怪21
「ユリアン。アメリアがどこにいるか知らないか?」
「殿下。朝も言いましたが、姉上を呼び捨てるのは止めてください」
「何を言う。アメリアの呼び方などどうでもいいではないか。それより……」
「良くありません! 姉上はも・う・殿・下・の・婚・約・者・で・は・な・い・ので!」
やたらと力を込めて言って、ユリアンがクラウスを睨む。
「ど、どうした? 朝から様子が変だぞ?」
「いいえ! 変ではありません! 僕が姉上に寄り添うので、殿下はペンディル男爵令嬢に寄り添っていてください! 以上、解散!」
ユリアンは冷たく言い放って、踵を返した。
(姉上……アメリアはどこだ?)
ユリアンもまた、アメリアを探していた。いつも同じ馬車で帰るのに、いつまで待ってもアメリアが校舎から出てこなかったからだ。
(やはり、今日ぐらい休ませるべきだったか)
昨日の今日で、愛しい少女が何かに巻き込まれていやしないかと、ユリアンは気が気じゃなかった。
二年生の教室を見て回ったが、アメリアの姿はない。何故かついてくるクラウスにイラッとしながら、ユリアンは通りがかった女生徒を捕まえた尋ねた。
「すまないが、アーバンフォークロア公爵令嬢を見かけなかったか?」
「え? アメリア様でしたら、先ほどまでご一緒させていただいておりましたが……」
呼び止められたハンナは目を丸くした。
「西棟のトイレから、こちらへ戻ってきて別れたのですが」
「西棟?」
アメリアが西棟に何の用があるというのだろう。ユリアンには心当たりがなかった。
「ありがとうございます。一応、西棟を探してみます」
ユリアンは少し焦って駆け出した。
(西棟なんて、人気のないところに何故アメリアが……まさか、誰かに呼び出されでもしたのか? くそっ!)
学年が違うから学園ではアメリアと一緒にいられない。「弟」という立場が苛立たしかった。
「おい待てユリアン! どこへ行くんだ?」
後ろからクラウスの声が追いかけてきたが、振り向かなかった。
「アメリア様、何かあったのかしら……」
小首を傾げてユリアンを見送ったハンナだったが、やはりアメリアのことが心配になり、彼女もまた西棟へ向かったのだった。




