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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第6章 初恋は突然に

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第10話 降ってきたのは……

 いきなり降ってきた物体に頭を直撃され、カイルさんはうつぶせに倒れ込んだ。


「キャーーーッ、カイルさん!……って……え? セバス……チャン?」


 カイルさんの上にデデンと乗っかっている物の正体は、なんとセバスチャンだった。


「え……どういうこと? 今までどこにいたのよ、セバスチャン?」


 落ちてきた理由がわからず、私が呆れて訊ねると、ビクッとセバスチャンの体が揺れた。

 彼はゆっくりと――ちょっとイラッとしちゃうくらいのスピードで振り返り、モゴモゴと弁解を始める。


「ど――、どこで何をと申されましても、その……私はただ、姫様とギルフォード様のお邪魔をしてはならぬと思いまして……。お二人に気付かれぬよう、そーっとこちらの木の上に……」


「木の上っ!? この木の上にずーっといたのっ!?」


 セバスチャンが降ってきた辺りを見上げ、背後の木をポンポンと叩きながら確認する。


「……は、はい……。申し訳ございません……」


 彼は大きな体を縮こませ、蚊の鳴くような声で肯定(こうてい)した。



 え……えぇえーーーッ!?


 ……ずっと?

 ずっとってことは……王子にプロポーズされてた時も、ずぅううーーーっと木の上で見てた……ってこと!?



 なっ……何それ!? 恥ずかし過ぎる……っ!



「もうっ! セバスチャンっ!?」


「ピャ!――も、申し訳ございませんっ! 申し訳ございません申し訳ございませんっ! お許しください、姫様ぁ~~~っ!」


 照れ隠しに怒ってみせる私に、セバスチャンは翼で頭を抱えるようにして、ひたすら謝り続けている。


「もうっ、バカ! セバスチャンのバカバカっ! 次、また同じことしたら絶対許さないんだからねっ?」


「はいっ、いたしません! 二度といたしませんので、どうかご容赦(ようしゃ)くださいませ~~~っ!」


「……う~……。ホントにしょうがないなぁ……」


 呆れるまま腕を組み、じとっとセバスチャンを見つめる。

 すると今度は、彼の下敷きになったままのカイルさんが目に入り、私は一瞬にして青くなった。


「ああっ、ごめんなさいカイルさん! 私ったら、すっかり忘れて……って、ちょっとセバスチャン! 早くそこどいてっ!」


 急いでセバスチャンをどかし、カイルさんを抱き起こす。


「カイルさん、大丈夫!? ねえっ、カイルさんってば!」


 顔をペシペシ叩いても、体をガクガク揺らしても、彼は全く反応しない。

 私はますます青くなり、


「どうしよう、全然反応しないよ!?」


 とセバスチャンに救いを求めた。

 とたん、彼はビクッと跳び上がり、


「ももっ、申し訳ございませんっ! 私めが足をすべらせ、カイルの上に落下してしまったばかりに、このようなことに……っ」


 ひたすら恐縮して、ペコペコと頭を下げている。


「謝る相手は私じゃなくて、カイルさんでしょ!? それに今は、謝るよりお医者さんか看護師さんを呼ぶ方が先……って言っても通じないか。とにかく誰でもいい! カイルさんを助けられるような人を呼んできてっ!」


「はっ、はい! かしこまりました!」


 大きく翼を広げ、バッサバッサと飛んでいこうとしたセバスチャンを、


「その必要はない、セバス!」


 それまで静観していたらしい王子が引き止め、私は驚いて振り返った。


「私が彼をアルフレドに乗せて、城へ戻ろう。リア、君はここで待っていてくれ。彼を送り届けたら、すぐ迎えにくる」



 必要はないだなんて、どうしてそんなこと言うんだろうと思ったら……なんだ、そういうこと。

 自分が城まで連れていくから、誰も呼ぶ必要はない――って意味だったのね。



「ありがとうございます! 私は一人でも大丈夫ですから、早くカイルさんを運んであげてください!」


 ホッとして早口で告げると、サッと王子の顔色が変わった。



 ……ように、見えたんだけど……。



 私が一瞬ひるんだ隙に、王子は素早く私の腕から自分の腕へとカイルさんを移し、軽々と抱き上げた。



 ええっ?……すごい!

 自分とそれほど変わらない背丈の男性を、ああも簡単に抱き上げちゃうなんて!



 感心して見守る私をよそに、王子はカイルさんを馬の背にうつぶせの状態で騎乗させると、また馬上の人になった。


「セバスがいるのだから問題ないだろうが、森で迷ったら大変だ。私が戻るまで、ここでじっとしているんだよ? いいね?」


 厳しい顔で言いつけられ、素直にうなずく私に、王子はようやく(やわ)らいだ表情を見せてくれた。

 それから『はっ!』というかけ声を発し、アルフレドと共に颯爽(さっそう)と駆けていく。


 王子の姿が見えなくなるまで見送っていた私は、これでひとまず安心かなと息をついた。



 だってカイルさん、外傷はなかったみたいだし。

 脳とかに異常が見つからなければ、特に問題はないはず……だよね?



 ……ん?

 でも、ちょっと待って?


 この世界の医学って、脳の異常を調べるとか、そんなレベルにまで達してたりするのかな?

 今までの印象だと、医学が進んでるような世界には思えなかったけど……。



 だって、手紙を鳥に(たく)して届けさせたりする世界なんだよ?


 携帯、スマホはもちろんのこと、コンビニだってデパートだってないだろうし。(もしあったら、それはそれで驚きだけど)


 水道は一応あるみたいだけど、どの程度使えるものなのか、まだよくわかってないし……。


 とにかく、旧時代の雰囲気、かもし出し過ぎてる世界なのに。



 うわぁ……めっちゃ心配になってきた。

 王子には戻るまで大人しく待ってろ――みたいなこと言われちゃったけど、やっぱり今すぐ戻った方がいいのかな?


 ……でも戻ったところで、私にできることなんて何もないんだよね。医学に詳しいわけでもないし。

 ましてや、脳内のことなんてわかるわけないもんね。



 そう思い直した私は、素直に王子の言うことを聞き、彼が戻るのを待つことにした。

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