怪27
自室に戻ると机の上に一通の手紙が置いてあった。
使用人の誰かが置いていったのかと思い、手紙を手に取ったが、差出人も書いていなければ封蝋もない。
どこからの手紙かわからない、このような怪しいものを調べもせずに持ち込むとは、と些か憤りながら、ハンナは封を切って中を改めた。
そして、眉根を寄せて困惑した。
相変わらず王太子と男爵令嬢に絡まれる以外は概ね平和な日々を過ごしている。
そういえば、ユリアンが日に日に憔悴しているような気もするが、気のせいだろう。
アメリアは穏やかな気持ちで図書室から借りてきた本を読んでいた。古の魔物について書かれた本だ。都市伝説を捕まえるのに役に立つのではないかと思ったのだが、どの魔物も倒したり捕まえたりしたのは屈強な戦士や勇者、偉大な魔法使いとかで、到底アメリアに真似できるはずがなかった。
「わたくしも、もっと体を鍛えるべきかしら……」
(それはいいわ。アメリアってば細すぎるもの)
姿は見えないが、すぐ傍で花子の声がした。教室にまだ他の生徒が残っているので姿を消しているのだが、時々アメリアに話しかけてくる声は聞こえる。
「そうね。屈強な戦士にはなれなくとも、努力はすべきだわ」
幸い、王妃教育がなくなったため時間はある。
そうと決まれば、家に帰って早速鍛錬を始めよう。そう思って立ち上がったアメリアだったが、その時、ちょうど教室を出ていこうとしていたハンナを見かけて首を傾げた。どこか元気がないように見える。
「ハンナ様」
「あ、アメリア様」
ハンナは顔を上げたが、やはり顔色が優れない。
「ご気分が悪いのですか?」
「いいえ、違うんです……最近、おかしなことがあって」
「おかしなこと?」
おかしなこととは、もしや都市伝説に関係あるのでは。そう感じたアメリアは、ハンナから何があったのか聞き出そうとした。
「実は、このところ毎日手紙が届くのです。その手紙が、誰からかわからかくて……内容も意味が不明で、おまけに使用人の誰に聞いてもそんな手紙は知らないと首を振るのです」
ハンナは暗い表情で語った。
「私が少し席を外している間に、私の部屋の机の上に誰かが手紙を置いているのです。それで、気味が悪くて……」
アメリアは花子の気配がする方へ目をやった。
(手紙、ねぇ……その手紙、見てみたいわ)
「ハンナ様。もし差し支えなければ、その手紙をわたくしにも見せていただけるかしら」
アメリアが申し出ると、ハンナはきょとんと目を瞬かせた。
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ハンナさんは鬼○郎における夢子ちゃん的なポジションです。




