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第1部 7人の世直し侍、日本に現る! 1話 空から白いものが降って来た日

7月20日まで毎日投稿(午後8時50分ごろ)を目指します。

この世に悪がある限り、正義を求める人の声はなくならない。

正義の求めにこたえるのは誰か? 

政治家? 官僚? 資本家? 労働組合? 

それらは倒すべき悪ではないか?

正義は常に弱者の、虐げられる側にある。

守らなければならない、幼い命を。これから生まれてくる命を。そして未来を。

そのためならば浴びようではないか返り血を。

望もうではないか、悪の滅亡を。

滅ぼそうではないか悪の根源を。

「いつか」、「また明日」、「近い未来」

いまなのだ。いまこそ立ち上がる時なのだ。


※この作品はフィクションです。実在の人物、政党、団体、事件、選挙、地名と似ていても一切関係ありません。読者が勝手に勘違いしたとしても、それは読者の自己責任であり、筆者にはなんら責任がないことは明らかです。

また、本作品には特定の政党や候補者のみを応援、批判する意図はなく、特定の候補者を当選させる意図もありません。したがって本作品は選挙運動とも無関係です。


1話 空から白いものが降って来た日


「はあ。もう3か月も更新がない。エタったか?」

ネット小説投稿サイトを見て、ため息が出る。

自分が読んでいた作品が30話くらいで止まっているのだ。ちょうど続きが気になるところなのに。どうやらほかの作品を書き始めてしまったみたいで、いまはそっちを更新しているが、新作の方ははまらなくて5話で読むのをやめてしまった。ほかの読者もつまらないと思ったのか、新作も止まっている。

最近、なんだかつまらない。

オチがいつまでもつかないエタった小説や、1期の中途半端なところまでアニメ化した作品のようななにか物足りない現実と向き合うべきなのか? 明日締め切りのレポートをまだ書き始めていない。

なんだか終わりのない日常を生きている感じだ。

スマホを置く。

窓の外の空を見上げる。

「なんだ?」

昼間なのにはっきり見える。窓から見える公園の中央に光が集まっている。

スマホを手に取り、靴を履いて家の外に出る。

驚いた。なにに驚いたって、空からお米粒が落ちてきているのだ。

「米粒だ」

最近は物価高の影響で米なんてなかなか手に入らない。砂に紛れている米を拾ってポケットに突っ込む。

ゴールデンウィークで平日昼間だから公園に人もいない。

米を独り占めだ。

一人暮らしの学生にとっては恵みの米粒だ。

米粒がポケットにも入りきらなくなって、一度家に戻って大きな袋をもって公園に戻った。

そしたら、公園には人が殺到していた。俺みたいな学生のほかに、主婦とか、ホームレスまでいた。落ちている米粒を見て、とりあえず拾っていく人がみえる。

「俺が最初に発見したんだぞ」

群衆に割り込み、持ってきた透明な袋に米粒を入れる。

最終的に15人ほどが集まって落ちている米を拾った。

砂も混じっているとはいえ、持ち帰った袋を図ると10キロほどになった。

「いま米は5キロ4100円くらいだから8200円分くらい儲かったな」

集めたコメを確認すると、疲れがどっと出てその場に座り込んだ。

「なんだか疲れたな」

にしても、なんで米が空から降り注いだんだ?

その夜は久しぶりにお米を炊いた。最近はパスタかうどんだったから楽しみだ。

米をとぎながら、混ざってしまった砂粒を取り出す。ちょっと面倒で時間がかかったけど、ちゃんと米をといで実家で使わなくなった炊飯器にセットする。

40分後。

ピー! という音とともにお米が炊けた。

「よし! 米が炊けたぞ」

炊飯器を開けると白いお米。それをお椀に山盛りよそう。

「おお。米粒が立ってる」

箸を出して、久しぶりにお米に感謝を込めて「いただきます」

『いただくがいい』

「ん? なんか声が聞こえたような?」

気にせず食べる。ほかほかでおいしいご飯だ。最初はふりかけとかなにか味偏した方がいいかと思っていたけど、お米は噛めば噛むほど味が出る。というか甘い。

でも、噛み続けるとなぜか苦くなってくる。

「これ腐ってるんじゃないのか!」

思わず吐き出す。

『なんだ食べないのか』

と、がっかりしたような声が……。

「誰かいるのか?」

そのとき、目の前の炊き立てのコメが光り輝く。

まぶしい!

目を開けていられない。

なにが起きた? 米が何で光っているだ? まさか放射能とかヤバい毒とかか?

