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怪50





 一度自宅に帰ってから公爵邸を訪ねてきたハンナを迎え入れて、アメリアと花子は作戦会議を始めた。


「では、皆で手分けして、正面階段の踊り場の大鏡以外の鏡を覆うということですわね」


 鏡の数と位置を書き取ったノートをハンナにも見せながら、手順を確認していく。布は花子が用意すると請け負ったので、目下の問題はこの離れに住むもう一人、ユリアンをどうするかだ。


「事情をご説明して、協力していただくのがよろしいのでは?」


 ハンナの言葉にアメリアも頷く。しかし、花子は首を横に振った。


「あの弟君がいると、アメリアの行動が制限されるわ。あれこれ口出しされるよりも、いない方がアメリアが自由に動けると思うの」


 花子がそう言うと、ハンナも「確かに」と頷いた。アメリアは眉を曇らせた。


「しかし、ユリアンが黙って行かせてくれるとも思えませんし……」


 迎えの馬車が来ればどうあっても気付かれるだろう。揉めるよりは事情を説明して連れて行った方がいいとアメリアは思う。


「……仕方がない。この手は使いたくなかったけれど。アメリア、手伝ってちょうだい」


 花子はきりっとした表情で立ち上がった。


「どうするのです?」

「潰すわ」


 殺る気満々の花子に、アメリアは眉を下げた。


「我が家の跡取りですの。どうか穏便に……」

「手荒な真似はしないわよ」


 そう言うと、花子は「物資」を調達してくると言って部屋を出ていった。しばらくして戻ってきた時には腕に瓶を抱えていた。




「……ふぇ?」


 ぱちりと目を開けたメルティは、体の痛みに顔をしかめた。


「むぐぅ」


 口には布が噛まされていて、腕は後ろ手に縛られている。おまけに、狭い箱のような物に閉じこめられていた。


「むうぅ!?」


 じたばた暴れようとしたが、箱の中が狭すぎて身じろぐのも難しい。


(なに? なんで私縛られてるの?)


 メルティはパニックになった頭で何が起きたのか思い出そうとした。その時、箱の外で人の声がした。


「おい。もういいんじゃないのか。生徒は全員帰ったろう。早いとこ済ませようぜ」

「まだだ。もう少し待て。夜になってからの方が安全だ」


 男が二人、箱のすぐ傍に立っているのがわかった。


(誰!? もしかして、私、誘拐されたの!?)


 メルティは青ざめた。


(助けて! 誰か!!)


 真っ暗な箱の中で、メルティに出来るのは祈ることだけだった。





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