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第2話 恐怖と覚悟

続くと思われていた静寂が突如として崩れる。

安全だと思われていた洞窟はディア盗賊団の根城であった。

シェリは盗賊たちと相対することとなる……

"カタン"

洞窟の奥で小さな音が鳴る。


「誰?誰かいるの?」

恐る恐る声を出す。目を凝らしても何も見当たらない。怯える足を上げ、ゆっくり後退りをする。


「動くな」

言葉と同時に、少女の首に何かが当てられた。

冷たく、そして鋭いそれをすぐにナイフだと理解した。


「え――」

頭の中が真っ白になる。

声を出そうにも、喉が詰まる。



「へへへ……」

気付くと彼女の後ろには大柄な男が立っていた。

2m近くの大きさ、首に当ててるナイフが小さく見えるほどの体躯だった。


「動くなよ……

動いたら身体とお別れすることになるぜ」

岩のように硬く、丸太のように太い腕が迫る。

手は優しく花を摘むかのように肩に乗せられた。


震えは酷くなり、呼吸も浅く今にも途切れそうになる。

「(パパ…ママ…)」

もはや少女は、神に祈るように目を閉じることしかできなかった。


「いい子だな…そのままこっちに行こうか」

男の人に肩を掴まれたまま、少女は洞窟の奥の方へと歩き出した。


―――暫く歩いていると、灯りが見えてきた。

そして、其処には2つの影が蠢いていた。


一つは小さく細い影、もう一つは平均的な男性と同じくらいの大きさの影だった。


「兄貴!兄弟!侵入者を連れてきたぜ!」

大柄な男の仲間のようだ。

大柄な男は乱雑に少女の体を強く蹴り、二人の前へと押し出した。


「痛っ!」

少女は勢い良く跳ねるように転がり、床にたたきつけられた。閉じ始めていた、傷口が再度開き、血が滴る。


叩きつけられた少女は恐る恐る顔を見上げると、一人の男が彼女を見下ろしていた。


男の目は鋭く、ナイフのような目をしていた。

体は大きくないものの、その腕には鋼のような筋肉がついており、腰には大振りのナイフと小振りのナイフの二振りが掛けられていた。


その男は少女の全身を見たあと、

「なんだ…年端もいかねえようなガキじゃねぇか」

と言葉を発した。

押し潰される程の威圧感を感じる。

死の恐怖が少女の身体に纏わりついていく。


「あぅ…ァ゙…ぅふぅ」

明確な死を前に彼女は息が喉に詰まったかのように、嗚咽し息を荒げた。同時に彼女は確信をした。


「(パパが昔言ってた…遠くの平原にある洞窟をお家にしているっていうディア盗賊団…本当にいたなんて。)」

「随分とチンケな侵入者でゲスねぇ」


恐怖した少女を見ながら、横にいた小柄な男の人がキキキと笑いながら言葉を発した。

先程の男とは違い、小柄なその男は、耳が痛くなるような声をしていた。


その男の目はギラついており、その目線は微塵の隙も許さぬよう、少女に向けられていた。


男たちが少女に目線を向けていると、大柄な男が口を開いた。


「でもよぉヴァン兄貴…このガキはただのガキじゃなさそうなんですぜ。外が騒がしいから見に行ってみたら、このガキ、どうやら衛兵に追われてるっぽいんっすよ。」

「ほう…」

「本当か?兄弟。」


その言葉を聞いた途端二人の目の目つきが変わった。少女もまたその話を聞き心を乱した。


「(洞窟に入った時、兵士さん達はいなかったはず…どうしてこの人は私が追われていることを知っているの?)」

少女の疑問は"ヴァン"と言われる男の投げかけで、すぐに晴れることとなった。


「衛兵の奴ら、この近くまで来てるのか?」

「いや、この近くで見たわけじゃないっす。厳密には近くの街で少し盗もうとしたら、やたら騒がしくて…足運んでみたら、このガキが衛兵に追われてるところに遭遇したんっすよ。」

「(全然気づかなかった…!逃げるのに必死だったとしても、後をつけられないように気をつけてたのに!)」


男たちの話を聞き、少し冷静になる。

呼吸が整っていくのを感じる。

しかし、その落ち着きも長くは続かなかった。


「盗もうとした……?」


ヴァンの一声で辺りは恐怖に支配された。その声、目には怒りが宿っていた。

「てめぇ…勝手に街まで盗みにいったのか?盗みをするときは俺たちに報告する相手だったよな?」


ヴァンの怒りを感じた男は見る見ると縮こまっていった。ヴァンの余りの威圧感に近くにいた小柄の男も冷や汗が止まらない様子だった。

無論少女も再び恐怖していた。


しばらくの沈黙が続いたあと、ヴァンが沈黙を破る。

「で、そのガキが追われていたことはわかった。ただ、それだけじゃ別に普通のガキと変わらねえと思うが。」


大柄の男がぎこちなく口を開く。

「そう思うのも無理ないっす。自分も最初はそう思ってました。ですが…こちらを見てください!」


大柄の男がおもむろにバッグを弄り、1枚の紙を取り出した。

そこには少女の写真と名前、そして懸賞金がつけられていた。


「指名手配書…?こんなチビに?」

小柄な男が指名手配書を見ながら、眉をひそめた。


小柄な男の発言に眉をひそめつつ、ヴァンは手配書に目を落とす。

「―ん?こいつの名前…シェリ・ランベール…?どこかで聞いた―」


ヴァンがそう言いかけた瞬間、目の色を変えた。

「ランベール!この国の王族じゃねぇか!」

「そうなんっすよ!んで、このガキは姫!プリンセス様なんですぜ!」

2人は興奮した様子だが、小柄な男は冷静だった。

「ランベールって王族の名前なんですか?」


「「「……………。」」」

小柄な男を除く全員が真顔となる。

これにはシェリも思わずドン引きしてしまった。

しばしの間、無言が続いた。


世の中が生んでしまった悲しきモンスターに視線が集まる中、シェリは息を潜めた。

「(今なら…今なら逃げられるかも…)」


シェリは恐怖を感じながらも男たちの隙を見逃さなかった。松明の灯りだけを頼りに、藁にもすがる思いで周りを見渡した。


「(あそこに武器があるけど…私じゃこの男の人たちには勝てない。走って逃げようにもこの足じゃきっと追いつかれちゃう…。どうしよう…考えても考えても逃げる方法が思いつかない…)」


シェリは理解していた。小柄で満身創痍、オマケに相手は三人ときた。この状況を打破するのは、何もかも足りないことを。


「(このままじゃ…だめ!諦めちゃダメ!)」

自分に何度も言い聞かせた。


諦めたらすべて終わってしまうと

―何も残らなくなってしまうと。


必死に頭を回した。

冷たい風が体を強く叩き、鼓動が耳を木霊する。

生命の羈絆は少女に極限の集中を与えた。

次第にシェリの目からは恐怖が消え、勇気宿っていた。


「(たとえ…ここで終わるとしても、何もしないで終わりたくない。パパを救うために…王国の人たちを助けるために…!)」


―――少女は、足元に転がる砂を、

そっと指先で掴んだ。

作品を読んでいただきありがとうございました。

前回も言ったように、こちらは1話にまとめるはずだったものの一部となっております。

加筆・修正を行ったため、少し話が違うところがありますが、大筋は変わっていないのであしからず。

もしよければ感想などを送っていただけると、技術の向上につながるので大変ありがたいです。

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