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高卒サラリーマンが脱サラして田舎でスローライフするだけの話  作者: らいお


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奮闘、庭づくり編 第一話

 どうも、俺です。喜多孝文(きたたかふみ)です。

 いやぁ、暑いですね。見てくださいよこのカンカン照りな快晴!夏真っ最中、って感じがして清々しい!そして、風に吹かれて揺れる稲!そして辺りから漂う土の匂い!いやぁ、いいですね!


 ……いや、ちょっと舐めてたよ。この土地に引っ越して3週間。俺が何をしていたと思う?……ずっと、庭の草刈りしかしてなかったんだよ。

 まだ最初のうちはよかったさ。早く動物を迎え入れる環境を整えよう!って元気いっぱいだったのだから。だけど、実際に作業してみるともう大変。草を刈る道具なんて持っていなかったからたまたま家に置いてあった鎌でちまちまやってたんだけど、うだるような炎天下の中、しゃがんでの作業……しかも、めっちゃ広い範囲ときたもんだ。そんでもって草刈りを初めてから3週間も経ってしまったから最初の頃に刈っていた部分はもう背を伸ばしてきている。雑草の生命力を舐めていたよ。


 とはいえ、それ以外では別段困ったことは無かった。引っ越し当日にご近所――畑を挟んでなので数百メートル先だが――にあいさつ回りに行ったがここらの住人は皆優しい人たちで、いつも朗らかに笑みを絶やさず、心ゆくまでゆったりと流れる時間を楽しんでいるような人たちばかりだった。「困ったことがあったらいつでも来なさいな」と言っていた割によく俺の家まで顔を見せに来て、畑で採れたばかりの野菜などをおすそ分けしてくれる。ありがたい事だ。だから今は食に関しては困ってなく、食料品の買い物は飲料水と調味料くらいで、後は貰った野菜などでお腹いっぱいになる。正直甘えすぎかとも思うが、沢山持ってくる物を受け取らないわけにもいかないのでしょうがないのだ。

 ここに来る前は田舎はご近所付き合いが大変とは聞いていたが、こういう大変だとは思っていなかった。でも、悪い人たちでは無いので少し安心だ。


 さて、庭のほうなんだが、どうしたものか。途中で電動の草刈り機を買おうか、とも思ったんだが、ここにきてなぜか俺の負けず嫌いな部分が出てしまい、今の今まで鎌のみで刈っていたわけだが……

 流石にこれではキリがないので、負けを認めて電動の草刈り機を買おう。

 俺は、車で30分程の距離にあるホームセンターに芝刈り機を買いに行った。





 芝刈り機を買った俺は、早速作業に取り掛かった。するとどうだろう。あっという間に雑草が刈れるじゃないか!これまでの腰を痛めながらやっていた作業は何だったのかと思うくらいにアッサリと刈れる。これが文明の利器か……!

 電動芝刈り機を手に入れた事で作業効率が格段と上がった俺は、意気揚々と作業を進め、あっという間に一面の雑草共を一網打尽にすることができた。

 そしてここで問題発生なわけだが、この刈った大量の草たちはどうしようか。この量だと大きいビニール袋に入れても多分だが、10袋以上になるだろう。


「おー、喜多くん、綺麗になったね!」


 ムムムと悩んでいると、後ろから声を掛けられた。振り向くと、猫村さんだった。


「猫村さん、こんにちは。電動の芝刈り機って凄いですね、あっという間に刈れちゃいましたよ」

「はっはっは、そうだろうねぇ。私も初めて使ったときは便利すぎて驚いたよ」

「いやぁ、ほんとに。便利なものですね。さて、この草たちをどうしようか悩んでたんですけど……何か良い方法あったりします?」


 こういう悩みは地元の人に聞くのが一番だ。きっと良い案を出してくれるだろう。


「うん?焼いちゃえばいいんじゃないかい?」

「え、焼く?」


 予想外の回答が返ってきた。焼くって……えっ?


