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6話 早朝の訪問者

7月20日まで毎日投稿(午後8時50分ごろ)目指します。

西暦2025年6月2日。月曜日早朝。

結局眠れぬ夜を過ごすことになった。

午前5時半。家のチャイムが鳴る。

「誰だよ、こんなに朝早く」

またチャイム。

「はいはい」

俺の家に尋ねてくるなんて、母さんか? いや、連絡来てないし。

不思議に思いながら扉を開けると、見知らぬ2人組の男が立っている。

「なんですか?」

年下の20代半ばくらいの男が警察手帳を見せながら聞いてくる。「すみません。実は近所の交差点で昨晩ひき逃げがあったんです。それで、聞き込みをしています。ご協力いただけますか?」

「あ、ははい」

警察! なんで警察が? 

いや落ち着け。小泉を斬ってまだ6時間くらいしかたってない。いくらなんでも特定するのが早すぎる。

それにひき逃げ事件について聞きたいっているじゃないか。なんだ。たまたま来ただけか。

後ろからベテランっぽい40代の髪の毛がやや薄い男がじっと見ている。目線が合うと、なんか怖かったので俺が目線をそらした。

「昨夜はなにをしていましたか?」

「なんでそんなことを聞くんですか?」

「雑談みたいなものですよ」

「そうですか。昨日はちょっと遠出してて、帰ってきたの遅いんですよ」

「遠出? 失礼ですがどちらに?」

「横須賀です。知人に会いに」

しまった。あとで小泉の事件がばれれば疑われてしまうじゃないか。

警官は表情を変えずに質問を続ける。

「なるほど。帰宅されたのは何時ごろでしたか?」

「日付が変わる前だったと思います」

「一応お聞きしますが、車はおもちではないですよね」

「そんな高いものもってませんよ。学生ですからね」

「ですよね。ひき逃げが起きたのがちょうど11時半ごろで、ひょっとしたら目撃されていないかと思いまして」

「いや、見てませんね」

「そうですか。捜査にご協力いただきありがとうございました」

若手が帰ろうとする。そのとき、後ろで見ていたベテランの男が前に出てきて質問というか尋問してくる。

「あんた。式目くんだっけ。ケガしてるね。どこでけがしたの?」

傷? どこでついたんだっけ? そうだあの時だ。横須賀で大男とけんかして殴られたときの傷だ。左のほっぺがまだ痛い。これも言わない方がいいだろう。

「転んだんです」

「へえ、どこで?」

顔を近づけてくる。傷を見ているのか?

「横須賀の知人に会いに行くときにちょっと」

「そうか。すまなかったな」

そういうと、ベテランは若手に近づき何か耳打ちしたように見えた。

やばい。疑われている。小泉の事件はまだ報道されていないみたいだけど、報道されれば間違いなく疑われる。

2人は帰ってくれた。

俺の部屋は角部屋ではない。なのに、右にも左にもいかなかった。

なにか怪しまれている?

そもそもひき逃げ事件の前にいきなり昨日の予定、アリバイを聞いてくるなんておかしくないか? 雑談って言ってたが。

本当にこのまま返していいんだろうか? この2人を帰すのはまずい気もする。

気になって後をつけようと思ったそのとき、さっきの刑事たちの声が聞こえた。

「なんだ、お前は」

誰かと話している?

アパートの2階から下を見る。2人組の刑事の前に、女の子がいる。手になにか細長いものを持っている。

「問答無用!」

その女子は細長い棒状のもので警察2人を殴った。

「ええ!?」

2人は地面に倒れた。

そして、女子は俺を見てほほ笑んだ。

「こっちにくるぞ」

襲われると思った。なにか武器はないか? いや、逃げるべきか。

部屋に戻り、あたりを見渡す。武器になりそうなのは包丁くらいか。

包丁を持って部屋の鍵をかける。

「来るならこい」

相手は女子だ。油断しなければ負けないはずだ。

ピンポーン

チャイムが鳴る。外をのぞく。やはり先ほどの女子。

「ねえ、開けてよ。中で話そうよ」

「誰が開けるか。俺のことを狙っているんだろ?」

「白米。いるんでしょ。開けてよ」

白米? なんのことだ。

と思ったら、体が自由に動かない。しまった。また体を勝手に。

俺の手が動いてドアを開けて女子を出迎える。

「お前は誰だ」と世直し侍が女子に問いかける。

「バケツ。穴あきバケツ」

「そうか。お前は女子の体を手に入れたのか」

体を手に入れた? まさか、こいつも世直し侍の仲間か?

「その前に、手伝ってくれない?」

俺の体は女子と一緒に2人の警察をひとまず俺の部屋に運ぶ。

早朝だということもあって、近所の人は誰もいなかった。

警察2人をとりあえず俺の部屋に連れてくる。

「それで、穴なきバケツ。なぜ警察を斬った。こいつらはリストには載っていないぞ」

「大宮で枝葉議員を斬ったのってさ、白米あんたでしょ」

「そうだ」

「もう少し待てなかったのかな。好き勝手に切ればいいってもんじゃないんだからね」

「悪いやつを野放しにしておけというのか。穴あきバケツよ。お前は世直しをなめているんじゃないか」

「なによ。世直しってたくさん斬ればいいってもんじゃないんだからね」

「見解の相違だな。世直しとは悪人をどれだけたくさん斬れるかで決まる。もちろん穴あきバケツがいうことは理解している。斬る順番、タイミングというものがある。今回はたまたまタイミングがあったから斬った、それだけのことだ」

「はあ」と穴あきバケツはあきれ顔をする。

とりあえず成り行きを見守ることにしよう。

「白米ものんきよね。本当はこの近所でひき逃げなんて起きてない。あいつらは白米とその宿主を探るために大宮警察署からきた所轄の刑事。ひき逃げ事件を口実に昨日のアリバイを聞き出そうとしていたんだから」

なるほど。大宮の枝葉議員の事件からたどり着いたのか。

「疑われていたのか。しかし、どこで足がついたんだ?」

「だいじょうぶ。まだ上は何も知らない。埼玉県警は防犯カメラを調べているみたいだけど、こっちで片付けておいたから。本当に面倒かけさせて」

「片付けたとはどういう意味だ?」

「この子、こう見えて頭いいんだよ。ハッキングであんたが映っている防犯カメラの映像を改ざんしておかなかったら捕まってたんだよ」「

「それはすまなかったな。しかし、防犯カメラの映像を消したなら、こいつらはいったいなぜ式目殿を疑ったのだ」

「偶然、聞き込みのときにあんたが米を受け取ったやつに聞き込みして、そいつが血の付いたシャツの男に米を渡したと話してしまったんだよ。まだ上には報告していない」

「いまのところこの刑事たちは独断で動いているということか」

「斬ったのは白米とも顔合わせしておきたかったし、女の子の体で警察2人を処理するのは大変だからね」

警察2人を処理。それってまさか。

『おい世直し侍! まさか警察を殺すつもりじゃないよな! そんなことしたら大変なことになるぞ』

「うるさいな。式目殿は」

穴あきバケツが言う。「式目って、宿主の方か。ちょっと変わってもらっていい。話してみたい」

「わかった」

夜道には気を付けよう。

読んでくれてありがとうございました。

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