ようやく光が落ち着いてきた。

光るコメの中から真っ白な人間?が現れた。

「なんだお前、どこから入ってきたんだ」

「ここはどこだ?」

「いや、こっちが聞きたいよ。お前こそ誰だよ」

「人に名前を聞くときは、自分から名乗るのが礼儀。いいだろう。吾輩は世直し侍だ。悪が栄える世界を渡り歩き、世直しをしている」

「悪が栄える世界を渡り歩きって、もしかして転生ってこと?」

「転生? なんだそれは」

「小説とか漫画とかであるやつだよ。前の世界から別の世界に生まれなおすんだ」

「吾輩は別に生まれなおしているわけではない。移動しているんだ」

「あ、転移系ね」

「そんなことはどうでもいい。吾輩は世直しのためにこの世界にやってきた。誰を斬ればいい?」

「斬るなんて物騒な奴だな。で、世直し侍さんはどうしてこの世界に来たの? って聞くまでもないか」

「この世界は悪が栄えて善人が苦しむ世界だと聞いてきた」

「聞いてきたって誰に?」

俺の質問には答えずしゃべる世直し侍。「転移してきたのは吾輩だけではない。7人の侍がこの世界にやってきている」

「7人の侍ね」

そんなタイトルの映画があったような。タイトルしか聞いたことないけど。

「7人の侍がそろうとき、世直しが完成すると予言書にも書かれているのだ」

「そんな予言書聞いたことないけどな」

「無理もない。これは我々の一族に代々伝わる予言書だからな。それより、ご飯を食べないのか?」

目の前のコメを見る。光っているわけではない。

「これなにか入ってるのか? 最初は食べようとしたんだけどさ、最初はおいしかったのに噛み続けたら苦くなったんだ」

白い男が笑顔を浮かべる。「問題ない。別に腐っているわけでも毒が入っているわけでもない」

「あ、そう。まあ腐ってないなら食べるけど。そこどいて」

「では、一度消えるとしよう」というと、白い男は突然姿を消した。

「なんだったんだ、あいつ」

ごはんは本当に腐っていなかった。噛み過ぎなければちゃんとおいしいことが分かったので少しだけ噛んで食べて、苦くなったらふりかけをかけてごまかした。

1号半たっぷり食べたら眠くなったのでそのまま寝た。

それからは腐らないように早めに食べておこうと思い2週間かけてご飯を食べた。

慣れてくると苦い味も意外と癖になるという感じだった。

お米も半分くらい食べてしまった。

そんなある日の夕食、またご飯の近くに白い男が現れた。

「今度は何だよ」

「今回は驚かないのだな」

「なんで2週間出てこなかったんだ」

「実体化には食べてもらう必要があったからな」

「実体化?」

「以前出てきたときはまだ受肉が不十分だった。しかし5キロも食べれば魂は肉体に定着する」

なんだかわけのわからないことをいう白い男。「なにいっているかわからないんだけど」

「要するに、吾輩はそなたの体を借りて世直しできるようになったということだ」

「はあ!? なに言ってるんだよ」

「困惑するのも無理はない。だが、吾輩の血肉を食べたであろう」

「お前の血肉なんて食べた記憶ないぞ……。いや、まさか」

嫌な想像をしてしまった。さっき5キロ食べたとか言ってたよな。10キロのコメの半分って5キロだよな。

「吾輩の血肉、つまり米をそなたは食べたのだ」

「あれ、お前の体だったのかよ!」

「ふふ。もう時すでに遅しだ。お前の肉体を吾輩は動かすことができる」

というと、動かそうとしていないのに、自分の右手が箸を、左手が炊き立てのコメが入ったお椀を持ち、お米を口に放り込み始める。

食べ終わると、ようやく体が自由に動くようになった。

「だましたな!」

「だましたとは人聞きの悪い。吾輩の体をマナに変換したコメを勝手に拾い集めて食べたのはそなたの方だ」

言い返せない。

「確かに拾ったさ。でもなあ、まさか米を食べたら体を乗っ取られるなんて思わないだろ。受肉とか言ってたな。まさか俺の体を」

「実は受肉が不完全なのだ。それも落ちていた米をほかの人間にも拾われてしまったからだ。どうして独り占めしてくれなかったんだ」

「あの米粒がお前の体ってことは、お前は分裂しているのか?」

「元の世界での体重は60キロ。一俵だった。そなたはその6分の1しか拾っていない」

「ってことは、お前は俺の体を完全に乗っ取れないわけだな」

「残念ながらそういうことだ」

「ははは。ざまあみろ。人をだまそうとするから罰が当たったんだ」

「騙すだと。それは聞き捨てならない。そなたの発言は世直し侍すべてに対する侮辱だ」

「なんだ。6分の1、いや半分しか食べてないから12分の1の力でどうにかできると思っているのか?」

「とにかく、ばらばらになってしまった米を回収する必要がある。手伝え。そうだ。……いい加減名前を教えてくれないか」

「あ? やだよ」

「そうか。ならお前の名前はどぶ川ニチャ男だ」

「やめろよ、そんなひどすぎる名前で呼ぶな」

「なら名前を教えろ」

「しきめ。式目だ」

「なるほど。式目か。よし、では吾輩の体を探すぞ」

「いやだよ。なんで乗っ取られると知りながら手伝うんだよ」

「まだ自分の立場が分かっていないようだな」

と、また自分の体が動かなくなる。

「また勝手に」

「お前の体の全部をいつでも操ることはできない。だが、吾輩の体を取り込んだお前はほかの体を集めなければならない義務を負っているのだ。体が完全に集まるまで、お前は悪夢を見るだろう。それでもいやだというなら仕方がない。そのときはまた転移をやり直すとしよう」

そういうと白い男の姿は消えた。

「なんだよ。悪夢って。寝るの怖いじゃねーか」

それでもご飯を食べ終わると眠気が襲ってきた。

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