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第1話 "全て"の始まり

「はい。じゃあ次は教科書の128ページ開いて」



先生の声で生徒達はパラパラと教科書を開く。

勿論俺も128ページを開く。睡魔には負けそうだが

最後の最後まで頑張るとしよう。



そう、今は5限の歴史だ。なぜどんな時でも夢の世界へ毎度毎度誘ってくるこの教科がよりにもよって

5限目なのか意味が分からない。せめて6限で頼む。

6限目なら「よし、これが終われば帰れる!」と

少しは眠らずに済むかもしれないのに。




「じゃあ次は"守護神"を悪用しちゃった人が起こした大事件やるからね。ここテスト出すから聞いときな」




          "守護神"




それは、この地球上に存在する全ての人間に

憑いているいわゆる"守護霊"みたいなものだ。


"守護神"はそれぞれ特別な力を持っている。

勿論これも人の性格と同じく十人十色だ。

ちなみに"守護神"も人間と同じ見た目をしている。

"守護神"の持つ力は大きく分けて5つだ。



      水·風·火·大地·生物





水なら自分に憑いている"守護神"が手から水を出したり、風なら"守護神"が片手を上げると強風を

起こしたり、火なら口から火を吹いたりするなどだ。


ちなみに俺は________________…。




「じゃあ教科書読みます。今からおよそ20年前、

東京都渋谷区で"守護神"を悪用した大量無差別殺人が起きました。それ以降、"守護神"を悪用する者が増加。これがきっかけでこのような人々を

"悪霊神"と呼ぶようになりました。それから___…」




"悪霊神"?何だよそれ。"守護神"を悪用した人か。

言っちゃ悪いが想像出来ない。何故なら嬉しいことに俺が住んでいるこの地域は"守護神"を悪用した

犯罪は一度も起きたことがないからだ。なんなら犯罪すら滅多に起きないので全国の中でも結構平和な方だと思う。



そのまま先生に当てられる事もなく学校が終わった。帰りのHRを終え、即座に下駄箱へダッシュ。

そう、俺は帰宅部なのだ。部活って正直めんどくさいし、何より俺は家族と一緒に居るのが一番好きなんだ。その事は家族には言ってないけど。



正門を出て自宅を目指す。今日は綺麗な青空だ。

見てて心がスッキリする。だけど、家に近づくにつれてどんどん重くなっていくこの不快と焦りみたいな感情は…一体何なんだ?




家に着いて鍵を開ける頃には冷や汗が止まらなかった。何か悪い事が起こるような、いや、既に起きたような感覚だった。テストで悪い点を取ったから怒られるとかそういう恐怖ではないまた別の"恐怖"が俺を襲っていた。鍵を開けていいのだろうか。

家に入っていいのだろうか。今まで全く考えてこなかった疑問が今になって次々と浮かぶ。




「…躊躇うな。落ち着け、俺」




震える両手を何とか動かして玄関扉を開ける。




「ただいま…」




気分を明るくするために自分が今出せる最大限の大きさで言った。だがしかし、一発目から最大だというのに誰の返事も無かった。返ってこなかった。





おかしい。何かおかしい。いつもなら忙しいけど笑顔で「おかえり」と微笑んでくれる母さんの声が、「お兄ちゃーん!!これで遊ぼー!!」とおもちゃを差し出してきて跳び跳ねる末っ子の弟の声が、

「…おかえり、学校どうだった?」といつも静かだけど母さんの手伝いをしている2つ年下の妹の声が





「何で…?」








        全く聞こえない。






「みんなー、俺帰ってきたよ?」



と、何かに怯えているせいで真顔になっている自身の顔を笑顔にしながら元気そうな声を偽って言う。



リビングに繋がる扉に手をかけて少しだけ開けた時





「っ…何だこの匂い」






まだ扉の外を見てないから分からないが、大量の

"鉄の匂い"がした。特別鼻が利く訳でもない俺でも分かるこの匂い。






「ハァっ、ハァっ、ハァっ、ハァっ」







恐怖で足が立ちすくむ。

もう、リビングがどんな光景か察してしまった。

想像できてしまう。

「見たくない」という思いで胸がいっぱいになるが

見なきゃ何も始まらない。何も出来ない。


フゥー、と深呼吸をして一気に扉を開けた。

そこには







「あ"あ"あ"あ"ーーーーッッッッ!!!!」




血を流して倒れている家族全員の姿があった。






「母さんっ、母さん!!!起きろよ母さんッッ!!!」



服まで血まみれの母の体を揺さぶるがピクともしない。体はとっくに冷たかった。




「敬介ッッ!!朝陽ッッ!!!お願いだ!!!頼む!!!起きてくれ!!起きてくれ!!反応してくれ!!!頼むからお願いだ!!!兄ちゃんはお前らとまた遊びたいんだ!!!楽しく話したいんだ!!!」



