第11話 特訓(1)
「本当に戦うんですか......?」
そう、肩をすくませている私の前には、一匹のスライムがいた。
体は透き通っており、饅頭のような形になったかと思えば、液体になったりと状態が安定していない様子だった。
(......どうやって戦えばいいの!?)
私は、異形の生物を前に半泣き状態になっていた。助けを求める様にアムールの方へ視線を送った。
「もちろんじゃよ。強くなりたいんじゃろ? だったら実践を積むのが一番じゃよ!」
アムールがにっこりと笑顔で返す。今の私からするとこれ以上ないほどに邪悪な笑みに見えた。
なぜこんなことになってしまったのか、話は遡ること1時間前だった。
***
休憩が終わり、再び歩き始めて少し経ったころだった。
突然、アムールが私の身の上話を聞いてきた。
「そういえば嬢ちゃ――いや、シェリ。お主のここまでの道のりに興味があるんじゃが、教えてはもらえんかね?」
アムールの目は、宝石を見たときのお母様のように輝いていた。
正直、あまり話したくはなかった。いつかは向き合っていかなくてはならない過去だとは思っているが、今の私にとっては受け止めきれないほどの苦痛だった。
こうして話題に出るだけでも、耳鳴りのように怒号や悲鳴が鳴り響いていた。
私は、耳を塞ぎ、考えないようにするために頭を激しく横に振った。
「......ごめんなさい。今は――」
「いや大丈夫じゃよ。......すまん、配慮が足らんかった。」
先ほどまで明るかった風景が少し曇っているように見えた。二人の間に沈黙が流れる。
アムールは少し遠くを見つめた後、ためらいながら再び私に問いかけた。
「一つだけ、よいかの? どうしてもこれだけは聞いておきたいんじゃ」
「......わかりました。答えれる範囲でなら......」
私は乱れた心を落ち着かせるように、ゆっくりと呼吸を続けた。
ほのかに吹く、そよ風が重くなった空気を流していく。
やがて、私が落ち着いたのを見計らい、アムールはゆっくりと言葉を発した。
「おぬし……。儂と相まみえる前に、衛兵以外の何者かに襲われはしなかったか?」
「! なぜそれを知っているのですか!?」
「やはりのう......大当たりじゃ」
胸がどきりと音を立てる。私が盗賊に襲われたことは、襲われた私と、襲った彼らにしかわからない事象のはずであった。しかし、この男は占うでもなく、かといって何か魔法を使うこともなく、私の心の中を見透かしたかのように襲われたことを当ててきたのだ。
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