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怪61





 ユリアンは自室に入ると鞄から取り出した紙を机に広げた。

 不思議なマークの下に、文字が並んでいる。


「この上に、コインを置いて、コインに指を載せて質問したいことを口に出す……」


 メリーという少女に教えてもらった占いだ。これで彼女をものにする方法を尋ねればいいと、半ば無理矢理押しつけられてしまったのだが。


「占いなんて、馬鹿馬鹿しい。はっ、僕はこんな子供だましに頼ったりするほど追いつめられてはいないぞ」


 ユリアンは鼻で笑い飛ばして、紙を捨てようとしてーー


「……コックリさん、コックリさん。いたら返事をしてください」


 コインに指を置いて、教えられた通りの台詞を呟いた。

 しばしの沈黙の後、コインがひとりでにすっと動いた。


「う、動いた!?」


 ユリアンは驚愕して指を離しそうになった。だが、途中で指を離してはいけないと言われたことを思い出し、ぐっと堪えた。

 彼女をものにする方法を尋ねればいい。そう言って笑った少女の言葉が脳裏に蘇り、ユリアンの背中に冷たい汗が流れた。


「……コックリさん、僕の、姉の名前は?」


 とりあえず、そう尋ねる。コインはすいすいと動いた。


「ア・ネ・ハ・イ・ナ・イ」……姉はいない。


 ユリアンはごくりと息を飲んだ。


「コックリさん、僕の、母の名前は?」

「セ・レ・ナ・コ・ー・ト・リ・ー」セレナ・コートリー。母はコートリー伯爵家の娘だった。


「コックリさん、僕の……父の名前は?」


 ユリアンは震えそうになる指でコインを押さえた。コインは迷いなく文字を指していく。


「ユ・ー・シ・ス・ミ・ロ・フ」

「ユーシス・ミロフ……」


 ユリアンの肩の力が抜けた。


 知らない名前だ。聞いたことがない。やはりそうだ。ユリアンの父親はオットー・アーバンフォークロアではない。


「はは……」


 良かった。やはり、ユリアンとアメリアは姉弟じゃない。


 力の抜けたユリアンの指を載せて、コインがひとりでに動いた。


「なんだ? ア・メ……リ・ア・ハ……」


 一文字ずつ読み上げて、ユリアンは顔色を変えた。


「どういうことだ!? おいっ!」


 血相を変えてコインに向かって尋ねるが、それきりコインはぴくりとも動かなかった。

 コインが最後に指した言葉。「ア・メ・リ・ア・ハ・シ・ヌ」


 アメリアは死ぬ。


 ユリアンはコインを見つめたまま愕然とした。




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