3/6
初恋
いつからだろう。
自分の恋愛対象が女性だと気づいたのは……。
みくはゆるゆると立ち上がった。
廊下に貼られているメッセージカードをぼんやりと眺める。
初恋は、小2だったと思う、たぶん……。
転校したばかりで新しい環境に不安しかなかった私に、優しく声をかけてきてくれた同じクラスの子がいた。名前はもう覚えていない。
才色兼備という言葉が似あうその子は吹奏楽部でフルートを吹いていた。
そのキラキラとした音色。
まだ小学2年生だったみくにとっては、上品なイメージのあるフルートを吹きこなす彼女は、「異世界」の人だった。
かっこいい……。
素直にそう思った。
みくは結局、そのあと再び他県に転校することが決まった。
あの学校には2年もいなかった。
その子とはそれっきりだ。
あの時は「大好きな友達」ぐらいの認識しかなかったが、今改めて考えてみると、あの感情は恋……だったのかもしれない。