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怪49





 クラウスが剣の力で呪いを打ち破ると言ってどこかへ行ってしまったので、メルティは一人で家路につこうとしていた。夕暮れの赤い陽に照らされて、木々の影がくっきり黒く伸びている。


「ふんふんふーん♪ 呪いなんて怖くなーいー」


 鼻歌を口ずさみながら門までの道を歩いていたメルティは、背後の木陰から人影が躍り出てきたことに気付かなかった。


「呪いなんてー……ふぐっ」


 首の後ろを強く叩かれて、メルティの意識は暗く沈んだ。


「……よし。人に見られないように運ぶぞ」

「面倒くせぇ。ここで殺してもいいだろ」


 もう一人が陰から現れて、メルティの体を担ぎ上げる。


「学園内で殺して、目立つ場所に置けという命令だ。見せしめのためにな」

「ちっ。王太子がアホなせいでこっちにしわ寄せがくるぜ。何もせずに傀儡になってりゃいいのによ」


 二人の男は、メルティを担いで校舎の方へ戻っていった。






 花子は校舎の方を振り返った。


「どうしたの? 花子さん」

(……なんでもないわ)


 アメリアと共に馬車に乗り込み、公爵邸へと戻る。

 向かいではユリアンが何やら深刻な表情でアメリアをガン見しているので車内の雰囲気は悪い。


(何か、不穏な感じがしたのだけれど)


 花子は遠ざかっていく校舎を眺めながら、首を傾げた。


(殿下は『紫鏡』様を倒すおつもりなのでしょうか。ハンナ様にも協力をお願いしてしまいましたが、かまわなかったかしら?)


 アメリアが小声で囁く。

 クラウスは『紫鏡』の呪いを打ち破ると言っていた。彼も噂を聞き、何か方法を考えたのかもしれない。


(あの王太子に何か出来るとは思えないけれど、学園までの足になってくれるなら何でもかまわないわ)


 花子はアメリアの隣に座って息を吐いた。邪魔になるようならトイレットペーパーで巻いてその辺に転がしておけばいいだけだ。


(それよりも、問題は……)


 花子は真正面のユリアンを見やった。

 じっとりとアメリアを見据える目が普通じゃない。何かろくでもないことを考えていやがる。


(この弟をどうにかしないといけないわね。アメリアが危険だわ)


 ある意味、都市伝説よりも厄介な身内の脅威にさらされているアメリアに、花子は心底同情した。




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