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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第4章 ルドウィン国の王子

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第11話 セバスチャンに相談

「じゃあ、もうセバスチャン呼んでもいいですよね? 王子の力のことは秘密――ってこと以外、話はないんでしょう?」


 早くセバスチャンにきてほしくて、私は王子と大きく距離を取ったまま訊ねた。


 だってこの王子、いろんな意味ですっごく疲れるんだもの!



「ああ、私の話はそれだけだよ。でも君の方は……どうする?」


「……は? 君の方はって、どういうことですか?」


「君がリアではないと気付いてしまったことだよ。セバスに言ってもいい? それとも、騙されたフリを続ける方がいいのかい?」


「あ……そっか。どうしよう……?」



 王子にバレたって言っちゃえば、姫様のフリしなくて済むから、楽ではあるんだけど……。

 でも、セバスチャンの立場はどうなっちゃうのかな?


 私が別人ってわかったら、次は『じゃあ姫様はどこに?』って話になるよね?

 王子に直接訊かれたら、セバスチャンは本当のことを言うしかなくなるんじゃ……。



 ……って、あれ?


 そう言えば王子って、私が姫様の身代わりをしてることについて、どう思ってるのかな?

 私が姫様のフリをする羽目になった理由、知ってるワケない……か。



 ――うん。だよね? その辺りの事情は話してないし。


 だとしたら王子は……姫様は今、どこにいると思ってるんだろう?




「あの……王子?」


「ん? なんだい?」


「えっと、王子は……私が姫様のフリしてた理由とか、こっちの事情とかって、わかってるんですか?」


「君がリアのふりをしていた理由?……いや。詳しい事情は知らないが――」



 ……ですよね。

 話してませんもんね……。



「ただ、あんなことがあった後だから……避けられているんだろう? 私に会いたくないから、リアは君に代わりを頼んだ。違うかい?」


「え……っと、それは――」



 ……うぅ、どうしよう……?

 ここで『違う』って言ったら、ホントの理由を訊かれるだろうし……。



 私が困っていると、王子は寂しげな顔でうつむいた。


「言いたくないなら、無理に言う必要はないよ。リアが会いたくないと言っているとしても、それは仕方がないことだ。決定権はリアにある。こちらが無理強いできるものでもないしね」


「ちが――っ!」


「……え?」



 違う! 姫様は王子に会いたくないんじゃなくて、会えないんだよ。

 だって今は、会いたくても会えない場所にいるんだから――。



  ……たぶん、だけど……。



「詳しい事情は、今は言えません。でも、信じてください! 姫様は王子に会いたくないわけじゃありません! きっと……ううん、絶対会いたいと思ってます!」


「……リアが君にそう言ったのかい?」


「えっ?……い、いえ……。直接聞いたワケじゃ、ないですけど……」


「だったら、どうしてそう思うの?」


「ど、どうしてって、それは……」


 私は言いよどみ、ハッキリさせられない悔しさを、唇を噛んで堪えることしかできなかった。


 その時、背後から弱々しい声で、


「あのぅ……。お薬は塗り終わりましたでしょうか? そろそろ、そちらを向いてもよろしい……ですかな?」


 しびれを切らしたのか、セバスチャンが恐る恐る訊ねてきた。


「あ――っ! ご、ごめんねセバスチャン! えっと……あ、あとちょっとだけ待ってて?」


「は、はい! かしこまりました」


 私は慌てて王子に向き直る。


「あの……。セバスチャンに相談してから、王子にバレちゃったことを知らせるか知らせないか、決めてもいいですか? 私の判断だけで決めちゃ、マズイと思うんで……」


「ああ、構わないよ。では、話がまとまるまでは――君をリアだと思っていることにしよう」


「はい、すみません。じゃあ、セバスチャンと話してきます」


「わかった。待っているよ」


 ぺこりとお辞儀して、セバスチャンの元へ小走りで向かう。


「ごめんね、セバスチャン。待たせちゃって」


「い、いいえ! 私こそ配慮が足りず……お恥ずかしい限りでございます」



 ……ああ。

 まだ王子に言われたこと、気にしてたのね……。



 まったく、王子も人が悪いんだから。

 聞かれたくない話があったからって、あんな言い方しなくてもいいのに……。



 ひたすら恐縮しているセバスチャンを気の毒に思いながら、私は小さくため息をついた。


「セバスチャン、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。王子のあれ、冗談みたいなもんなんだから」


「いいえ、ギルフォード様は真剣でございました!……思えば、姫様も今年で十六……。私が、ご幼少の頃と同じ感覚でお仕えしていたのがいけなかったのでございます。ピュルルルル……」



 ぴゅ、ぴゅるるるるって……。

 泣いてるの? それとも鳴いてるだけ?



 ……ハァ。

 この世界の鳥って、ホント不思議……。



「だから、気にし過ぎだってば! 早く浮上して、セバスチャン? 訊きたいことがあるの!」


「ピュルルル……ピ? 私に訊きたいこととは?」


「あの……あのね。もし私が……王子に正体バレちゃった~って言ったら、どうする?」


 セバスチャンは一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まった。

 そして数秒後、フリーズ解除したかと思うと。


「ば……バレて……。ギルフォード様に、サクラ様が姫様ではないと……知られてしまったのです……か?」


「え?……あ、いやっ、そーじゃなくて! もしもよ! あくまで〝もしも〟の話!」



 ……なーんて。

 ホントはバレちゃってるんだけどね……。



 必死に平静を装いながら、私は心でつぶやいた。

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