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 第二十二話 約束【2/2】


 ある日の冒険者ギルドにてー、


 新人冒険者達がクエストボード前に集まっていた。


「皆さん!今日は実地研修に参加して頂き、ありがとうございます!今回はアイアンランクのモンスターの討伐を見学してもらいます!」


 セオドアが新人冒険者の前に立ち声を上げる。


「セオドアさんの戦ってる姿が見られるんだな!」


「ダリル。興奮して邪魔しちゃ駄目だからね」


 新人冒険者の中にはダリルとロゼの姿も確認できた。


 次にノエルとドラン、セリカが新人冒険者の前に立つ。


「こっちは素材採取の実地研修だよ〜!モンスター討伐の方もウチのセオドアとフィオナが同行して安全は確保されますが、それでも怖い方はこっちがお勧めだよ〜」


 ノエルの明るい声がギルドのロビーに響く。


 ブックメーカーの面々はお互いにアイコンタクトを取り頷いた。


 その様子を上の階から眺めていたギルド長のグレッグにミアが近付く。


「最近は冒険の書反対の抗議も無くなりましたし、順調そうですね、彼ら」


 グレッグは笑みを浮かべる。


「あぁ。どうやったかは知らんが、バルトの堅物もどうやら一役買ったらしい。なんだか俺も駆け出しの頃を思い出すな......」


 グレッグが遠い目をするとミアは呆れた様にため息をつく。


「何十年前の事ですか?」


「おいおい。年寄り扱いすんじゃねぇよ」


「ギルド長。書類の処理お願いしますね」


 ミアは書類の束をグレッグに押し付ける。


「あーやっぱり、もう少し老人を労ってはくれないか、ミア?」


 グレッグの言葉にミアは鼻歌をまじりに受付に戻る。




 実地研修は無事に終わり、参加した新人たちからも安堵の声が上がっていた。


 セオドアと仲間たちの指導により、誰一人欠けることなく全ての工程を終えることができたのだ。


 セオドアは帰っていく新人冒険者を見送りながら以前の起きた悲劇を思い起こす。


 杭の雨に打たれていく新人冒険者達の姿......


 しかし、今セオドアの目の前には、実地研修に満足して帰っていく新人冒険者達の顔であった。


 ようやくループを抜け出せた事が実感していく。


「……これで、ようやく一区切りですね」




 セオドアが事務所に入るとフィオナが窓辺に座り、外の様子をただ眺めていた。


「フィオナさん」


「セオドア、お疲れ様。実地研修上手く行ってよかったね」


 セオドアの呼びかけにフィオナは笑顔を見せた。


「そうですね。フィオナさんもお疲れ様です」


「ありがと」


 セオドアもフィオナが眺めていた外を眺める。


 しばらくの沈黙が流れる。フィオナも少し気まずそうにもじもじとする。


「フィオナさん、明日空いていますか?」


「あ、明日!?空いてるわよ!何?」


 突然のセオドアの問いかけにフィオナは声を上ずらせる。


「一緒に付き合って欲しい場所があるんです......」


 セオドアの穏やかな表情にフィオナは緊張した様に尋ねる。


「......いいけど......どこにいくの?」


 フィオナの質問にセオドアは笑みを見せた。



「山です」



「や、山!?」


 フィオナは驚いて目を見開いた。








──春の終わりを告げる風が吹く、山の中腹。



 木々の合間を抜けた先、そこに広がっていたのは、色とりどりの花が咲き乱れる、小さな自然の楽園だった。



 風にそよぐ白と青、橙と紅の花々が、まるで空と地をつなぐように揺れている。


「……きれい......このお花畑......いつかは見てみたいと思っていたの......」


 フィオナが息をのむようにして立ち尽くす。


「ループもしていない時、フィオナさんと約束したんです......二人で花畑を見に行こうって......」


 セオドアは遠い目で花畑を見る。


 謹慎中に交わした約束を思い出す。


『山の方に、すごく綺麗な花畑があるって、昔聞いたことがあるの。まだ見たことなくて……』


『行きましょう。みんなで行けたら、もっといいかもしれませんね』


『……うん。けど.......』


『けど?』


『そ、その二人で.......行けたらいいかな.......』


 そふとフィオナがセオドアの手に自分の指先をそっと重なったあの時。


 実地研修で杭を受け、血塗れになり、息絶える前に呟いたあの言葉......