涙を堪えるが弟と妹の名を呼んで体を起こし、その冷たさを知った途端に涙を流すのを我慢するダムは決壊してしまった。



震える手で、震える声で、必死に全員の名前を泣き叫ぶが誰一人としてそれに答えてくれる人はいなかった。




「……」




目の前の光景に理解が追いつかない。なぜ、どうして。何があったのか。何でこうなったのか。


誰か教えてくれ。俺を置いて自殺?でも何故そうするのか心当たりがない。誰かの自殺を止めようとして自分達も同じ目に遭ったのか?うちの家族に限ってそれはないと思う。








「…"悪霊神"だ」


「!!」



いつの間にか自分の隣に立っている男。


まるで、"悪霊神"は存在していると言うような口調だ。


ちなみに顔はイケメンだ。男の俺がそう思うくらい美丈夫な男。しかも体はとても凄い。筋肉がたくさん付いてるしスタイルもいい。しかも小顔。母さんの知り合いか?でも母さんはこっちが悲しくなるくらい男に興味がない。敬介や朝陽もこのような男と面識は絶対にない(そう願う)。



となると…………………誰だ?





「どちら様ですか?」


「……」




いや答えろよ。そこは答えないとめちゃくちゃ怪しまれるのに。ただでさえうちの家族とは面識が無い(ハズな)のに。





「というかそもそもどうやって家に入ってきたんですか?」




答えないなら即通報しますよ、と言うようにスマホを男の目の前に突きつける。




「開いてた」


「は?」


「玄関のドアが開いていた」


「あっ…そうなんですね」




これ俺の不注意じゃん。これから何されるか分からないのに何やってんだ俺は。いやでも待て、

玄関のドアが開いてるからってノコノコ侵入してくる奴なんているか?絶対にいない。入ってくるなら何らかの目的があるはずだ。



「まぁドアについては俺の不注意でしたね。ですが!!鍵がかかってないからってノコノコ入ってくるのはおかしい!!目的は何ですか!?」


警戒体制を強化する。



「……それは」


「それは?」


「……任務だ」


「…………は?」



任務?任務ってことは仕事ってこと?いやいやないない。あり得ない。何で仕事で家に来るのか意味が分からない。



「あの、ふざけないでください」


「俺はふざけていない。任務で来たんだ」


「どんな任務で一般人の家に来るんですか!!」


「"悪霊神"がここに来ていると知ったからだ」


「!!」




思わずビクッと体がこわばる。

この男…何か知っているのか?




「"悪霊神"を倒すために来た。だが遅かったようだ。…すまない」




…そういう事か。"悪霊神"がどうとかは今はどうでもいい。家族を殺された怒りが今になってふつふつと沸き上がってくる。




「…それで」


「何だ」


「俺の家族を殺した奴はどうやって対処するんだ?」


「…対処ってまさかお前」



相手がやめとけ、と言う前にこちらから言わせて貰った。



「何が言いたいか分かりますよね。殺すんですよ。復讐です」


さて、これからどうしようかと作戦を練り始める。



「やめとけ」


復讐を反対する声が聞こえた。


「は?何言ってるんですか。自分の身内をその"悪霊神"とやらに殺されたというのに復讐せずに居られるわけ無いじゃないですか」



「危ないからやめておけと言っている。お前の家族についた傷を見れば分かるだろう」


「傷くらい見れば分かるのであなたは「殺されたお前の家族は復讐のために生きるお前を見て喜ぶとでも思ったか?」…」



何も言えない。分かってる。分かってるんだ。

母さんだって、敬介だって、朝陽だって、皆優しいから俺が自分達を殺した相手を復讐するのは望んでないって、俺も考えたら分かる。


でも、だからこそ許せないんだ。どんな時も優しくて、誰かのために一生懸命になれて、誰かと楽しい時間を共有したいって思える心の綺麗な人達が傷付いて無くなるのだけは許せないんだ。


自分が青空を見上げて「綺麗だな」と思ってる時には既に苦しんでいたんだろう。怖かっただろう。必死に助けを求めていたんだろう。


何故、どうして、「どうしていつも肝心なときに俺は大切な人の側に居ることが出来ないのだろう」


「落ち着け」


ハッと我に返る。声に出ていたらしい。



「お前の言いたいことは分かった」



イケメン男の青い瞳が俺を捉える。



「お前は、誰かを助けられる力を自分が持っているとしたら何をしたい」



そんなの決まってる。



「大切な人達に危害が及ばないようにしたい。幸せになってほしいんだ」」



「…そうか」



「人々に恐怖を植え付けたり傷付けたりする、

"悪霊神"を倒したい」



「…」




沈黙が続く。リビングは未だ血濡れ状態だ。



「お前の名は何だ」


「…結城悠真です」






「誰かを守るために己を犠牲にする覚悟があるのなら……俺に着いてこい」




今決まった覚悟なんて頼りないかもしれないが、

それでも絶対に揺らがない自信がある。いや、

絶対に、何があっても揺らがせはしない。



どんな目に遭うとしても、どんなに辛いとしても。


「はい!!」 




ここから俺が自分の人生を懸ける物語が始まった。




次回、謎のイケメン男の正体が判明!ここからどんどん物語は動いていく……


最後まで読んでいただきありがとうございました。

初作品なので温かく見守っていただけると幸いです。

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