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アメリア&花子〜婚約破棄された公爵令嬢は都市伝説をハントする〜  作者: 荒瀬ヤヒロ
〜赤いチャンチャンコと弟の歪んだ愛情〜
15/88

怪15





 西棟のトイレは日当たりが悪く、昼間でも薄暗い。資料室に教材を片づけに行った帰りにトイレに立ち寄ったが、薄気味悪い雰囲気に後悔した。


(いやだわ……早く出よう)


 用を済ませ、洗面台で手を洗う。蛇口を閉めたのと同時に、背後で声がした。


 ひひひっ


 ハンナは驚いて振り向いた。薄暗いトイレにはハンナの他に人はいない。

 けれども、戸の閉まった個室の一つから、笑い声が聞こえたのだ。


『ひひひ……ひひひ……っ』

「だ……誰かいるの!?」


 恐怖に身をすくませながらも、ハンナは気丈に声を上げた。


『ひひひ……ひひひひ……赤いチャンチャンコいらんかねぇ~……』


 その不気味な笑い声は、しわがれた老婆の声だった。





 思っていたほど酷い一日にはならなかった。

 人から遠ざかられるのも、こちらを見てひそひそ囁かれるのも、ずっと前からのことだ。前と何も変わらない。

 アメリアはほっと息を吐いた。


(目には見えないけれど、花子さんがいてくれるから楽に思えるのかも)


 姿は目に見えなくとも、ずっと花子の気配を感じていた。それがとても心強い。


(私も、花子さんの力にならなくちゃ)


 授業を終えると、アメリアは人気のない空き教室へ赴き、誰もいない空間に声をかけた。


「花子さん。出てきてちょうだい」


 すると、教室の隅に赤いドレスの少女がすっと姿を現した。


「学校の授業って、どこの世界でも似たようなもんね」

「日本の学校もここと似ているのですか?」

「まあね。それより、今日一日噂話に耳を傾けていたけれど、あたしの仲間の仕業らしき話はなかったわね」


 花子は顎に手を当てて思案する仕草をした。


「噂にもなっていないんじゃあ、この学校にはいないのかしら?」

「花子さん。わたくしも手伝いますわ。どのような噂を見つければよろしいの?」


 アメリアが花子に探すべき噂の内容を尋ねた時だった。急に扉を開閉する音が響いて、廊下を走ってくる足音が響いた。


「どなたですの?」


 アメリアが戸口から顔を出すと、一人の女生徒が驚いて足を止めた。


「あ……アメリア様……っ」

「貴女は……確かオリアーノ子爵令嬢ですわね」

「ハンナです。ハンナ・オリアーノ……」


 ハンナは真っ青な顔で震えていた。


「どうなさったの? 顔色が……」

「あっ! お、お助けください!  今、トイレで、トイレの中に……っ」


 ハンナがアメリアにしがみついて訴えた。


「トイレの中に、おばあさんが閉じこめられているんですっ!」




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