30.サプライズ
コラボ配信から1週間が経った。配信直後はSNSで誰がゲストに来るのかや初めてのVtuberの大型イベントという事でトレンドに上がっていた。
予想では始祖や四天王が来そうと期待を込めて言っているみたいだ。
誰が来るのか知っている俺は視聴者に言いたくて言いたくて仕方がないがゲストを発表するのは一般販売のタイミングだ。
なぜなら初めから発表するとVプロやswearが本当に好きな人がチケットが当たらなくなる可能性があるのでゲスト発表はまだしないのだ。
逆に言えば初めから発表したらゲスト目当てで応募する人が多くなってしまうと予想出来る人物ということはそういうことである。
ゲストに見劣りしないようにライブ構成やダンスや歌をみんなに頑張って欲しいと思う。
今日は仕事を早く終わらせて喫茶店で人を待っている。
なぜ喫茶店かと言うと相手より仕事が早く終わってしまったのと前に駅で待ち合わせしたらナンパされていたからだ。
今の説明で誰と待ち合わせをしているか分かったと思う。
「お待たせしました」
そんなことを考えていたら凛音が来た。
「そんな待ってないよ。とりあえず何か飲む?」
「じゃあアイスコーヒーをお願いします」
「おっけー」
店員さんを呼び注文をした。
「珍しいですね、玲央くんから誘ってくれるなんて」
「いつも凪咲さんから誘って貰っているからたまにね」
「じゃあこれからは玲央くんから誘ってくれるの期待しますよ?」
「あはは」
実はここ半年で何回かご飯や遊びに行っているうちに2人でいるときはお互い名前で呼ぶようになったのだ。
付き合って関係が変わったからとかではなく前に音ゲーで負けてタメ口になったようにまたとある音ゲーのスコアで負けてしまい名前呼びになってしまったのだ。
「今日は何するんですか?夜ご飯は食べに行くとしてまだ時間がありますよ?」
「今、流行ってるあの映画って見た?」
「あれですよね?君の奇跡は流星群でしたっけ?」
「そうそう、それ」
「見てないですね」
前世の時に見たことがあるが感動あり恋愛要素もある作品なのだが前に見たときはテレビの再放送だったので映画館で見てみたかったのだ。
「じゃあまだ時間あるし見に行かない?」
「いいですよ」
俺たちは喫茶店を出て映画館に向かった。
「チケット買ってくるね」
「私も行きますよ」
2人で券売機に行き席を選んでいる時だった。
「玲央くん、カップルシートっていう席がありますよ?」
「買わないよ。そもそも僕たち恋人でもないでしょ」
「いいじゃないですか、誰もそんなこと気にしないですよ」
「だ・め・で・す」
俺の誕生日に遊びに行った時から凛音は俺に対して好意を隠さなくなった。
俺は鈍感系主人公じゃないのでこんなに分かりやすくアプローチをされていたら気づく。
「後ろの真ん中の席が空いているからそこにするから」
「けちー」
好意を向けていることと関係あるのか最近ではふとした時に凛音の子供ぽいところが見れるようになった。
「ポップコーンは食べる?」
「このあとご飯を食べに行くので辞めときましょう」
「それもそうだな」
席に着いたが映画が始まるまでまだ時間が少しあるようだ。
「ごめん、ちょっと御手洗いに行ってくる」
「分かりました」
トイレに行き帰ってきたら予告が始まっていた。俺は静かに席まで戻り座った。
予告が終わり毎回流れる映画を盗撮するキャラとお巡りさんの鬼ごっこも終わり本編が始まった。
映画の内容は主人公の男の子が小さい時に流星群を見た記憶から始まる。主人公にとっては流星群は願いを叶えてくれるものだと思っている。
なぜなら流星群に母の病気が治るように祈ったら1年後に完治したのだ。
それから高校生になりある女の子、ヒロインと出会う。その女の子と仲良くなり付き合うのだが彼女の持病が再発してしまうのだ。
彼女は昔よりも持病が悪化してしまい入院をした。だがさらに悪化してしまい余命宣告を受けてしまう。彼女は主人公に悲しい思いをさせないために別れを告げる。
主人公はフラれてしまい病院の外で落ち込んでいたところに彼女の母から娘が余命宣告を受けたことを教えてもらう。
彼はフラれた理由を知って自分が無力なのは分かっているが何か出来ないかと考えた結果、昔に流星群にお願いしたら母の病気が治ったことを思い出す。
