第11話 特訓(3)
「しかし、逆にすごいのう! ハッタリだけで盗賊団の奴らをぎゃふんといわせるなんて......。存分に誇っていいと思うぞ」
静かな喜びが水のようにあふれる。
英雄と呼ばれし彼に褒められた。私の昔からある、土壇場の度胸を才能として認めてもらえた。
固く握りこんだ拳はいつしか、空気が抜けたように緩み、後ろで絡み合うように組まれていた。
「えへへ......」
頬を赤らめ、吐息のような声を思わず漏らしてしまった。
私が、先ほどとは別の意味でモジモジしていると、アムールの表情からはいつの間にか笑みが消え、真面目腐った顔になっていた。
その様子を見て私は不意に不安を覚えた。
(どうしよう、アムールがテストで悪い点を取った時の先生みたいな表情になってる。少し喜びすぎたかな......)
アムールが指を鳴らしながら、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来る。
「じゃが、魔法が使えないのは感心せんなぁ~。えぇ? シェリちゃん。苦い薬を飲み込んでこそ、身が丈夫になるってもんじゃよなぁ?」
アムールがスライムのような流体的な動きで背後に回ってくる。
優しく肩を掴み、ゆっくりと不気味な笑みを浮かべてきた。
怖い。ある意味盗賊団の人たちより恐怖を与えてきていると思う。モサモサの髭がより恐怖を引き立てているように感じた。
アムールが優しく......優っっっしく! 丁寧に耳元で囁いてくる。
「儂がこれから言いたいこと、わかるじゃろ?」
「......。」
「特訓、しよっか?」
「......はい」
***
暫くして、アムールは近くの草むらに入り、適当な特訓相手を探してきた。
本当は逃げ出したかったが、逃げる場所も助けてくれる人もいない、私にとってこの特訓は避けられないものとなった。
私が魔法が苦手なのは、周囲の期待を裏切ってしまうこともそうだが、何より理論が苦手なのだ。何度も徹底して、魔法の成り立ちから教えてもらったが、ちんぷんかんぷんであった。
そのため、座学があるときは決まって、教科書や過去に配られた資料をひたすらに暗記し乗り切ってきた。......どうやら今回はダメそうだが。
とにかく、魔法は成り立ちや理論を理解していないと、よほどの超感覚でもない限り行使することは難しいため、私にとっては地獄なのである。
「シェリ~。どんな相手がいいかのう~?」
「なんでもいいでーす」
私が呆然と空を眺めていると、突然草むらの方から水の刃のようなものが飛んできた。
「ホヮ!? 危な――」
突然の出来事に、笛のような声が漏れた。
幸い、速度がそこまで速くなかったため、避けることができた。
もし、ほんの少しずれていたら、私の首下とはお別れを迎えることになっていただろう。




