表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/88

怪40





 朝、授業が始まるまでのひととき、ある少女は自慢の金髪を化粧室の鏡の前で整えていた。その彼女の前で、彼女の姿を映す鏡が見る間に変化した。

 ある少女は、放課後、踊り場の階段でそれを目撃した。

 また、ある少女は科学室で自習をしていて、ふと気配を感じて振り向いた時、それを目にした。


 少女達は、それが何を意味するかはわからないものの、不吉を感じて怯えた。


 ハンナ・オリアーノは放課後になるや急いでアメリアのもとへ向かった。


「最近、女子の間で変な噂が流れているんです」

「噂?」

「ええ」


 ハンナは深刻な顔で頷いた。


 食堂にいくつか設けられている壁で小さく区切られた喫茶スペースで、花子と三人で顔を寄せ合わせている。端から見ると美しく愛らしい少女達のお茶会であるが、話し合われている内容は学園で起こった怪異についてである。


「どのような噂なんですの?」

「なんでも、鏡が……」

「鏡?」

「鏡が、突然、紫色になったそうなんです!」


 ハンナは青ざめた表情で言った。


「鏡が、紫に……」


 アメリアはことっと首を傾けた。

 確かに怪異であるが、鏡の色が変わるだけなら、『赤いチャンチャンコ』や『メリーさん』と比べて無害そうだ。そう思ったのであるが、ふと、ハンナが小刻みに震えていることに気づいた。


「……実は、私も見たのです。階段の踊り場の鏡が、一瞬だけ紫に……気のせいかと思ったのですが……」

「なるほど。それは『紫鏡』ね」


 花子が神妙な口調で言った。


「『紫鏡』?」


 アメリアとハンナは花子に注目した。

 花子はお茶のカップを片手に持ち、幼い面立ちに似つかわしくない難しい表情で眉をしかめた。


「ちょっと厄介ね。捕まえにくいわ……」

「そ、その『紫鏡』というものも、『紅きチャンジャール公』の使う魔術なのでしょうか!?」


 ハンナが戦慄きながら尋ねる。ハンナは「鏡が紫に変わった」という噂を聞いてすぐに、自身もその現象を目にしていたことに思い当たった。そして、これは『紅きチャンジャール公』の魔術の一種ではないかと不安に駆られた。


「複数の女生徒が目撃しています! 『紅きチャンジャール公』の仕業ならば、彼女達が危ない!」


 ハンナはアメリアに訴えた。


「アメリア様! 今すぐ学園長に相談し、彼女達の身の安全を図るべきです!」


 アメリアはハンナの勢いに押されながら、花子に目をやった。

 怪異のことを学園長や教師達に知らせる訳にはいかないが、女生徒の心配をするハンナを宥めるのは難しそうだ。


「落ち着いてハンナ。『紫鏡』はそう差し迫った驚異ではないわ」


 花子はそう言って茶を啜った。

 堂々と姿を現している花子だが、その態度があまりに堂々としすぎていて、誰も学園に部外者がいると突っ込まない。アメリアが傍にいるので公爵家の客人ではないかと思われて、教師陣すら何も聞かずに黙認している。

 授業中は姿を消しているので別にいいだろう、と花子は考えている。


 ただし、花子の存在を認めていない男が一人いた。


(あの子供~っ! また姉上の傍に……っ! どこから学園に入ってきたんだ!!)


 陰から様子を窺いながら花子を睨みつけるユリアンである。

 彼は不穏な組織と戦わんとしているアメリアを案じ、常に見守っているのである。ストーカーと言うなかれ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