主人公は彼女の病気がまた奇跡的に治るかもしれないと流星群を見たところに向かった。やっと流星群を見ることができ祈った。が再び奇跡が起きる訳もなく主人公が彼女のもとに戻った時には死に際だった。
彼女の死に際は最後に主人公に会うことが出来て彼女にしてもらえて幸せだった事を伝えて死んでしまった。
主人公は流星群になんかに頼らずに少しでも長く彼女といることが正解だったと後悔するという話だ。
バッドエンドの作品だが俺は好きだ。
映画中に凛音を見てみると涙を流している所を見てしまった。こんなことを考えるのは酷いかもしれないが涙を流している彼女は美しかった。
俺は凛音にハンカチを渡してエンドロールを見た。
映画が終わり俺たちは映画館を出た。
「あれを見ると主人公の気持ちも分かりますけどね」
「あの奇跡に縋りつきたくなる所か?」
「そうです。だって何もしないのと何かするのでは後者の方がいいじゃないですか」
「そうだな。でもこの作品においては何かする方向性を間違えてしまったけどな」
人間、追い込まれると何かに縋りつきたくなる生き物だ。実際に俺も凛音が卒業してしまった時は卒業が無かったことにならないかと奇跡に頼っていたと思う。
その結果がタイムリープしてしまったかもしれない。だが1回、奇跡が起きたからといってもう1回起こるとは限らないとこの作品は教えてくれているみたいだ。
だから俺はそんな状況にならないようにこの1回の奇跡を自分の物にしないといけないと思う。
「後悔のないように人生は選択しないといけないな」
「そうですね」
俺たちは映画の感想を言ったり世間話をしながら事前に予約していた店に着いた。
いつも通り、食事を楽しんでいる。だが今日は違うことがある。
「いい感じにお腹もいっぱいになったのでそろそろ出ますか?」
「もうちょっと喋りたいからもう少しいない?」
「いいですよ」
俺はあるものが来るのを待っているのだ。
コンコンコン
「失礼します」
「あれ玲央くん何か頼みました?」
「うん」
「こちらここに置かせてもらいますね」
「ケーキですか?」
「誕生日おめでとう」
俺が待っていたのは誕生日ケーキだったのだ。先月が凛音の誕生日だったのだが予定が合わずプレゼントは家が隣なので渡せていたがきちんとお祝いをしていなかったので今回誘ったのだ。
「遅れてごめん、でもきちんとお祝いはしたかったから」
「ありがとうございます。わざわざこんな用意をしてくださって」
「凪咲さんにもお祝いして貰ったからお返しだよ。ローソクが消える前に消しちゃお」
「そうですね。フー」
「改めてお誕生日おめでとう」
凛音はとても嬉しそうな顔をしている。こんな顔を見たら頭を撫でたくなる。
(サプライズ成功かな)
「奢っていただきありがとうございます」
「いいよ、カッコつけたいだけだから気にしないで」
凛音は毎回、お礼をきちんと言ってくれるあたり育ちがいいなと思う。人によっては奢られることに慣れてお礼を言ってこなくなる人もいる。
「まだ行きたい所があるんだけどいい?」
「いいですよ」
「ありがとう、それじゃ行こうか」
「うーわ。ここ良い景色ですね〜」
「綺麗だよね〜」
行きたかった場所とは夜景が綺麗なスポットだ。たまたまショート動画で流れてきたので行ってみたかったのだ。
「たまにはこういう所に来るものいいな」
「はい」
(本当に景色綺麗だな〜)
そんな事を思っていたが周りの客を見てみるとカップルがとても多い。
(なんかカップル多くね?そりゃ夜景スポットなら当然か。凛音は気づいているよな〜)
そう思い凛音を見てみると周りに気づいているようでなんならソワソワしている。
(もしかして何か期待しているのか?こういう場所の定番と言えば告白か!)
そんな意図など無かったが凛音に期待させてしまったかもしれない。
「えーとそろそろ帰ろうか」
「!、はい」
(うーわ落ち込んでいるよ。ごめん)
普通に喋りながら帰ってきたが凛音は内心ショックを受けてるだろう。
「凪咲さん、次は1日予定が空いている日に日帰りの旅行行きませんか?」
緊張してしまって敬語になってしまった。
「え?日帰り旅行ですか?」
「いつも同じようなおでかけしかしていないと思ったからたまにはそういうのも良いかなって」
「行きます!絶対行きましょう!」
「じゃあ予定を立てて行こうか」
「はい!」
これで少しは罪滅ぼしになるといいなと思いながら家に入るのだった。
だがこの時の俺はまだ知らない。まさかあんなことになるとは。




