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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第5章 神様 ~御神木の桜~

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第5話 神様が!!

『サクラ! サクラ、どこにいる!?――サクラ! サクラーーーッ!!』


 少し遠くで、王子の声が聞こえる。



 ……どうして遠く感じるんだろう?

 さっきまで、すぐ近くにいたのに……。



 不思議に思い、私はそうっと目を開けた。


「えっ!……何、ここ……?」



 ――真っ暗だった。

 全てが闇に覆われていた。


 どうやら私は、宙に浮いている状態らしい。足が地を踏んでる感覚がないことで、それがわかる。



「ここは……。まさか、また――?」



 あの時と同じだ。

 私がザックス王国に放り出された、あの時と……。



「あーーーーー、疲れた。これだから嫌なんだよなぁ……力使うの」


「――えっ?」


 今度は頭の中じゃなく、ちゃんと耳を通して聞こえた。


 慌てて声のした方へ振り向くと――。

 ムスっとした顔つきで腕を組んでいる、男の子の姿があった。



「おまえ、感謝しろよ? オレが人間と会うことなんて、滅多にないんだからな」


 偉そうな口調。生意気な態度――。

 私は呆然と男の子を見返した。



 ……えー……っと……。

 この子、誰?


 声は……確かに、さっきまで頭の中で響いてた声と同じなんだけど……。

 でも、まさかこの――せいぜい十歳前後――って見た目のこの子が……。



 ……神様?



「まっさかぁ! こーんな小さな子が、神様のワケないじゃない! あははははっ」


 思わず声に出し、笑い飛ばしてしまったら。

 男の子はますますムッとした様子で、私をにらみつけてきた。


「小さな子? 小さな子って何だ!? オレはおまえより遥かに長い間、この世に存在してるんだぞ!? それに『神様』ってのは、おまえら人間が勝手に呼んでるだけで、オレが名乗ったワケじゃない! 勝手なこと言って、オレをバカにするな!」



 う――っ。

 なんかヤバイ。


 ……怒らせちゃったみたい。



「ごめんなさい。あまりにも、その……見た目が若かったから、つい……。あなたのことをバカにしたつもりはなかったの。ホントよ?」


 この子の見た目がどうであろうと、不思議な力が使えるのは間違いないようだし。

 怒らせるのは危険だろうと判断し、私は機嫌を取ることにした。


「……フン。人間の言うことなんか信用できるか! おまえらは昔っから争いばかりしてるし、平気で嘘はつくし、大して力もないクセに偉そうにするし……いいとこなんかひとっつもないんだからな!」



 ……う~ん……。

 いいとこがひとつもない、かぁ……。


 かなり嫌われちゃってるのね、人間って……。



「えっと、神様……? 人間、嫌いなの?」


「大っ嫌いだ!!」



 うわ~……、即答されちゃったよ。


 でも、そんなに嫌ってるなら……どうして話をしてやろうなんて思ったんだろう?



「……ふむ。嫌いって言ってるわりには、優しいんだね。私たちが困ってるっぽいから、助けようとしてくれてるんでしょ?」


「な――っ! ば、バカ言うな! 誰が助けてやるなんて言った!? オレはただ、暇潰しに話を聞いてやってもいいかなって思っただけだ!……だいたい、どーしてオレがおまえを助けなきゃいけないんだ!? そんな義理はないぞっ!」


「義理はない……? ちょっと、それどーゆー意味!? 神様が私をこの世界に呼び寄せて、代わりに姫様を私の世界に飛ばしたんでしょ!? ねえ、そーなんでしょっ!?――だったら、責任取る義務があるじゃないっ!」


 怒らせちゃいけないとは思いつつ。

 あまりにも勝手な発言にカッとなって、言い返してしまったら。

 神様は、ポカンとした顔で私を見つめ――。


「おまえ、何言ってるんだ? オレはおまえを、本来いるべき場所に戻してやっただけじゃないか。感謝されこそすれ、文句言われる筋合いはないぞ!」



 ……え?


 今……神様、何て言った?



 ホンライ イルベキ バショニ

 モドシテ ヤッタ ダケ――?



 ……まさか。


 まさか、ホントにそうなの?

 私の予想は……薄々感じてた、真実ってものは……。



「じゃあやっぱり、私と姫様は六歳の時――入れ替わっちゃってたの? 姫様が本当の『神木桜』で、私が――……」



 ああ……。

 どうして私、こんなにショックなんだろう?


 心の中では、ずっと疑ってたじゃない。そうなんじゃないかって……こっちがホントは、私のいるべき世界なんじゃないかって。



 ……わかってた。

 ホントはわかってたんだ、私――。



 わかってたけど、ずっともやもやしてたのは……。

 心はとっくに、真実を受け入れてたにもかかわらず、それを証明するための材料が、自分の心の内にしかなかったから。


 周りの人に説明したとしても、ちゃんと納得して、信じてもらえるだけの材料――証拠が――何もなかったから、だったんだ……。



 神様に突き付けられた真実に呆然となり、しばらくの間、私は自分の体を抱き締めたまま動けずにいた。

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