『......お花畑......セオドアと見たかったな......』



 セオドアの目に涙を溜める。


 涙を拭い、セオドアが目を開けると花畑の真ん中に立つフィオナが見えた。



「じゃあ、セオドアは私との約束果たしてくれたんだね」


フィオナはそう言って暖かな笑みを浮かべる。


 それは普段の凛とした彼女とは違う、年頃の少女らしい無防備な笑顔だった。


 セオドアは、花の中で立ち止まり、真っ直ぐにフィオナを見た。


「僕はずっとあなたに憧れてたんです。


ウィンドミルで新人冒険者として何度もループを繰り返していたとき......


毎回ガストンに絡まれていた僕を、何度もあなたが助けてくれました......」


「……」


「強くて、まっすぐで、自分の信じる道を貫く。そんなあなたに、何度も救われてきました......」


 言葉に詰まるセオドアに、フィオナは静かに見守る。


「ループもしていない時間では......僕は......フィオナさんを死なせてしまいました......!


守れなくて本当にすいませんでした......!」


 セオドアは深々と頭を下げる。


「......うん」



「僕は一度冒険の書を諦めました......!」



 セオドアは頭を上げる事なく続ける。


「......うん」


「フィオナさんを殺した筈のバルトさんに復讐もせず......話し合いで和解をしました......!」


「......うん」



「それでも......!」



 セオドアは顔を上げ、まっすぐにフィオナを見る。



「フィオナさんは......こんな僕と一緒に......冒険してくれますか?」



 二人の間に、風が吹き抜ける。花がそっと揺れた。



「......うん。セオドア。


全部許すよ。


死んだ私は復讐なんて望まない。


私が望まないんだもの。


貴方が立ち止まるなら私たちも一緒に立ち止まってあげる。


貴方が立ち直れるまでずっとそばにいてあげる」



 フィオナの言葉に、セオドアは深く頷いた。




「これからもずっと一緒だよ」




 フィオナは優しくセオドアの手を取る。




「ありがとうございます......」




 セオドアの瞳からはとめどなく流れる。


 そんな二人の間に強い風が巻き起こり、花びらが中に舞う。


 二人でその花びらを見上げる。


 フィオナとセオドアの手は強く繋がれたまま、空を見上げる。




 これから始まる、新しい冒険の、その先を――。

第三章 裏切り者ループ編 完



イズミ・レコードです。

【あいつが死ぬから僕は冒険の書を編む】を愛読頂いている方、投稿開始から一月が経ちました。


第三章の構想はたった3行だったのですが、気付けば他の章に比べてかなり長いものとなってしまいましたが、皆さんが読んでいただけていると言う事を励みに毎日投稿を行えました。


セオドア達の冒険は九章くらいで考えています。

まだ1/3。完走できるように頑張って執筆して行きます。


さてこれからの投稿ですが、これから三日は第四章との幕間としまして、

番外編 冒険者フィオナ フィオナがセオドアと出会うまでの物語。

番外編 猟奇的なプレゼント 折れたセオドアの斧をアトラス商会のみんなで新しくプレゼントする物語


そして

番外編 毒キノコと勇者 本編から五十年後、勇者ハルトが異世界転移した話


の3本の番外編を3日間投稿いたします。どれも本編以上に思いを込めて執筆していますので是非、お楽しみにして下さい。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

もし少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークや感想をいただけると励みになります。

次回もどうぞよろしくお願いします。

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