


 私が一人思いにふけっていると、背中の少女が虫のようにうごめく。


「起きたのか?シェリ」

「お母様......すごいでしょ......」

「寝言か......」


 シェリの頭をそっと撫でる。

 土にまみれ、ボサボサとした髪の毛は十代の、ましてや王女の髪ではなかった。


「すまんのう......」


 押し殺した声が、夜の静寂に溶けていく。溢れ出した謝罪は、誰に届くあてもなく、ただ枯れた唇から零れ落ちるばかりだった。


 いつしか、獣道は終わりを迎え、目の前には村への道が現れていた。

 村までの道はよく、商人が馬車を引き通るため、丁寧に舗装されてる。


「あともう少し......よし!」


 私はぐいと少女を背負い直すと、先ほどまでの沈鬱な表情を振り払うように、軽快な足取りで道を進み始めた。

豆知識

シェリの好きなことは”家族で食事をすること”


読んでいただきありがとうございます!

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