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第十九話 封じられたループ【1/2】



「なんで急にザガンさんを攻撃したのですか!?答えてください!!ベルザさん!!!」


 ベルザは答える訳でもなく、不適な笑みを浮かべる。


「答えてください!!!」


 セオドアは斧を引き抜くと、ベルザに向かって構える。


(何でベルザさんが急にザガンさんを!?)


 セオドアの額には冷や汗が流れる。


(まさか......あのベルザさんは幻覚?いや、ザガンさんを攻撃できたのなら......実体がある......幻覚じゃない......!)


 セオドアの斧を握る手が震える。


 ベルザはセオドアの問いかけに答える訳でもなく一歩、また一歩とセオドアへと歩み寄る。


 ーその瞬間、


 ベルザに殴られて地面に倒れていた筈のザガンがベルザの背後へとぬらりと回り込み双剣を振りかぶっていた。


「《影爪穿断・連牙》!!!!」


 ベルザは不適な笑みを崩さないまま、ザガンの猛攻を大楯の一振りで弾き返す。


「......っく!」


 ザガンの身体は弾き返され、ザガンは体勢を立て直す事ができずにセオドアの前に転がる。


「ザガンさん!!!」


 セオドアは地面に転がるザガンを助け起こそうと駆け寄る。ザガンは口から血を「ぺっ」と吐き出すと怒りに震えた様に歯を剥き出していた。



「誰なんだ......お前は!!!!」



 ザガンの声が回廊に響き渡る。


 ベルザは未だに冷笑を浮かべている。



「いつからモンスターと入れ替わりやがった!!!」



 ザガンの問いかけに、ベルザは目を細める。


「いつから......?」


 ザガンは鼻を抑えて息を吐き、鼻からも血を吹き出す。


「今切り掛かってわかった......何であんたからヴァンベッタとグウェンの血の匂いがしてんだ!!」


 ザガンの指摘にベルザは狼狽えることもなく不適な笑みを崩さない。


「黒豹の嗅覚も侮れないな......」


 ベルザの返答にセオドアは眉を吊り上げる。


「どう言う事ですか!?」


「ベルザさんはミノタウルスと遭遇してすぐに分断されてる。ヴァンベッタやグウェンの血の匂いがする筈はねぇんだ!!」


 第三階層でミノタウルスと遭遇した時、ヴァンベッタさんはミノタウルスに捕食されていた......


 グウェンさんはそれに激昂して突撃して潰されて死んだ......


 あの後、誰一人としてヴァンベッタさん達の身体に触れていない......!


「ヴァンベッタさんと......グウェンさんの血の匂いがしていると言う事は......」


 ヴァンベッタを捕食していた、グウェンを拳で潰した張本人。



「こいつはミノタウルスだ!!!!」



 ザガンの声が回廊に響き渡る。


 セオドアはその言葉に衝撃を受ける。


(さっきまで話していたベルザさんがミノタウルス......!?)


 ザガンの言葉にセオドアはベルザと合流した時のことを思い出す。


 ミノタウルスに追いつかれ、横穴に逃げ込んだ時にミノタウルスは腕を入れて僕達を掴もうとしていた......そんな時にベルザさんが横穴に滑り込んできた......


 ミノタウルスが去っていく様な足音は聞いていない......


 それはつまり......ミノタウルスがベルザさんを装って入ってきたと言うこと......?


 今までダンマリを決め込んでいたベルザの姿をした何かが口を開いた。


「ご名答......」


 その言葉のセオドアとザガンは背筋が凍る緊張感を感じる。


「テメェ......よくも......抜け抜けと......ヴァンベッタとグウェンを殺した野郎がベルザさんの真似してんじゃねぇ!!!!」


 ザガンが叫んでベルザの姿をした何かに駆け出そうとする。


「ザガンさん!!止まってください!!!」


 セオドアはザガンが飛び出して行かない様に脇を抱えて引き止める。


「くそが!!!」


 暴れるザガンを引き止めるセオドアはベルザの姿をした何かが笑い声をあげているのに気がついた。


「何がおかしいんだこの野郎!!!」


「いやいや、すまない。実に滑稽だと思ってな......」


「何だとクソ野郎!!!」


「ザガン......貴方はさっき「いつから入れ替わった」かと私に聞きましたね?」


「あぁ?」



「いつからも何も私はずっとベルザ・ドルグですよ」



 ベルザの姿をした何かがそう言い切った。


「どう言う......意味だ......?」


 その事実にザガンの思考が止まる。


「正真正銘......私がベルザ・ドルグだと言っているのです。冒険者としてクラン......クロー・リングを立ち上げクランマスターとして生きてきたのは私です」


 ザガンは牙を剥き出した。


「ふざけてんじゃねぇ!!第三階層でミノタウルスと遭遇した時にベルザさんはミノタウルスの攻撃から俺たちを守ってくれていたじゃねぇか!!」


 ザガンの指摘にベルザが思い出す様に顎に手を当てる。


「あぁ......これの事か」


 ベルザが指を鳴らすとザガンとセオドアの前にベルザの姿がもう一体現れた。


「これは......幻覚!?」


 セオドアが驚嘆の声を漏らした。


「そう。幻覚です。万が一生存者が出た時の為のアリバイって奴ですよ......」


「戦ってる振りをしていたってのか......!?」


「そう......そして......」


 ベルザがそう口にするとベルザの身体がボコボコと泡立ち始め、生々しいしい音を立てながらどんどんと黒く、大きくなっていく。


「そんな......」


 セオドアが呟いた。


 黒く大きな巨体となったベルザは鼻を鳴らし、ブルブルとツノを振り乱した。


 そこには暴力と狂気の権化......ミノタウルスの姿があった。


『これが私の本当の姿......』


 ミノタウルスの口からベルザの低い声が響く。


『これでわかっただろう』


 セオドアは震えながら呟く。


「知性のある人型......モンスター......あの冒険者の手帳に記されていた『ブルー』は......」


 セオドアは息を呑んだ。



「ベルザさんの事だった......」



 ミノタウルスの口角が上がる。


『あぁ......昔取り逃した冒険者が手記を残していたのは予想外だったな』


 セオドアの呟きにベルザは返答する。


 その時、ザガンは地面に膝から崩れ落ちる。


「俺が......憧れたベルザさんが......モンスター......?」


 セオドアは呆然としているザガンを見て、憎しみで顔を歪ませる。


「何でこんな事を!!」


 セオドアの問いかけにミノタウルスは耳をぴくりと動かす。



『何故?家畜を狩るために決まっているだろう?』




 ミノタウルスは笑みを浮かべる様に歯を剥き出して口角を上げた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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次回もどうぞよろしくお願いします。

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