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アメリア&花子〜婚約破棄された公爵令嬢は都市伝説をハントする〜  作者: 荒瀬ヤヒロ
〜赤いチャンチャンコと弟の歪んだ愛情〜
24/88

怪24





「何この声ーっ! やだやだやだ~っ!!」


 メルティは半狂乱で個室から飛び出した。得体の知れない声への恐怖に耐えられなかったのだ。

 メルティの登場に、男は一瞬気を取られた。

 その隙を見逃さず、花子が男の股間を蹴り上げた。


「ぐうっ!?」


 男が呻き声を上げる。


「花子さん!」

「アメリア! 個室の中を見て!」


 花子は左端の個室の戸に手を触れた。すると、がちゃりと鍵の開く音が響いた。


「目には見えなくても、何か違和感があるはず! そこをよく見て! そして「形を見たり」と言うの!」

「このガキ……っ、殺してやる!」


 怒り狂った男が花子に向かってナイフを振り上げた。だが、花子が手を振ると、どこからともなく飛んできたトイレットペーパーが男の手にからみついて締め上げる。


「な、なんだ!?」

「ちょっと、黙っててくれる?」


 花子はトイレットペーパーを巻き取ると、それを男の口に突っ込んだ。


「アメリア! 早く! 逃げられちゃう!」

「わ、わかったわ!」


 花子に応えて、アメリアは左端の個室の戸に手をかけた。すると、戸は何の抵抗もなく開いた。

 中には誰もいない。便器があるだけだ。


(また逃げられた……いや)


 花子の言葉を思い出し、アメリアは目を凝らして個室の中をみつめた。


(違和感……何かあるはず)


 便器にも壁にもおかしなところはない。床も普通だ。日の光に照らされて白いタイルが光っている。

 日の光——?


(もう、日暮れのはず……っ)


 それに気付いた瞬間、目の前の空間が揺らぎ、赤い何かが見えた。


「形を、見たり!」


 咄嗟に叫んだ。

 すると、空間の揺らぎが止まり、そこに赤いガウンのようなものが現れて、「ちぇっ」と舌打ちが聞こえた。


『花子さんめ……人間と手を組むとは……まあ、見つかっちまったら仕方がない』


 赤いガウンが、ばさっと便器の蓋の上に落ちた。

 おそるおそる手を伸ばして、アメリアはその赤いガウンを手に取った。


「姉上! ここにいるんですか?」


 突如、トイレの扉が激しく叩かれ、ユリアンの声が響いた。アメリアははっとして振り向いた。

 花子はトイレットペーパーで男をぐるぐる巻きにしており、メルティはその横で腰を抜かしていた。


「姉上っ! ……これはいったい?」


 痺れを切らして扉を開けたユリアンは、そこに広がっていた光景に目を丸くした。




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