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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第5章 神様 ~御神木の桜~

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第7話 ホントの桜、ホントの家族

 正直に『可愛い』って見た目の感想を話しただけなのに。

 神様は急に真っ赤になって、照れ隠しの憎まれ口を叩いてきた。


「……べつに、ふざけたつもりはないんだけど……。ホントに、心から可愛いな~って思ったから」


「う――っ、うるさいうるさいっ! 黙れこの――オタンコナスっ!!」



 ……おたん……こなす……?


 え~っと……。

 意味はよくわからないけど、流れからして……けなされてるんだよね?



「まったく、おまえは本当におしゃべりだな! 桜はもっとおしとやかで、オレの話を、いつも穏やかに聞いてくれてたのに……。顔は同じでも、中身がここまで違うとはな! 本当に驚きだ」


 不機嫌そうな顔に戻ってしまった神様は、そっぽを向いたり、私の顔をちらりと見たり、下を向いたり――と落ち着きなく顔を動かしながら、失礼な言葉を放ってよこした。


「『顔は同じでも』って、別人なんだから違ってて当たり前でしょっ? いちいち比べないで!」



 姫様が――いや、本物の桜って子がどんなに素敵な子なんだか、私は直接会ったワケじゃないんだし、わかるはずもないんだけど。


 でも、相手がどんな子であろうと、比べられるのは……やっぱり、気分のいいことじゃない。


 ホントは私だって、彼女に直接会っていろいろ聞きたいし、確かめたいことだってあ――……。



「あっ、そーだっ! 神様、桜さんもここに呼んでっ? 話したいこと、たくさんあるの!」



 そうだ。そうだよ!

 神様の力で、呼んでもらえばいいんだ!


 どうして今まで思いつかなかったんだろう?



「桜を――呼ぶ?……ここへ?」


「うん! できるんでしょ、神様なら?」


「……無理だ」


「えっ?」


 当然できるだろうと思っていたのに、あっさり断られてしまった。


「え……え、なんで? どうして無理なの?」


「オレの力だって、万能なワケじゃない。桜がオレの側にいる時なら、できないこともないけど……今はいない。だから無理だ」


「……なんだ、そっか。……無理、なのか……」



 そう言えば、私にも『こっちにこい』とか、『オレに触れろ』とかって言ってたっけ……。



「じゃあ、姫様――じゃなくてっ、えっと、桜……さんも、無事にあっちの世界に戻れたんだね。ホントの家族のところに……」



 ……ホントの、家族……。



 バカだな、私。

 自分で言ったことに、自分で傷ついてる……。



 私だってずっと……ホントの家族だって思ってたんだけどな。……お父さんも、お母さんも。


 晃人のことだって、ホントの幼なじみだって思ってたのに……。



「桜は自分の家族のこと、忘れてたワケじゃなかったからな。おまえよりは、困ったことにはならないと思うけど……。まあ、心配があるとすれば、向こうのヤツらがどう思うかだよな……」


「……え? 向こうのヤツらがどう思うか――って、どういうこと?」


「さっきも言っただろ! おまえたちは見た目はそっくりでも、中身は全然違うって。長い間、おまえを桜だと思ってたヤツらから見たら、桜の人格が変わっちまったって――そんな風にしか思えないだろ?」



 あ。……そっか。

 私だって、性格の違いのせいで……別人だって、すぐにカイルさんや王子にバレちゃったんだもんね……。



「桜……大丈夫かな? うまくやっていけるかな、あっちで――」


 顔を曇らせてる神様を見て、内心ムッとした。



 ……なんなの? 私と桜さんとでの、この態度の違いは……?


 それに、ずっと交流があったっぽいし……。

 そのせいか、桜さんにはやたら好意的って言うか、優しい感じだし……。



「神様と桜さんって、ずいぶん仲がいいみたいだけど……しょっちゅう会ったりしてたの?」


 ストレートに疑問をぶつけると、神様はあっさりうなずいた。


「ああ、会ってたぞ。しょっちゅうってほどじゃないけど、たまにな」


「な――っ!……会ってた? 会ってたの?……じゃあ、めちゃめちゃ仲良かったってこと!?」



 私なんて、姿見たのも今日が初めてなのに!?



「……なんだよ、仲良くちゃ悪いのかよ? 桜には、いろいろと迷惑かけちゃったしな。ちょっとは責任感じてたし……。心配だったんだよ」



 ……って、ちょっとちょっと。

 私には迷惑かけてない――とでも言いたいの?


 しかも『ちょっとは』って……。



「それに、おまえは全っ然、オレの側にこなかっただろ。ずーっと呼びかけてたのに」



 え?

 呼びかけてた……?



 ……あっ!

 もしかして、夢の中でずーーーっと、呼ばれてるような気がしてたのって……。


 あの声は、神様だったの――!?



「……なんだ。そーゆーこと……だったんだ。呼ばれてる気がした――じゃなくて、ホントに呼ばれてたのか……」


「そうだよ! お陰でだいぶ長いこと、チャンスを待たなきゃいけなかったんだからな!? ぜーんぶ、おまえのせいだぞ!」


「な――っ!」



 ……何、その言い方!?

 勝手に違う世界に飛ばしといて……悪いのは全部、私だってーの!?



 ジョー……ッダンじゃないわよッ!!



 ……んん?

 でも、待って?


 それとも私……何かしたの?


 異世界に飛ばされても仕方ないと思えるような――何かいけないことを、六歳の私はしちゃったの……?


 だから神様は、その時のことも含めて……私のこと怒ってる……とか?



「ね……ねえ、神様? 私、もしかして……神様に何かしたの? だからそんなに怒ってるの?」


「怒ってるよ! さっきから言ってるだろ? オレが必死に呼びかけてたのに、おまえは全然気付かなかったって!」


「――じゃなくて、六歳の頃! 小さい頃に、私は何かしちゃったのかって訊いてるの!」


「……は? 小さい頃?……何の話だ?」


「だっ、だって! 神様が桜さんと私を入れ替えた理由が、そもそも全ッ然わかんないんだもん! だから、もしかしたら……六歳の私が神様を怒らせて……その罰として、異世界に飛ばされちゃったのかな? って思って……」


「……罰?……そもそもの、理由……?」


 神様は一瞬、キョトンとして……。

 それから急に、バツの悪そうな顔をして目をそらせた。


「……神様?」



 どうしたんだろう、神様?

 いきなり黙り込んじゃった……。



 私は困惑しながら、神様の様子を窺った。

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