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第11話 特訓(2)

 アムールは心が波立ち騒いで落ち着かなくなるを見ながら言葉を続ける。


「あの時の様子から察するに、盗賊団か何かに襲われたんじゃろう。……して、ここからが儂の問いなんじゃが、おぬし、一体どうやってあの場から逃げ出してきたんじゃ?」

「それは......」


 思わず口を紡ぐ。なぜなら、私に魔法の才能がないためである。

 元来魔法とは、誰にでも使えるものではなかった。しかし、長い年月をかけ改良され、今ではよほど才能がなかったりしない限りでは、三歳児ですら使える代物となっている。

 だが、私は魔法が使えなかった。厳密には、日常でちょっとだけ便利になるような魔法は扱えたが、王族が学ぶ基礎的な魔法すら使うことができなかったのだ。

 誰も私を攻めてたりはしてこのなかったが、裏で落胆されていたのは知っていた。


 ――ハッタリだけで逃げてきたと言ったら彼はどのような反応を示すだろうか。

 ――私がほとんどの魔法が使えない落ちこぼれだということを知ったら見捨てられてしまうのではないか。


 心の中の拭き切れぬ影が雨雲のようにひろがる。


「それは――」


 絞り出した声が、自身の喉を震わせる。

 握りしめた拳には、白くなるほどに力が入り、食い込んだ爪が掌に深い痕を刻んでいた。

 この人と共に往く道を選ぶのであれば、真実を伏せることは不義に当たるのではないか。そんな迷いが胸を掠める。

 私は、心に巣食う昏い影を断ち切るように、ようやく言葉を紡ぎ出した。


「光を出す魔法を攻撃魔法に見立てて......」


 言葉の最後がほつれていくように小さくなる。

 アムールは、一瞬目を丸くしたが、すぐに表情を戻す。


「......もしかして、おぬし、あまり魔法は得意な方ではないのか?」

「はい......」


 アムールはわずかの間、思考の海に身を沈めるような沈黙を置いた。

 やがて、落胆の色も、あるいは憤怒の熱も帯びることなく、ただ硬く閉ざされた私の心を解きほぐすような、穏やかな声音で囁いた。


「なんじゃ。おぬしそんなことで、落ち込んどったのか」


 彼から出た返答は思いがけないものだった。気づけば、私の口は半開きになっていた。

 今まで、この話題になると、決まってみなネガティブな反応になっていたため、彼のような反応は新鮮だった。


 ――今の私は、きっと鏡を見るのも(はばか)られるほど、間抜けな(つら)をしているに違いない。

読んでいただき感謝です。

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