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桜咲く国の姫君【改訂版・ギルフォードルート】~神様の気まぐれで異世界に召された少女は隣国王子に溺愛される~  作者: 咲来青
第3章 ザックス王国ー森の城ー

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第6話 姫様を捜しに

 今までの経緯を全て話し終えてから、しばらくは誰からも言葉は発せられなかった。



 ……無理ないか。


 いきなり、


『私は別世界の人間です。木の中に吸い込まれて、暗い空間をずーっと落ちてきて、気づいたらこの世界に放り出されてました』


 ……なんて言ったって、即座に理解できるワケがない。



「あの……信じてないとしたら、それはそれで、すごくもっともなことだと思うんだけど……。でも、これだけはわかって欲しいの。私はみんなを騙すつもりなんてこれっぽっちもないし、騙したいとも思ってない。絶対絶対、嘘なんてついてないからっ!」



 すぐに受け入れられるような話じゃない。それはわかってる。


 わかりつつも、何故か私には自信があった。


 この人たちはきっと、私の話を信じてくれる。

 みんな良い人そうだし、正直に話せば、絶対わかってくれるはず。



 根拠のない自信ではあったけど……すごく不思議だけど、そんな確信があった。



「姫さ――いえ、その……」


「桜よ。神木桜。さっきは愛称――なんて言っちゃったけど、それが本名なの」


「では、サクラ様。あなた様は先ほど、神様の中に吸い込まれたと申されましたが……」


「神様?……ああ、そっか。この世界ではあの木、神様なんだっけ」



 ここにくるまで結構いろいろなことがあったから、すっかり忘れてた。



「うん。そう。私は神様の中に吸い込まれて……神様の中は、真っ暗な空洞で。その中をずーっとずーっと長いこと落ちてきたら、突然視界が開けて、この世界――セバスチャンの背中の上に放り出されてたの」


「ほう? 空洞……。そのようなことが……」


 セバスチャンは考え込むように下を向き、またすぐに顔を上げた。


「神様ならば……その程度の奇跡、起こせるやもしれません」


「えっ、ホント!? あの木って、そんなにすごいのっ!?」


 思わずセバスチャンに詰め寄り、私は興奮して訊ねた。


「は、はい……。残念ながら、私は直接目にしたことはないのですが、神様が奇跡を起こしたという話は、古来より幾つもございますので」


「そうなんだ!――じゃあ、信じてくれるのねっ!?」


「はい。他の者はわかりませんが……私には、あなた様がそのような嘘をつくようなお方には、到底(とうてい)思えませんので」


「セバスチャン……! ありがとう! ホントにありがとねっ、セバスチャン!」


 嬉しくなって、私はギュウゥっとセバスチャンに抱きついてしまった。



 セバスチャンは、ふわふわであったかくて、気持ちよかった。

 あまりにも心地よかったから、しばらくこうしていたい……なんて思ってしまうほどに。


 ――でも、今はそんなことしてる場合じゃない。

 早く姫様を捜し出して、みんなに安心してもらって……元の世界に帰れる方法、考えてもらわなきゃ!



「セバスチャン、私も姫様捜索、手伝う! だから、姫様が見つかったら私にも協力っ……してもらえない……かな?」


「もちろんでございますとも。私がサクラ様を姫様と思い込み、ここへお連れしてしまったのですから……。責任持って、どこまでもお力添えいたしますぞ」


「セバスチャン……」


 私はジーンとして、涙が出そうになった。



 確かに、勘違いしたのはセバスチャンだけど。

 私はそれに乗っかって、たとえ一時でも、姫様のフリしちゃったっていうのに……。

 それを責めないばかりか、すぐに私の言うことを信じてくれて、協力するとまで言ってくれてる。


 ホントにもう、セバスチャンったら……人(?)が良過ぎるんだから。



「セバス様。その方が姫様ではないとわかった以上、至急、姫様捜索を再開せねばなりません。ご命令を!」



 私が異世界からきた人間だろうが、どこの誰だろうが、知ったこっちゃない。

 そんなことより、一刻も早く姫様を捜し出し、無事を確認したい。


 きっと、そんな風に思ってるんだろう。カイルさんがセバスチャンを急かす。



 ……まあ、恋する人が行方不明なんだもん。当たり前だよね。



「そ、そうであった。急がねば、そろそろ日も暮れる。……カイル。すまぬが、もう一度姫様を――」


「承知いたしました!」


 セバスチャンの言葉に被せ気味に返答すると、カイルさんはきびすを返して、表へ捜しに出ようとした。


「ちょっと待って、カイルさん! 姫様の居場所、見当ついてるの?」


 当てのないまま捜し回っても仕方ないような気がして、思わず声をかけてしまった。


「居場所の見当……ですか?……いえ、残念ながら」


「さっきまでだって、闇雲(やみくも)に捜し回ってただけなんでしょ? それじゃあいつまで経っても、姫様見つけられないんじゃないか……って気がするんだけど」


「……なんですって?」



 ……あ。ヤバ……。

 つい、偉そうなこと言っちゃった。



 カイルさんから向けられた冷たい視線に、私はヒヤリとして固まった。

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