表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第3章 ザックス王国ー森の城ー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/170

第10話 王子襲来!?

 国王様からいきなり王子の来訪を告げられ、焦った私は早口で訊ねた。


「明日って、いつ頃ですか!? 朝? 昼? それとも夜っ?」


「いや、そこまで詳しくはわからぬが……。了承を得る前に無礼で申し訳ないが、今からそちらに向かうと――姫に会ってきちんと話をしたい、とな。書状にはそう書いてあった」


「今……?」



 今こっちに向かってて、明日着くってことは……。



「ねえ、セバスチャン? 王子って、歩いてくるワケじゃないよね?」


 私はひそひそ声でセバスチャンに訊ねた。


「当然でございます。一国の王子ともあろうお方が、共も連れずに、お一人で歩いていらっしゃるなどあり得ませんからな。通常は馬車でございましょう」



 馬車?


 ……そっか。

 やっぱり、この世界に自動車はないのか……。


 手紙のやり取りが伝書鳩っぽいのだったり、着てる服が古めかしいデザインばかりだったから、私がいた世界とは、まるっきり違ってるんだろうなとは薄々感じてたけど……。


 じゃあ、この世界にコンビニやファストフード店やレンタルビデオ店――なんかは、当然ないんだろうなぁ……。



「……サクラ様?」



 ――ハッ!


 いけないいけない。

 今は、そんなことにショック受けてる場合じゃなかった。



「え……えっと……。馬車だと、ここまでどのくらいで着くのかな?」


「……フム。あちらをお()ちになってからの経過時刻にもよりますが……。書状をお出しになってからすぐにお発ちになったとすると、恐らく明朝でしょうな」


「えっ、朝!? そんなに早く着いちゃうの?」



 馬車って、すごいアナログなイメージだけど、結構速いのかな?

 それとも、ルドウィンって国が、ここから近いところにあるのかな?



 ……あ~、でも困ったなぁ……。

 王子がこっちにきちゃうんじゃ、あっちに向かう途中で姫様捜すって計画が、ダメになっちゃったじゃない。



 あーもー! 

 会ったこともないし、どんな人か、よく知りもしないけど……。


 ギルフォード王子のバカ!

 大人しく向こうで待っててくれれば、こっちから訪ねてってあげたのにーーーっ!



「サクラ様、いかがいたしましょう? このままでは、姫様をお捜しする口実が……」


「わかってる。今、新しい手を考えてるとこ」


 国王様の目を気にしながら、私とセバスチャンは小声で次の作戦の相談を始めた。


「私たちが動けないとなると、ここはやっぱり、カイルさんにお願いするしかないのかな?」


「それしかないと思われますが……。しかし、カイルにも姫様――この場合サクラ様のことですが――お守りするという役目がございます。他に何か特別な(めい)でも与えぬ限り、ルドウィンに向かわせるのは難しいかと……」


「特別な命? それってセバスチャンが与えればいいの? それとも、国王様からの命令じゃなきゃダメ?」


「ダメということもございませんが、カイルは姫様専属の護衛ですので。姫様からの命であった方が、私からというよりは正当かと思われます」


「なるほど。じゃあ、私がカイルさんに何かお願いすればいいのか。……う~ん……。どんなお願いなら自然かなぁ? 今日の朝から捜してても見つからなかったんだから、捜索には、結構時間掛かっちゃうかもしれないんだよね?……とすると、数日戻ってこなくても変に思われないくらいの内容……じゃなきゃいけないよね?」



 叶えるために数日掛かりそうなお願いって、どんなのだろう?



 たとえば……かなり離れた場所にある、今の時期しか咲かない花を摘んできて――とか?


 でも姫様って、控えめで思慮深い人……なんだよね?

 そんな人がいきなりワガママ言い出しちゃあ、それこそ変に思われるか。



 うぅ……、どうしよう?

 全っ然、いい案が浮かばない。



 ここは一度戻って、みんなに相談した方がいいかも……。



「ごめん、セバスチャン。私の頭じゃこれ以上は無理みたい。早く戻って、みんなの意見を聞こう?」


「さようでございますな。恥ずかしながら、私も良い案などさっぱり浮かんで参りません。ここは一度、失礼いたしましょう」


 セバスチャンは国王様に向き直り、


「陛下。姫様は至急お部屋にお戻りになり、ギルフォード様をお迎えするための準備をなさりたい、とのことにございます」


「……準備? ギルフォードを迎えるのに、何の準備がいると言うのだ?」


 国王様は怪訝そうに私たちを交互に見つめる。


「それは……いろいろあるのでございますよ。姫様もお年頃ですから……」


 セバスチャンはそう言うと、私にチラッと目配せした。



 ……これは、話を合わせろってことよね?



「そうなんです。いろいろあるんです、いろいろ。……というワケで、失礼しますっ!」


 私はペコリと一礼してから、国王様に背を向けた。


「ピッ!?……わ、私も失礼いたしますっ」


 後を追うようにセバスチャンも一礼し、私たちは足早に部屋を出た。

 国王様に口を挟む隙を与えないために――。




「……参ったなぁ。どうしてこう間が悪いの? ホントにもーっ。余計なことしてくれるんだから、王子ってば!」


 部屋を出た瞬間、思わず愚痴がこぼれた。


「サクラ様。ギルフォード様は姫様の行方が知れぬことなど、ご存じないのですから」


「むぅぅ~。わかってる。わかってるんだけどさ~」



 でもやっぱり、王子も王子よ。

 会いたいなら、直接くればよかったのに。

 手紙で遠回しに断るようなことするから、姫様だって傷付いたんじゃない?



 まあ、姫様が自分の意思で出てったって確証は、まだないんだけど。

 直接、王子の口から気持ちを伝えられてたら……姫様だって、城から出ようなんて思わなかったかもしれないのに。



 ……むぅ。

 いろいろ考えてたら、だんだん腹立ってきたな……。


 王子に会ったら、ぜーったい、文句言ってやるんだから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