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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第5章 神様 ~御神木の桜~

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第8話 おかしな神様

 結構待ってみたけど、神様が話し始める気配はない。

 このままずっと二人で黙り込んでてもしょうがないと思って、私が口を開こうとしたとたん、


「オレは謝るのが嫌いだ!」


 神様がまた唐突に、妙なことを言い出した。


「……はい?」


「嫌いだ――が、しかし……この場合はやっぱり、嫌でも口にしなきゃいけない……とは、思う」


「……え~っと……神様? いったい何の話を――」


「すまん! ごめん! 申し訳ない! 悪かった!……オレの知ってる謝罪の言葉だ。これで勘弁してくれ」


「……は?」


 ワケがわからず、私は困惑して首をひねった。


「これで勘弁してくれって、どういう意味? さっきから何言ってるのか、さっぱりわかんないんだけど……」



 『おまえのせいだ』とかって怒り出したかと思ったら、今度は知ってる限りの謝罪の言葉を並べて『勘弁してくれ』?

 それって、何についての『謝罪』なの?


 怒ったりして悪かった――って意味なのかな?



「どういう意味かわからない?……おまえなぁ。オレは謝るのが嫌いだって言ったろ? そのオレが、わざわざ謝ってやったってのに……」


 神様は握った拳を震わせ、ギリギリと歯噛みしている。



 ……どうやら、また怒らせちゃったみたい。



 でも、しょうがないじゃない!

 ホントにわかんないんだもん!



「わざわざ謝ってやったって言われても、わかんないもんはわかんないのよ! もっと詳しく、こっちにもわかるように話してよ!」


「な――っ!……おまえはどうして、そんな偉そうなんだ? ほんっと、桜とは大違いだな!」


「偉そう? そんなの、神様にだけは言われたくないっつーの!」


「なっ、なんだとぉおおッ!?」


「なによっ!?」


 お互い、真正面から睨み合う。これが漫画のワンシーンなら、バチバチと火花でも散ってるところだ。


「だからっ、さっきおまえ言ったろ!? おまえを桜の世界に送って、桜をおまえの世界に送った、そもそもの理由がわかんないって。もしかしたら、あの時自分が何かしちまったから、オレが怒って……その、そーゆーことになっちまったんじゃないか……って」


「うん。それは確かに言ったけど――」


 神様はまた顔をそらし、耳を澄ませてやっと聞こえる程度の声で告げた。


「とりあえず、おまえが何かしたからオレが怒って……ってのは、ない。おまえに責任があったワケじゃ……ない」


「え、そうなの?……じゃあ、なんで? どうして私、異世界に飛ばされることになっちゃったの?」


「それは……」


「……それは?」


 神様は眉間にしわを寄せ、しばらくためらってるみたいだったけど、思い切ったように顔を上げた。


「オレがおまえをあっちの世界に送ったのは、特に理由があってのことじゃない。……たまたまだ」



 ……へ?

 『たまたま』……?



「えぇえーーーッ!? 何それっ!? たまたまってどういうことっ!?」


「だから、ちゃんと謝っただろ!?……悪かったとは思ってるよ」


「――って、そんなブスッとした顔で言われても、全ッ然、謝られてる気がしないんですけど!?――ねえ、ホントに悪かったって思ってる? 思ってないんじゃないの?」


「う――うるさいうるさいっ! 悪いと思ったから謝ったんだ! その気持ちを疑うんだったら、もう二度と、おまえには謝ったりしないからなっ!」


「な――っ!……何なのよそれーーーッ!?」



 ……信じられない。

 こんなメチャクチャな子が神様だなんて……。



「……ねえ。あなた、ホントに神様なの……?」


 呆れ果てて訊ねたら、神様はキッとこちらをにらみつけた。


「おまえなあ! 何度言ったらわかるんだ!? 人間たちが勝手にそう呼んでるだけで、オレは自分が『神様』だなんて、ただの一度も名乗ったことなんてないんだからなっ!?」


「じゃあ、あなたの正体って何なの? 桜の精とか……よくわからないけど、そういう存在?」


「……正、体……?」


「そう、正体。見た目は巫女服着た子供っぽいけど……実はもっと、年取ってたりするんじゃない? かなり昔から、この世界で『神様』って呼ばれてたんでしょ?」


「……人間で言うところの、年齢――ってヤツを訊いてるのか?」


「うん。神様って、今幾つなの?」


「……知らん」


「へ? 自分の年齢、わかんないの?」


「そんなもの、気にしたこともない。だから知らん」


「……へ、へぇ~……。そうなんだ」



 それだけ長いこと生きてる……ってことなのかな?

 御神木の桜の木も、樹齢何百とか何千って言われてるって、晃人も言ってたし……。



「じゃあ、まあ……年齢のことは置いといて。結局神様って、何? さっき否定も肯定もしなかった、桜の精――ってこと?」


「知らん」


「あのねぇ……。神様、まともに答える気あるの? それとも、私の質問には答えたくないってこと?」


「知らんと言ったら知らん! 気が付くとここにいたし、それからどれくらい経ったかなんて俺にはわからん」



 ……え?

 気が付くとここにいた……?


 気が付くと、って……?



「覚えてるのは……オレは最初、()()()()()()()()()ってことだけだ。あいつの考えてることはオレにもわかったし……オレの考えてることも、あいつにはわかってた」



 ……は? 『あいつ』?


 あいつって……誰?



「オレたちは、二つで一つみたいなもんだった。……そう……だったと思う。……けど、あいつはいつ頃からか、外の世界に興味を持つようになった。興味を持って……ある日突然、人間に姿を変えて、外に出ていってしまった。オレは止めたのに。人間なんかに関わったってろくなことはないって、何度も止めたのに!」



 ……神様?

 いったい、何の話をしてるの?



 いきなり始まった神様の独り言のような昔話に、私は困惑した。

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