「うん、野焼き。ここの地域は野焼きはしても大丈夫だから存分に燃やすといいよ」

「でも、灰とか出て大変じゃないですか?」

「灰は畑とかの土壌改善でも使えるからね、結構用途はあるんだよ」


 ほぅ、そうなのか。俺も畑は作ってみたいから、やってみるか。


「なるほど、野焼きやってみますね。なるべく猫村さんの家のほうに煙いかないように気を付けます」

「別に気にしなくていいからねー、後、燃えやすいようにある程度草は乾燥させてからのほうがいいからね。煙も少ないし」

「分かりました」

「それじゃ、頑張ってね」


 そう言うと猫村さんは去っていった。ありがたい助言だった。

 俺は乾燥させるために草をある程度一か所に集め、次の作業に移る。


「よし、やるかぁ」


 俺は芝刈り機を買ったときに一緒に買った(くわ)を持つと、庭を耕し始めた。

 ザックザックと耕していく。全面、満遍なく耕すつもりだ。

 俺が何をしているかと言うと、そう、庭の土壌改善だ。引っ越す前の内覧の時に見た庭は、時折モグラに掘られてデコボコとしている部分があった。それを修復するという意味もあるが、やはりまだ土が硬く感じたのだ。

 そして……庭一面を雑草ではなく、芝でうめたいという思いもあった。なので、雑草の根を撲滅させるためにも庭一面を耕す。しかし、これがまた重労働なのだ。鎌で雑草を刈っていた時はしゃがみ姿勢だったので腰にきたが、(くわ)は普通に持つ分には軽いのだが、何度も耕す動作を繰り返していると、これもまた腰にくる。そして、手が痛い。豆ができるのも時間の問題だろう。電動の耕運機でもあれば楽なんだろうが、わざわざ買うのはバカな出費になるだろう。今回やってしまえば、もう使うことは無いので買う必要無し。


 庭の半面が耕し終わった時点で、空がだんだんと暗くなりだしてきた。今日の作業はもう終わりにしよう。

 時折休憩しながら作業をしていたが、やはり疲れるものは疲れるな。身体中の水分が出ていったんじゃないかってくらい汗をかいた。今は乾いているが、黒っぽいシャツを着ていたからか、汗の輪郭に沿って塩ができている。汗は塩分を含むとは言うが、こうも目に見えて塩が出来ると面白いな。

 軽く笑いながら塩のできたシャツを洗濯機に放り込むと、風呂が沸いたのか電子音が聞こえた。丁度良いタイミングだ、さっさと風呂に入って汗を流そう。


 重労働後の風呂は、まさに至極のひと時だった。ただの40度程度のお湯に肩まで浸かるだけでこんなにも身体が軽くなるなんて、人間って面白い身体をしてるよな。風呂にどんな効能があるのかは詳しくは分からないが、きっと凄いものなんだろう。

 社会人だった頃は、疲れと時間の無さから湯船には浸からず、シャワーだけでサッと済ませていたが、こりゃ損をしていたな。風呂が好きな人の気持ちが分かった気がする。


 風呂に入った後は頂き物の収穫物達で腹を満たして自分の時間を過ごす。

 ネット環境はこの3週間で整ったのでPCを使って庭の手入れや畑関連の動画や資料を見漁った。

 少し心配だったが、田舎でも光回線が通ってて良かったよ。便利になったもんだな。


 そして、22時。スマホの着信が鳴った。


「はい、喜多です」

『ほなみです!孝文(たかふみ)さん、こんばんは!』


 そう、ほなみさんからの電話だ。もう夜の日課になっている。


「こんばんは、ほなみさん。今日はどうだった?」

『今日もお客さん来ましたよ!サンドイッチも好評です!』

「おぉ、よかったね。順調だね」

『はい!』


 よかった、”Katze”は順調らしい。俺が引っ越してからメニューに復活させたサンドイッチだが、やはり好評か。あれ、美味しいもんな。


『孝文さんはどうでした?今日も草刈りです?』

「あぁ、それがね、電動の草刈り機を買ったらすぐ終わっちゃってね――」


 いつものように近況報告、もとい、今日何をやったかを、何があったかを報告しあい、そして雑談をしながら、今日も夜は更けていくのだった。


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