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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第9章 姫様の教育係

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第5話 先生の印象

 レスター・オルブライト先生の登場により、中庭でくつろぐ気分ではなくなってしまった私は、


(あの先生、どうしてあんなに偉そうなの!?)


 などと腹を立てつつ、カイルと共に中庭を後にした。





 部屋に戻ったとたん、タイミング良くノックの音が響いて。

 私が入室を促すと、すぐにドアが開き、セバスチャンがひょっこりと姿を現わした。


「おお、姫様。お戻りになりましたか」


 トテトテと寄ってきて、私の顔を覗き込むようにして首を横に傾ける。


「先ほどお伺いした時には、お部屋にはいらっしゃいませんでしたので。いずこに参られたのかと心配しておったのですぞ」


「ああ、ごめんね。先生は午後に来るって聞いてたから、それまで暇だなーと思って、カイルと中庭に行ってたの」


「ほう、中庭に……。さようでございましたか」


 セバスチャンは納得したように首を縦に振った。


「でもね! 私がカイルと話してたら、急にその――新しい教育係って人が割って入ってきたの! 来るのは午後のはずじゃなかったのかって、ビックリしちゃった。――ね、カイル?」


 振り返り、後ろにいたカイルに同意を求める。

 話を振られるとは思っていなかったのか、彼はハッとしたように顔を上げ、


「え?……あ、はい! とても驚きました!」


 そう言って、何度もうなずいてみせた。

 セバスチャンは私とカイルを交互に見つめてから、やはり小さくうなずく。


「さようでございましたか。オルブライト様が中庭に……。きっと、姫様と同じように思われたのでしょう。午後まで時間があるからと、城の内部を見て回っておられたのでは?」


「ああ……なるほど。そういうことか」



 どうしてあんなところをウロウロしてたんだろう、って思ってたけど……。

 城に来たのなんて今日が初めてなんだろうし、暇があったら、そりゃあ『いろいろ見て回るか』って気にもなるわよね。



 考えてみたら、おかしなことでも何でもなかった。

 怪しんだりして悪かったなと、私がちょっぴり反省していると、


「顔合わせは済んだということでしたら、姫様。教育係の印象はいかがでございましたか?」


「え。……先生の、印象……」



 そりゃあ、最悪――としか言いようがないんですけど……。



「印象……は、とりあえず置いといて。先生――オルブライト先生って、今いくつなの?」


「――は? 顔合わせの折に、お訊ねにならなかったのでございますか?」


 不思議そうに首を傾けるセバスチャンに、私は曖昧(あいまい)な笑みを浮かべ、


「うん、まあ……。訊く余裕がなかったっていうか……そんな感じで」


「はあ……? 訊く、余裕……?」


「ま、まあ、そんなことどうだっていいじゃない。とにかく、いくつなのか教えて?」


「は、はあ……。確か、二十七……いや、八でございましたか……」



 ふ~ん……。


 十歳以上も上で、頭いいともなれば……まあ、ああいう偉そうな話し方にもなる……のかな?



「――で、先生はもう帰ったの?」


 訊ねる私に、セバスチャンは信じられないことを言った。


「は? 何をおっしゃいます。あのお方は今日(こんにち)より、この城に住まわれるのですぞ?」


「……へ?」


 耳を疑って、思いっきり首をかしげてしまった。


「今……なんて言ったの、セバスチャン?」


「ですから、オルブライト様は、これからこの城に住まわれる――と、申したのですが?」



 ……住む? この城に?

 あの……嫌味な先生が?



「えぇえええーーーッ!? なんでっ!? なんでそうなるのっ!?」


「何ゆえとおっしゃいましても……。これから毎日ご教授くださるのですから。お住まいから通っていただくのも大変でございますし……」



 ……そんな……。

 じゃあ、これから毎日……あの先生の目を気にしながら生活しなきゃいけないの?



 瞬間、冷たく光るヴァイオレットの瞳が脳裏をよぎり……私はブルッと身震いした。



 嫌……。

 ……嫌だ。


 勉強教えてもらうってだけでも抵抗あるのに。


 ここに……ここに一緒に住むだなんて――!



「ヤダよぉ、怖いよセバスチャ~~~ンっ! 一緒に住むって、それ……どうにかならないのぉお~~~っ?」


 私はセバスチャンにしがみつき、情けない顔で泣きついた。


「どうにか……は、なりませんなぁ。オルブライト様のお部屋に、お荷物も運び入れてしまいましたし。すでに、おくつろぎでいらっしゃるのでは?」


「そ……そんな……」


 ガックリと肩を落とすと、セバスチャンは目をパチパチさせ、


「はて? 何ゆえ、先生がこちらにお住まいになるのを反対なさるのですか? 先生とお会いした折に、何かございましたか?」


「……え? いや、その……」



 ……どうしよう。

 まさか、『愚か』って言われたからムカついて……なんて、子供みたいなこと言えないし……。



「姫様?」


「あ――。う、ううんっ、なんでもない! 特になにもないんだけどねっ? アハハ、ハハ……」


 セバスチャンに呆れられるのが嫌で、私は乾いた笑いでごまかした。

 彼はキョトンとした顔で、しばらく私を見つめていたんだけど、


「ピッ?――そろそろご昼食の時刻でございますな。厨房の様子を覗いて参ります」


 そう言い残し、セバスチャンは慌ただしく部屋から出ていった。

 ドアが閉まったとたん、グゥ~っとお腹の鳴る音がして……。


(いやぁあーーーッ! カイルがすぐそこにいるのにぃいーーーッ!)


 たちまち熱くなった顔を伏せ、私は両手でお腹を押さえた。

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