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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第4章 ルドウィン国の王子

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第14話 君を信じる

 私は小さくため息をつくと、隣のセバスチャンに目をやった。彼も私を見返し、励ますように大きくうなずく。


「問題ございません、サクラ様。ギルフォード様は、きっと信じてくださいます」


「……わかった。セバスチャンがそこまで言うなら、絶対だよね」


 私は王子を見上げ、その瞳をまっすぐに見つめた。


「今から私が話すことは、全て本当のことです。でも、あまりにも不思議なことばかりだから、すぐには信じられないかもしれません。そういう話ですけど……聞いていただけますか?」


「もちろん。これでも人を見る目はあるつもりだ。こんな緊迫した状況下で、君がくだらない嘘をつくとも思えない。――信じるよ。たとえそれが、とんでもなく荒唐無稽(こうとうむけい)な……すぐには呑み込めないような奇妙な話だとしても」


 王子は私の視線を受け止めながら、優しく微笑んでくれた。そのお陰で少し気が楽になり、お礼を言ってから本題に入った。


「えっと……。まずわかっていただきたいのは、私が別の世界からきた人間ということです。その……信じてもらえます?」


「別の世界?」


 予想通り、王子はキョトンとした。



 ……まあ、でしょうね。

 ここで、『へえ。そうなんだ』って自然に返される方が、逆に驚きだし。



「そうです。別の世界です。こう言っても通じないのは承知の上で言わせていただきますけど……私は、日本という国の中流家庭で育った高校生。名前は神木桜っていいます」


「……ニホン? チューリュー……カテイ? それから――コウコウセイ、だったかな?……申し訳ないが、何のことだかさっぱりわからないよ」


「ええ、でしょうね。そうだと思います。――大丈夫、想定内です。わからなくて当然ですから」



 私だってこの世界のこと、まだよくわかってないしね。



「とにかく、私はこことは別の世界から、神様の中を通ってこちらの世界に落ちてきたんです。……あ。正確に言うと、落ちたのはセバスチャンの上で、思いっきり下敷きにしちゃったんですけどね。お陰ででケガひとつせずに済みました。あははっ」


「ちょ――、ちょっと待ってくれないか?……その……『神様の中を通って』というのは、どういう意味だい?」


「どういう意味って……。えーっと、私がこの世界にくる前の世界――つまり、私が元いた世界では、神様はただの桜の木に過ぎないんですけど、神社では御神木ってことになってて。……で、その木の前で幼なじみの男の子と話をしてたんですよ。そしたら、いきなりどこからか私を呼ぶ声がして、めまいがして御神木――こちらの世界で言えば神様ですね――に寄りかかったら、体が木にめり込んで、中に吸い込まれて――」


 王子は『?』マークでいっぱいのような顔をしていたけど、私は気にせず続けた。


「木の中は空洞になってて、真っ暗で……。そこをずーーーっと落ちて落ちて、どのくらいかわからないけど、結構長い時間、落ち続けたわけですよ。んで、いきなり周りが明るくなったと思ったら、また下に落ちて……」



 ……うわ~……。

 王子ってば、口をポカンと開けちゃってる。


 こんな王子の顔、きっとレアなんだろうなぁ……。



 ……っと。いけない、いけない。

 笑っちゃダメとは思いつつ、なんだか顔がゆるんできちゃう。



「まあ、つまり。その落ちた先っていうのが、セバスチャンの背中の上だったわけですよ。ここまではわかります?」


「……いや。わかったような……気もする、部分も――……いや、すまない。正直、よくわからないな」


 王子は額に手を当てて目を閉じ、何やら考え込んでいる。



 ……やっぱり、かなり混乱してるみたい。


 まあ、無理もないけど。



「えっと、じゃあ……とりあえず、私は別世界からきた人間っていうことだけ、理解しておいてください。いいですか?」


「――ん? あ、ああ……」


「じゃあ、続けますね。えっと……それから先は、さっきセバスチャンが言ってた通りです。姫様と勘違いされて、この城にきて、国王様に会って……。その時の国王様が、すごく心配して姫様の帰りを待ってたように思えたんで、『実は偽者でした~』なんて言えなくなっちゃって。だって、余計にショックを与えてしまうでしょう? だから……嘘をついて申し訳ないと思ったし、心苦しくもあったけど……もう少しだけ、姫様のフリを続けてみようと思ったんです」


「……クロヴィス様は、君を見てすぐにリアだと?」


「え? あ、ああ……そうです。実の父親なら、すぐに見破られちゃうんだろうなって心配だったんですけど……。なんとかバレずに済んだみたいです」


「……そうか」


「だから、今この時点で私の正体を知ってるのは、セバスチャンとアンナさんとエレンさんと、カイルさん。そして王子だけってことになります」


「……なるほど」


「それで、姫様が無事だって私が思う理由なんですけど――」


 そう言ってから、私はちらりとセバスチャンを窺った。



 これはセバスチャンにだけ話した――っていうか、口がすべって、うっかり漏らしちゃったことだけど……。


 あの時のセバスチャン、かなり慌ててたしなぁ。

 王子も同じように慌てるかな……?


 結局のところセバスチャンも、あの話をどこまで信じてくれてるのか、イマイチわからないし……。



 ん~……、まあいっか。

 とにかく話してみよう。



 私はゴクリと唾を飲み込み、ゆっくりと深呼吸してから、考え抜いた末にたどり着いた〝ある仮説〟について語り始めた。

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