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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第5章 神様 ~御神木の桜~

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第3話 神様の元へ

 朝食後。

 私と王子とセバスチャンは、神様のところへ向かうことになった。


 表向きは、私のバッグを取りに行くため。

 でも本当のところは、消えた姫様についての手がかりを見つけるためと、神様の〝花びら〟についての謎を解明するためだ。


 でも、そこに行くまでの移動手段をどうするかで、王子とちょっと()めた。


 王子は愛馬のアルフレドに『一緒に乗って行こう』と誘ってきたけど、私は『歩きで大丈夫です』と断った。



 昨夜のこともあるし……。

 一緒に馬に乗るなんて、距離が近過ぎてムリっ!



 そう思って、断固拒否したんだけど、


「それはいけません、サクラ様! 一国の姫君が、護衛をつけずに城外にお()でになるのに歩きでなどと……。部屋の中でしたらまだしも、サクラ様には、あくまで姫様として行動していただきませんと……!」


 なんて、セバスチャンに言われてしまい……。


 結局、私は泣く泣く馬に乗せてもらうことになった。




 気まずい沈黙が続く中、ふいに王子が、


「今日は妙に静かだね。また考えごと?」


 無言状態が耐えられなくなったのか、私に話しかけてきた。


「えっ?――あ、いえ……考えごとって言えば考えごとですけど……」


「花びらの有無は、とりあえず横に置いておくとして。神様がもし、本当に花を咲かせていたのだとしたら……リアはその時、君のいた世界へ飛ばされた。そう考えて間違いないのだろうか?」


「……はい。やっぱり、それしかないと思います。だって、私がここにきたのだって、神様の力が関係してるとしか思えないし。姫様が私の世界へいくためには、私があっちにいたままじゃダメだったのかなって。だから、まるで交換するみたいにして、私がこっちへ飛ばされた。……そんな気がするんです」


「リアと君が、交換……」



 そしてその交換は、私と姫様が六歳の時にも起こっていたんじゃないかって、私は考えてる。


 ……ううん。

 考えてるって言うより、感じてる。理屈じゃなく、心で。


 きっと、そういうことだったんだろうって、感じちゃってるんだ……。



 向こうの世界にいた時は、説明しようのない違和感のようなものが、私にはいつもまとわりついてた。


 お父さんもお母さんも晃人も、同級生も近所の人も……みんないい人たちばかりで、大好きだったけど……。

 大好きなのに、疎外感みたいなものを感じてた。


 私はここにいるべきじゃないんじゃないかとか、私の居場所は、もっと他にあるんじゃないかとか。

 どうしてかわからないけど、そんなようなことを考えてた。


 振り払っても振り払っても、例えようのない――どうしようもない違和感は、決して消えてはくれなくて……。



 ……なのに。


 この世界では、不思議とそんな感情にとらわれたことがない。

 ここにいちゃいけないとか、ここは私のいるべきところじゃないとか……そんな風に思わずにいられるんだ。



 どうしてなんだろう?


 お父さんお母さん、晃人に()()()()って気持ちはあっても。

 向こうの世界に()()()()とは、今のところ、あまり思ってないんだよね。



 こっちにきてから、まだ二日目だからなのかな?

 ちょっとした旅行気分でいたりするから……なのかな?


 もう少ししたら……戻りたくて戻りたくて、堪らなくなるんだろうか……?




「サクラ? また何か考え込んでいるようだけれど、そろそろ着くよ」


「え?……あ、ホントだ。見えてきましたね、神様……」


 王子の声に顔を上げると、神様はすぐ目の前まで迫っていた。


 ――やっぱり、花が咲いたような形跡はない。ぐるりと見回してみたけど、花びらなんてどこにも……ひとひらも落ちていなかった。



「花びらは見当たらない……か。陽の光の下で見ても見つけられないということは……やはり、花は咲かなかったのだろうか?」



 王子も、私と同じことを考えてたみたい。



 ――やはり、花は咲かなかったのだろうか――。



 でも、だとしたら……神様は力を使わなかったの?

 姫様は、神様の力であっちの世界に飛ばされたんじゃないの?


 じゃあ、いったい……姫様はどこにいっちゃったの?

 私はどうして――どうやって、この世界にきたの……?





 神様の前に着くと、王子は慣れた様子でひらりと馬から降り、私へと両手を差し出した。


「おいで、サクラ」


 一人で降りるつもりだったけど、慣れないことをするのは少し不安があった。

 私は渋々王子に体を預け、抱き抱えられるようにして降ろしてもらった。


「……ありがとうございました」


 目を合わせないままお礼を言うと、またも王子はクスッと笑って、私の頭に手を置いた。


「どういたしまして。――でも、帰りも同じことをするわけだからね。お礼を言う必要はないよ」


 なんて言って、優しく頭をなでたりして――。


「あの……。そーゆーことするの、やめてもらえます?」


「ん? 『そーゆーこと』?」


「だからっ、頭なでるのとかやめてください! 子供じゃないんですから……」


「え、子供じゃないのかい?」


「――っ!」


 私がキッと見上げると、王子は楽しそうにクスクス笑った。


「すまない、冗談だよ。君はもう、立派なレディだったね」


「……『立派なレディ』、ですか。そんなこと、思ってもいないクセに」


「いやいや、思っているよ。サクラは素敵なレディだ。……今すぐにでも、私の国へ連れ去りたいと思ってしまうほどに……君は魅力的だよ」


「な――っ!」



 またいきなり、ワケのわからないことを――!


 どうして、こういう歯の浮くようなセリフを……照れもせずに言えちゃうのよこの人は!?



「ああもうっ! からかうのはやめてくださいって、何度言ったらわかるんですか!? いい加減にしてくださいっ!」


 私はうろたえて、王子と距離を置こうと数歩後ずさった。

 でも、王子は素早く私の手をつかんで引き戻し、真剣な眼差しで私の顔を覗き込む。


「サクラ! 君こそ、どうしていつもはぐらかすんだ?……私はからかってなどいないよ。本当に君のことが気になっているんだ」


「気になる? どうして王子が、私のことなんて気にするんですか?……私が姫様に似てるから?」


「違う、リアは関係ない! 私は――!」


「サクラ様! 落とし物が見つかりましたぞー!」


 王子はまだ何か言うつもりだったみたいだけど、セバスチャンの言葉にさえぎられ、バツが悪そうに口ををつぐんで目をそらした。


「ピョ?……サクラ様、ギルフォード様?」


 バッグを翼で抱え込んで近付いてきたセバスチャンは、私たちの様子がおかしいことに気付いたらしい。首をかしげた後、私と王子を交互に見つめた。


「あ、ありがとセバスチャン! 見つけてくれたんだね、私のバッグ!」


 これ以上、王子の側にいちゃいけない。

 私はセバスチャンからバッグを受け取ると、王子から自然に離れるため、歩きながら中身を確認するフリをした。

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