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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第8章 相対の夜、別離の朝

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第1話 午後のまどろみ

 カイルに部屋の前まで送ってもらって中に入ると、私はベッドまで歩いていき、


「あー、疲れたぁああーーー」


 ヘッドスライディングするみたいに、うつ伏せに倒れ込んだ。



 ……疲れた。

 一日にいろんなことが起こったからか、ドッと疲労感が襲ってきてしまったみたい。



「あー……。こっちの世界にきてから、まだ二日だっていうのにねぇ……」


 しみじみとつぶやいて、ゴロリと仰向けになる。



 元の世界にいた時は、毎日同じような日常の繰り返しで……。

 こんなにドラマチックなこと、ひとつも起こったことなんてなかったのに。


 それが今では、王子様からプロポーズされたり……って、とても現実とは思えない。


 でも、確かに現実なんだよね、これ……?



 ……まったく。

 たった二日の間に、どれだけのことがあったことか。



 まずセバスチャンに会って、姫様と勘違いされてこの城にきて、アンナさんとエレンさんに会って、国王様に会って、カイルに会って別人だって見抜かれて……。


 事情を説明して信じてもらって、その後また国王様に会って……。

 そんでもって、今度は王子がくるってんで、カイルが姫様捜しにルドウィンに向かって。


 王子に会って、そこからまたいろいろあって……って、あー……。

 もう順番に思い出すのもめんどくさいくらいに、たくさんのことがあったなぁ。



 神様にも会って、真実も聞かされたし。


 王子にはプロポーズされて……キス、されそうになったりも……して……。


 あの時の王子の、真剣な……でもどこか寂しそうな、瞳の色とか……甘く、低く響く声とか……。

 距離が縮まった瞬間の、ドキドキ……とか……。


 うぅ……。


 なんだか、今思い出しても顔が熱くなっちゃうけど……。

 でも、同時に……ちょこっとだけ、怖くも感じちゃったりして……。



 こんな気持ち、今まで経験したことなかったからなぁ……。

 ホントに、どう受け止めていいのかわからないよ……。



「あーーーっ、もぉっ! また思い出しちゃったじゃない! 私のバカぁあああーーーっ!!」


 王子にキスされそうになった瞬間のことが再び脳裏をよぎり、あまりの恥ずかしさに大声を張り上げてしまった。


 ゴロンゴロンと右に転がり左に転がり、手足をバタバタさせ、髪をグッシャグシャにかき乱しても、恥ずかしさは少しも消えてくれない。(……まあ、当たり前だけど)



 もう、次からは絶対、甘い雰囲気になったとしても流されたりしないんだから!


 王子だって、明日には自分の国に帰っちゃうんだし……さっきもなんか、様子がおかしかった気もするし。

 これから先は、甘い雰囲気になることなんてきっとないよね……。



 ……って、何ちょっと寂しく感じちゃったりしてるのよ、私ったら?

 これじゃまるで……また甘い雰囲気になることを望んでるみたいじゃない。



 ……甘い雰囲気、か……。


 そりゃあ……私だって一応、女の子なんだし。

 そういう展開にだって、憧れくらいはあるけど……。



 ……ハァ。


 私の気持ちが、疑いようもなく『これは恋だ!』って言い切れるくらい、確実なものだったらなぁ……。

 すぐにでも王子に会いにいって、『私も好きです! この気持ちはやっぱり恋でした!』……って、伝えられるのに。



 でも、未だにドキドキの正体が恋なのかどうかわからない、今のこの状態じゃ……なれるワケないよ、甘い雰囲気になんて。


 ……そう。なっちゃいけないのよ。

 うやむやのまま流されちゃったら、きっと後悔すると思うし。



 だけど、頭の中では王子に言われたセリフや、その時の彼の表情なんかが、いくつもいくつもグルグルと回り続けてて……。

 顔のほてりや胸のドキドキは、なかなか治まってくれなかった。



 あ~……なんかもう、慣れない感情でお腹いっぱい……って感じ。

 今日はこれ以上、何も食べられない気がする……。



 ……あ。


 でも……そっか。

 まだ、夕食前なんだよね。



 ん~……。

 今日のメニューも、昨夜と似たような感じなのかな……?



 ……ふむ。

 こっちのお腹は、ちゃんと空いてるけど……。


 考えてみれば、当然だよね……。今日、お昼食べてないもん。


 午前中に、神様の中で……神様と話したり、してて……。

 昼食とってる暇なんて、これっぽっちもなかったもんなぁ……。



 ……あれ?

 私……どれだけの時間、神様の中にいたんだろう?


 あっという間だった気もするのに……結構、長い時間……だったん……だなぁ……。



 神様……怒らせちゃった……けど……。

 でも……そのうち、また……会いに行って、みよう……。



 その前に、国王様にも、話……聞かなきゃ、だけど……。


 神様と……国王様が、元は二人……で……一人、とか……ふたつで……ひとつ、とか……。

 そんなようなこと……言ってた気がする、し……。


 ……考えても、頭こんがらがるようなことばかり……言わ……れて……。



 ……あぁ、もう……。

 ワケ……わかんな……い……。



 これから、この世界や……国の、こと……もっと……もっと、知らなきゃ……だし……。


 やること……いっぱい……だぁ……。



 うつらうつら、意識が遠のいていくのをベッドの上で感じながら……。

 いつしか私は、深い――深い眠りへと沈んでいった。

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